
・遅れてきたもつ鍋「チーズもつ鍋」って何?
同社は、もつ鍋・水炊き餃子など博多屋台料理を提供する「博多筑前屋敷」を、3/9に銀座本店を、3/25に六本木店と連続オープンさせる。銀座本店は、銀座6丁目の北海道料理「函館」を改装した。下の階にある「函館ソーラン市場」はそのまま営業している。
「博多筑前屋敷」の料理をプロデュースしたのは、山本浩喜氏。焼き鳥「備長扇屋」ともつ焼き「日本橋紅とん」を創業し、ヴィア・ホールディングスに売却した。現在は、福岡のカリスマ・フードコーディネーターとして活躍し、コテコテの九州料理の第一人者として知られている。「博多筑前屋敷」の店名も山本氏が名付けた。
その山本氏が考案したメニューとレシピーを、エイチワイの日本料理職人がアレンジして、メニューを生みだした。そこで生まれたのが「天然塩チーズ和牛もつ鍋」。1人前1380円。もつ鍋は数多くの店舗でオンメニューされており、普通のものでは集客できない。もつ鍋は元来、屋台のジャンクフード。これにHY自信の職人の技を加え、生まれたのがチーズを使うこと。人気のカルボナーラのような、濃厚だがあっさり塩味のもつが味わえる。しかも、チーズはお客の目の前で削るという演出付き。これは安田のアイデア。

「天然塩チーズ和牛もつ鍋」(1人前1380円)。お客の目の前でチーズを削る。

迫力の「六白黒豚とコラーゲン鉄板焼酎蒸し」1380円。山盛りの野菜を豚肉で覆う。

「カプサイシン水炊き餃子」

「ごまさば」

「鉄鍋餃子」
さらには、佐賀牛鉄板焼きと郷土料理の「葉隠」を六本木で3/25にオープンさせる。立地は、東京ミッドタウンの向い。「博多筑前屋敷」とビル地下を分ける。産地直送のA5等級以上の高級佐賀牛を鉄板焼きとしゃぶしゃぶで提供する。鉄板焼きと言えば、モダンな内装が多いが、同店は割烹をイメージ。牛肉が高額のため客単価は1万円と高いが、席数25席と小規模なしつらえでリスクをヘッジしている。「ステーキはライバルが少なくて固い」と安田氏は読む。

「葉隠」の佐賀牛。

「葉隠」の海鮮鉄板焼

「葉隠」の「嬉野温泉豆腐」

「葉隠」の「名物いかしゅうまい」
また、銀座の鹿児島料理「黒薩摩」の2号店を3/11に六本木で開店。「六白黒豚コラーゲンしゃぶしゃぶ」が人気で、お客から六本木への出店を望まれていた。物件は、WDIの高級とんかつ店の居抜き。ランチ時には、とんかつも売る。

「黒薩摩」の「六白黒豚コラーゲンしゃぶしゃぶ」。かつおダシに泳がせる。

「黒薩摩」の「さつま若しゃも刺し盛」

「黒薩摩」の「馬刺しおまかせ盛り」

「黒薩摩」の「ジューシー黒豚とんかつ」
・ヒット郷土料理を多店舗化
エイチワイシステムは、現在、出店戦略を転換している。今までは、47都道府県の郷土料理にこだわり、次々と様々な県を取り上げて出店してきた。しかし、苦戦する郷土料理店も出始め、戦略を変更している。
「持っているブランドでお金になるものを展開していこう。単一ブランドで何店も展開するビジネスモデルに変えていく。ブランドを作るのはリスキーで、新しいものは大変。はずれもあるので危険。直ぐに会社の体力を落とす。新しいブランドは作るが、長期的に作っていく。短期間には、作ったものの中でヒットブランドを直営で5店舗まで都内に広げる。」
「今までは銀座で47都道府県の出店を早めてドミナントする。でも、会社の体力を消耗する。儲かっている業態をパッケージ化して、ターミナル駅に出店する。不況で物件が出てきているので、安くて良い立地が確保できる。その方が会社に体力が付く」と安田氏。
同社は食材で勝負できる業態なので、低投資の居抜きで十分繁盛させられる。不況とともに、リスキーな新店勝負から、確実に利益の取れる出店にチェンジした。
・秋田ブランドがいい
「なまはげ」、「きりたんぽ」、「稲庭」、そして運営受託する「稲庭干温飩 銀座佐藤養助(いなにわほしうどん ぎんざさとうようすけ)」の秋田4業態の業績が好調だ。
「改めて秋田がいいね。秋田ブランドを単発でもっと作れる。秋田だけで47ブランドできるんじゃないかな(笑)。メイン料理だけ変えて、サイドメニューは同じ秋田料理でいい。儲かるよ。」
「“きりたんぽ”自体は知名度が上がっており、他店でも出しているが、エイチワイのきりたんぽ鍋が美味いと評判で他のパク店で出してもお客様葉直ぐに戻ってきてくれる。『きりたんぽ』は屋号がいい、分かりやすい。“だまこ餅”も人気。ウチは、きりたんぽ鍋に“きりたんぽ”と、丸い“だまこ餅”の両方を入れている。すると、お客から、これ何?と話題になる。ウチは、秋田で料亭を経営している親戚の叔母から一等米で毎日作っている“だまこ餅“を冷凍して送ってもらっている。叔母のが一番美味い。“だまこ餅“をメインにした業態でもイケるよ。」
「今、全日空の機内放送で秋田フェアをオンエアーしている。はたはた、きりたんぽ鍋、だまこ鍋 稲庭うどん等と名物がいっぱいある。きりたんぽ鍋が有名になって知名度が上がって、鍋の第一人者になった。美味しい店としてウチが繁盛している。これは、10〜20年の商売になる。今はそれを通販に繋げている。『安田商店』です。有名人に贈ったりして、口コミで売上が伸びている。鍋セットのデリバリーも始めたい。」
・郷土料理の成功法則は?
郷土料理は注目されているが、単一の都道府県の郷土料理だけでは店舗として成り立たないのが本当のところ。
「県の取り組みかたでも大きくかわる。県のリーダーシップと圧倒的な商品力が必要。きりたんぽ鍋みたいに、メイン商品に圧倒的な商品力がないとダメ。食べにいくとそこそこ美味しいがブランドになってない店が多い。サイドメニューのきゅうりがどんなに美味くても、お客は呼べない。DDの松村みたいに味おんちは関係ないが。。。郷土料理はメインが美味くて圧倒的な商品力がないと商売にならない。」
郷土料理店と居酒屋の違いを考えると、成功法則が見えてくる。
「居酒屋のメニューは平べったい。郷土料理店は1つ、売りになる、頭がいる。水炊きとか。その下に雑魚がいっぱいいる。メインは鍋などガッツリしたもの。」
「ココだけの話しだが、県別の郷土料理店で魚業態は苦戦する。肉系は結構いける。東京から見て、遠い県の魚が難しい。東京は築地が近いから新鮮なものが集まっている。築地に近い新橋なんかは、3000円単価の店でもそこそこの魚が食べられる。県別にこだわると、能登の店をやると能登から魚を入れなきゃいけない。そうすると多少は新鮮さは落ちる。築地の近海物の方が新鮮じゃないですか。北海道から入れるとコストも高いし、魚のレベルが落ちていたりする。個店は自分で仕入れにいくから安くて美味い。僕から言わせると、郷土料理で魚をメインで勝負するのは危険。但し、圧倒的な商品を安く安定供給できれば話は別だよ」
「肉は冷凍でくる。鹿児島から来ても、冷凍でブロックで来るから差が出ない。しかも、ブランディングできる。何故なら名前が書いてある、松坂牛、神戸牛、三元豚、比内地鶏など、でも魚に名前はない。関さば、関あじ、呼子のイカくらい。函館のイカじゃなくていい。イカには名前が書いてない。魚は遠いところから持ってくると鮮度が落ちていて、コストもかかり、売値が高くなる。そういう縛りをつくっちゃうと経営的には厳しい。やってわかった。このノウハウは俺しかわからない(笑)。」
「3月にオープンさせる4店は全部肉。肉は全部名前が書いてある。鳥も牛も豚も名前が書いてある。それをビジネスにした方がいい。魚は、産地にこだわらず。安くていい魚を食べさせてあげた方がリピートする。」
「今は明らかにメイン商品がコレというのが見つからない限り、やらない。先に県からいくと危険。佐賀牛は分かりやすい。」
「漁港と契約して毎月2万円ずつ払うシステムとかある。ああいうのは途中で止めちゃう。向こうはその時獲れた魚をまとめて送ってくるので、欲しい魚がこない。シケで獲れない日がある。日本海がシケれば能登の魚が入ってこない。能登の魚が食べたい人が来てくれても出せずにマイナス。無理がある。肉はそれがない。」
「魚は海のものだから、温暖化が進んで旬がずれたりする。富山の甘エビったってそのうち、獲れなくなるかもしれない。海のもの、天然のものをメインにするのは危険。」
・地元出身者に支えられる
郷土料理店を下で支えているのは、地元出身者。彼らは売上をもたらしてくれるだけでなく、口コミで広めてくれる。
「郷土料理をやるからには県出身者を押さえなきゃダメ。固定客として。この辺のサラリーマンは浮気する。新しい店ができれば飽きてくるから他に行っちゃう。思い入れがないから。県出身者は、月に1回行くとか決まっている。他に浮気しても戻ってくる。そこがベースになっている。ウチは県人会のようなのを発足させて、輪を広げようとしている。今月のお勧めメニューをやったり、月に1度来てもらえるような仕掛けを作っている。」
「地方出身者の売り上げは1〜2割。但し、目に見えない宣伝広告はすごい。秋田の人から言われて来たとか、出張で行って秋田の人から東京でこういう店ができたと紹介されたり、目に見えない売り上げが凄い。」
「地元を敵にするのは良くない。秋田でやって分かった。一時期、もういいよと秋田を離した。ところが違う。何度か行って、秋田の生産者と会ったり行政と付き合うと、彼らが宣伝してくれる。そことのコミュニケーションを取っておくと、インターネットより宣伝のスピードが速い。地元と敵になって商売はできない。」
出身者の多い県が良いことになるが、「西日本はきつい。大阪、名古屋でせき止められる。北は仙台があるが、東京へ直行。東北は玄関が東京になる。高知県出身者の数は、秋田に比べれば少ない。」
・集客手段も多様化
集客を検索サイトに頼っている店が多いが、同社はその見直しを始めた。
「検索サイトのお客はリピートしない。クーポンで集客するため、8千円の料理を5千円で出す。初回だから5千円にしましょう。次から割引なしで行きましょう。しかし、本来の販促になってない。5千円だから来るんであって、元にもどして8千円じゃこない。お客の懐は決まっている。検索サイトのお客の懐は4千円くらいと思っているので、違う。」
「検索サイトが強いのは銀座。同じ金額で一昨年、費用対効果は20倍あったが、去年は10倍に落ちた。今期は5倍に落ちると読んでいる。ウチは費用対効果が10倍以下ならその販促は止める方針。いずれ検索サイトは落ちていく。掲載店が増えて、ブランディングされるけどダサくなっちゃう。昔、丸井のカードが出た時はかっこよかったけど、みんなが持ったらかっこ悪くなっちゃうのと同じ。ウチの郷土料理の考え方とは違う。」
現在の売り上げを維持しながら、新しい集客手段を模索している。
「今は代わるものを模索している。それがカード会社の会員と銀座界隈のデパートの会員。 会員誌に掲載してもらったり、JALやANAカードでマイル2倍の店に登録している。お金を持ってる層にだけアプローチする。そのターゲットにだけやらないと費用対効果がおかしくなる。全員に知られてもしかたない。大きく方向転換した。」
「JALやANAで売上に7%の費用がかかる。ネット検索サイトは5〜7%と言われているが盲点があって、5千円を4千円で提供するクーポンを付けている。その1千円はどうする? 料理は5千円で作っているのに、それを4千円で売ることは原価がおかしくなっている。でもその費用を加えてなかった。5%しかかかってないと思っていたけど、実は20%以上かかっていた。PLがおかしくなる。売上が上がっても利益は減る。」
「今は検索サイトの売上が大きいが、徐々にそれに代わるものを作っていく。ウチは銀座のドミナントなんで、銀座のお客が来てくれるツールを作る。そうすれば確実に儲かる。JAL、ANA、アメックス、三越カードなどを活用したい。」
「港区に住む30代の方々が増えている。土日は外食。家族で行ける店にするため、お子様定食をメニューに入れとけ、と店長に言っている。続けることにより、ここは子供が来てもいい店なんだという認識を持ってくれる。自分の実体験から、子供のセットが出てこないのはウチくらい。それなのに店長は土日の売り上げが悪いと言う。土日にどんな人が出てるのか考えろ、そんなお客を来させるような体制を作れ、と言ってます。」
今までは若い外食経営者の会合によく参加してきた安田氏だが、今年は業界の方々とは付き合わず、自分のやり方をぶれずに貫こうとしている。「今の30代の若い経営者は勘違いしている、もっとカリスマをもってオリジナリティを出してほしい。みんな仲良し軍団。個性がない。個性的な店がない。切り口を変えていくべき。みんなまねっこだよ。郷土料理のパクリ、九州業態、テレビ出演、講演、講演ビデオ、有名人ブログなど。パクリ、パクリをやり続けると飲食業界は崩壊する。」
4月からの新年度で、エイチワイシステムは大きく変わる。

熱く語る、安田久氏。