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フードリンクレポート


「選べる」時代にマッチする提案、
創作料理と新ジャンル「麦とホップ 樽詰」!

2010.6.10
創作和食の「花咲かじいさん(ハチ公口店)」は渋谷に14年続く居酒屋。昨年12月から新ジャンル「麦とホップ 樽詰」をメニューに入れている。年末の宴会需要に合わせ選択範囲をより広くすることで、お客様にとって更に使いやすい店舗を目指し導入に至ったという。「麦とホップ 樽詰」の提供を始める店が増えている中、同店でのお客様の反応や店側の意図について探った。レポートは国井直子。


麦とホップ 樽詰。

「麦とホップ 樽詰」を年末に導入

「麦とホップ 樽詰」をメニューに導入したのは昨年末。宴会需要の高いシーズンにタイミングをあわせスタートさせた。 飲み放題設定を2時間1,800円の場合は生ビール、1,500円の場合は「麦とホップ 樽詰」とした。同店では「麦とホップ 樽詰」を好んで注文するのは男性にくらべて女性が多いという。「苦味が少なく飲み易いからだと思います。女性が先にこちらを注文することで、同席の男性も同じものを飲まれるケースが多いように感じます」と店長の斉藤弘勝さん。

 一度飲まれると再来店の際も「麦とホップ 樽詰」を注文され、その常連になっていくケースが多いという。お店側は数年経てば若者を中心に「新ジャンルしか飲まない」又は「飲んだことがない」という世代が確実にでてくるだろうという予想もしている。店の入口には「麦とホップ 樽詰」のポップが貼られ、メニューブックにも画像付きでそれが載せられていて、お客様に伝わり易く工夫されている。


入口


「選択できる時代」にあわせた提案

 同店がオープンした頃はまだまだ瓶ビールが主流であった。居酒屋では最初の一杯を瓶でお互い注ぎあって乾杯するという光景が通常で、家庭でも酒販店から瓶ビールを購入し飲み終われば瓶を返していた時代だ。生ビールをジョッキで出すというスタイルはまだめずらしかったが、同店はオープン当初から生ビールを扱いジョッキでの提供を続けてきた。

「私たちは瓶ビールの時代に生ジョッキを先行導入していましたが、当時もすぐに受け入れられた印象はないですね。今でこそ「生」は普通ですが、当時は浸透するのも少しずつだったと記憶しています。私たちは粘り強く「生樽」を仕入れ提供していました。「麦とホップ 樽詰」もまた何年かすると状況はかなり変わり、新ジャンルは著しく浸透していると予想します」とオーナーの小山数雄さん。

 客層で男性客が多いのも同店の特徴的なところ、その要因のひとつとして日本酒や焼酎などアルコール飲料のバリエーションの豊富さが受け入れられているとお店側はとらえている。日本酒は30種以上、焼酎は70種以上もある。「焼酎ブームの頃は特にこれだけ揃えるのが本当に大変でした」。日本酒には四季があり春はにごり酒、夏は生、秋は冷やおろし、冬は燗。夏の冷たい生には冷たい料理があうし、四季を活かした飲み物と料理を組み合わせた楽しみ方ができるのも、和食店の醍醐味である。

「麦とホップ 樽詰」の導入により、味だけではなく価格面でもお客様の選択肢が広がった。「麦とホップ 樽詰」は単品で小ジョッキ 250円、中ジョッキ 390円、大ジョッキ 750円の設定。通常の生ビールは小ジョッキ 320円、中ジョッキ500円、大ジョッキ900円となっている。今後は容量も更に検討した上で、一番小さいサイズを更に注文し易い価格に設定できればという考えも店側にはあるという。

 実際「新ジャンル」に関するサッポロビール株式会社の行ったアンケート調査がある。「ビールは最初の1杯しか飲まないのでもっと安くしてほしいと思ったことがあるか」という質問に対し半数以上が「最初の1杯だけなのでもっと安く」と感じた経験があるという結果がでている。

【調査概要】
・実査時期2010年2月17-18日
・飲食店で「麦とホップ 樽詰」を提供されたことがある人200名とそれ以外の200名の合計400名。
・20代〜50代男女半数ずつ
・居住エリアは全国

質問:ビールは最初の1杯しか飲まないのでもっと安くしてほしいと思うことがある?


 同店では、「まずはビールを楽しんでそこから色々と飲みたい」という嗜好のお客様には、一番小さいサイズを注文し易い価格に設定することが大きな訴求ポイントになると予測している。これはアンケート結果からもユーザーニーズに確かに沿っていると言える。

 又ランチのオープンから夜まで(アイドルタイムのクローズをせず)ずっと開店営業しているのも特徴的。これはシルバー層をひとつのターゲットに考えているからだという。高齢の方は15時くらいから飲み始め、17時から18時頃には帰り風呂に入って早めに眠るという人が増えている。そのために午後もずっと開けていればその効果もある。今後、この需要は更に増えると予想していてその先行取り組みということだ。勿論値段は高くてはいけない。これらも選べる時代にあった同店の営業戦略のひとつである。


創作料理の面白さ

 同じ渋谷には本店となる「HANASAKAJI-SAN NEW YORK(渋谷区桜ヶ丘)」もあり、こちらは創業27年である。両店とも「創作料理」をコンセプトにした居酒屋で、そのジャンルの先駆者的存在ともいえる店。


店内。

「創作料理」というカテゴリーは、まだまだ明確に説明できない一般ユーザーも多く何を食べられるのかイメージしづらいという部分がある。そこに挑戦し続けコンセプト軸をずらさずに楽しんでメニュー開発を繰り返してきたという。昨年末から出している「神鍋(じんなべ)」はこの冬から春にかけてのイチオシメニューで韓国のスンドゥブチゲとタイカレーを掛け合わせて作ったもの。あわせることによって新しいものを作るというのが創作料理の原点だ。「神鍋」というネーミングもお客様が色々とイメージを広げることもでき、わくわくするような名前を色々と検討した結果だという。


神鍋。

 創作料理の原点は「何これ?!」と見た目で思わせ、そして食べて美味しく、見た目とのギャップでより美味しさが印象に残るというのがリピーターをつくっていくひとつの流れだという。しかし奇を衒いすぎると一回きりになってしまうのでそれもよくない。面白さをあたえながらも時代の需要にあったセレクトの幅と安心できる価格設定、楽しめて新しさのある定期的なメニュー開発、それぞれが考えられているからこそ競争の激しい繁華街の中心で長く愛されて営業を続けてきたのだ。新ジャンルの導入は、よりその使いやすさを広げたといえる。


【取材・執筆】  国井 直子(くにい なおこ) 2010年5月17日執筆


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