フードリンクレポート
キリンは50度で差別化。
富士山麓ハイボールで「今日も登りますか?」
富士山に掛けたコミュニケーション・キャンペーン。
・甘い樽熟香が特徴
「富士山麓」ブランドは、今年5月から徐々に伸び始め、9月単月では18%も伸びたという。甘い樽熟香、50度、価格も手頃という特長が理解され、他店と異なるハイボールを求める飲食店で選ばれている。
キリンビールの蒸留所は富士御殿場。富士山の伏流水を仕込み水として使い、180Lという小振りの樽で寝かす。小さい樽は液体と樽の接触面が多いため、樽の香味成分が染み込みやすい。この香味成分を最も活かすためにキリンはアルコール分50度での出荷にこだわっている。通常、樽で熟成されるウイスキーは約60度。水を加えて、40度程度に下げて出荷するが、キリン富士山麓
樽熟50°は低めのアルコール度数50°で樽詰め・熟成させ、びん詰め時の加水を最小限におさえて50°で出荷する。水を加えると香味成分が弱まるからだ。
独自の強い度数をアイデアに、「富士山麓 樽熟50°」でハイボールを提供する店が増えている。
・富士山に引っ掛けて、山頂ハイボール
キリンが提案するのは、富士山に引っ掛けてアルコール度数のバリエーションを楽しむ「富士山麓ハイボール」だ。10%の「山頂ハイボール」、7%の「七合目ハイボール」、5%の「五合目ハイボール」と名付けている。ウイスキーを割る比率を各々1:3、1:4、1:5として、濃度による味の違いを試してみては、とお客様に提案している。
お客様の方も山登りに引っ掛けて、「今日は何合目まで登りますか?」「今日もまた、登っちゃいますか?」と冗談を言い合い、楽しいコミュニケーション・ツールともなっている。さらに強い度数のストロング・ハイボールを提供する店まで現れている。
縦長の挟み込みメニュー。
また、「富士山麓 樽熟50°」は香味成分が強いので、リキュールや果汁を混ぜてバリエーションを作るより、その甘い樽熟香を引き出すような楽しみ方が出来る。隠し味のように杏のお酒「杏露酒」を数滴たらしたり、メープルシロップを数滴たらすと、甘やかな香りがさらに際立ち、楽しみの幅が広がる。
「昨年からハイボール人気の影響を徐々に受けています。国産ウイスキーを持ち上げる原動力になっています。ウイスキーに親しみのなかった人が触れる機会になります。ウイスキーはロックやストレートのイメージですが、ハイボールになるとすっと入る。RTDと同じような感じで、ウイスキーのカクテルというより1つの飲み物のジャンルが出来上がったと言えます。ビールに比べ安く価格設定できるので、このままチューハイと同じように定着するのでは」と、キリンビールで国産ウイスキーのマーケティングを担当する近藤由美氏(営業本部 マーケティング部 和洋酒担当)は期待する。
ウイスキーを製造するサントリー、アサヒビール、キリンビールともにハイボールへの期待が高い。消費者はハイボールの先にウイスキーを見つけてくれるのだろうか。そこに向かわせる次なる仕掛けが待たれている。
→「キリンウイスキー富士山麓」