RSSフィード

今はや 〜今流行っているお店〜
 *バックナンバーはこちら

行列の絶えない元祖センベロ。
「宇ち多”(うちだ)」
(東京・立石/居酒屋)

第7回 2011年1月12日

今流行っている店は、どんな店?なぜ流行っているのか?実際に営業中に店を訪れ検証。「次に流行る店」=“次はや”に対して“今はや”。流行りの店の秘密をレポート!レポートは村田麻未。


創業21年の元祖“センベロ居酒屋”は、常に行列。

 創業昭和21年のもつ焼き居酒屋「宇ち多”(うちだ)」(以下、「うちだ」)。平日、休日問わず夕方の早い時間から行列ができる、いまだに絶大な人気を誇る店だ。ファンが多い店で、うちだ中毒、通称“うち中”と呼ばれる、毎日のように通う常連までいる。

 店に着いたのは、金曜の18時半過ぎ。いつものように店の前には行列ができていた。このときは10名程。京成立石駅の駅前にある商店街の中にあるので、行列も隣の店の邪魔にならないように層を作りながら並ぶ。

 古い店構えで、店内も椅子や机も長い間そのままといった雰囲気。接客をする店員は、中高年の男性で愛想はない。だが、この店の売りの一つはホスピタリティ。店の雰囲気的に心配りと言った方がいいかもしれない。例えば、席への案内。数人のグループであっても、満席で並んでいたら一人ずつ席へ通される。当然離れた席になってしまうのだが、隣同士並べるように空いた席を常に把握し、手際よく店員が席を調整してくれ、最終的に並んですわれるようにしてくれる。


常連で賑わう店内。男性が大半だが、女性も2割程いる。

 フードメニューは、もつ料理とお新香のみ。焼きのメニューは、レバー、シロ、ガツ、アブラ、ハツ、カシラ、ナンコツ、ツル。ネタに対して、味付けや焼き加減が好みで選べる。味はたれ、塩、素焼き、味噌。焼き加減は、よく焼き、普通、若焼き(あまり焼かない)、うんと若焼き。これを組み合わせて注文する。「レバー、塩、若焼き」、「ガツ、味噌、よく焼き」など、独特な“うちだ流”の注文の仕方である。初めて行くと、常連たちの注文が飛び交っていて、訳が分からず圧倒される。


「シロ、塩、普通」(180円)


「ガツ、味噌、よく焼き」(180円)

 もつは、焼きと多少メニューが違うが、ほとんどが生でも食べられる。その新鮮さは一口食べただけでわかる程。レバーは、全く臭みがなくプリプリとした食感。


「生レバー」(180円)。

 アブラというのは、いわゆる脂身。だが、歯ごたえのある食感と甘みがあり後味のさっぱりとした脂身で、もたれずに食べられてしまう。脂独特の旨味が後を引く美味しさ。


「アブラ・たれ・普通」(180円)

 驚くのは、その値段。フードは全て180円。これだけの質のもつを出して、この値段は驚きである。

 もつの他にも名物がある。「梅割り」と呼ばれるドリンクだ。これは、梅エキスを焼酎で割っただけの簡単なもの。注文すると、グラスが机に置かれ、梅エキスのボトルと焼酎の一升瓶を両手に持った店員が目分量でついでくれる。ほのかに梅が香って、どこか懐かしい味である。


「梅割り」(180円)

 美味しいもつをつまみに、いくらでもお酒が進んでしまいそうだが、何杯かお替りをすると、店員から「待った」がかかる。「これ何杯めだっけ?」と店員から尋ねられ、3杯目を超えると、「これくらいにしておこうか。」と、コップ半分の半杯までしか注がれない。厳しいようだが、これも店全体の客が楽しく飲むためのルールなのだろう。みなおとなしく従うのが、うちだ流だ。

 お会計も独特。価格がほとんど同じなので、皿の数で計算する。この日は、二人で6品食べて、ビール、梅割りを数杯ずつ飲んで計2400円。まさにセンベロ。


お皿は机に重ねておくルール。

 ちなみに、この日の滞在時間は1時間程度だったが、店を出る20時前には、ネタがなくなり店じまい。席に着いた19時過ぎには、名物のもつの煮込みも品切れになっていたので、本気で楽しむためには17時台には行かないと駄目なようだ。

 新鮮なもつに加え、老舗居酒屋の雰囲気と活気、そして愛情ある“うちだ流”サービスはファンの心を離さない。この“うちだ流”を守り続ける限り、行列は絶えないだろう。

■店舗情報
「宇ち多”」
住所:東京都葛飾区立石1-18-8
電話:03-3697-5738
営業時間:17:00〜24:00(ラストオーダー)予約不可
定休日:日曜・祝日


【取材・執筆】 村田 麻未(むらた あさみ)  2011年1月7日取材


【関連記事】
サワー発祥のもつ焼の名店がのれんの承継目指し新店展開「五反田 もつ焼き ばん」(東京・五反田/もつ焼)(2009年6月1日)
史上最多43団体出場。優勝は初出場「甲府鳥もつ煮」。〜首都圏初開催の 第5回B-1グランプリ。入場者数最多の43万5千人〜(5−1)(2010年9月26日)
「立鉄(たちてつ)」で来店頻度アップ。〜鉄板焼のカジュアル化進む。立ち飲み、ワンコイン。〜(4−3)
(2010年7月21日)

Page Top