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フードリンクレポート


角ハイブームに新たな動き。ウイスキーのボトルキープが復活の兆し。

2010.6.30
すっかり人気が定着したハイボール。より安い物に注目が集まる消費者志向も手伝って、お得感のあるハイボール、中でも角ハイの人気はまだまだ続きそうだ。その中、お客さんにより安く楽しんでもらおうと、飲食店の角ハイ事情に“新たな”動きが見られている。ここ最近減っていた、ボトルキープでウイスキーを提供するハイボールセットだ。その動きとお客の反応を追ってみた。レポートは村田麻未。


キープボトルでハイボール。お得な角ハイボールセットに注目。

角瓶のボトル売り店が出始めた

 都内の飲食店では、より安価に角ハイを楽しんでもらおうと、角瓶の「ボトル売り」を始めた店が出てきた。

 角瓶(700ml)とソーダ(500ml)5本がセットになったこの「角ハイボールセット」は、ハイボールジョッキにして23杯分作ることができる。(ハイボール1杯:角瓶30ml、ソーダ120mlで試算。)販売価格は店によって異なるが、3200円〜4800円。一杯換算で、約140円〜200円くらい。かなりコストパフォーマンスはいい。いくら手頃な価格が多いハイボールでも、ジョッキでここまでの安さは殆どない。原価ベースでみると、1杯70円前後の計算で、店側にとっても悪くない数字だ。基本的に、ボトルでサーブし、あとはお客に自分で作ってもらうスタイル。店側としては、オペレーションの面でも手離れがいい提供方法だ。

 さらに、より美味しく楽しんでもらうために、ポップには「美味しい角ハイボールのポイント」と題して、作り方の順とポイントをまとめアピール。正しく作ってもらうことでさらに満足度を上げる工夫である。

学生グループに人気

 実際にこのセットキャンペーンを実施した店舗に話を聞いた。

 田町にある株式会社レストランツファクトリーが運営する「神屋流 博多道場」では、場所柄か学生グループからのオーダーが多かったという。いつものようにジョッキでオーダーするお客にこのセットの説明をすると、ではセットにというケースも。


「神屋流 博多道場」店内。


エントランス脇での告知。
 
 株式会社スキノップの「赤坂聳え(ソビエ)別館 となり」では、ボトルのオーダーというよりは、そのポップの影響によってハイボールのオーダーが増えたそう。メニューに挟み込まれたポップを見て、ハイボールが飲みたくなるお客が多かったようで、ハイボール全体の売上数がキャンペーン開始後増えたという。さらに、同じグループがセットを2回、つまりボトルお替りをしたというケースも。6名のグループだったそうだが、飲む量がおおいグループにはもってこいのセットである。


メニューに挟み込むことによって、ハイボール全体の出数が増えたという。

 そして、同店ではボトルキープできる店として、認知されリピート、常連客化へつながったという。また、これを受けてウイスキーに合う料理の開発を行ったり、ジンジャーハイボール・ダブルハイボールなどの関連商品も導入して注文への間口をさらに広げていけたようだ。

フード売上が増え、客単価アップに繋がる

 しかも、飲み物が常にテーブルにあるということで、お酒を飲むという流れが途切れることない。それに合わせてつまみの品数も増えていき、客単価につながるというメリットもある。そして、ドリンクオーダーの回数が減るのでスタッフの手間が省けるのはもちろん、ドリンク提供が遅れて催促されるケースも格段に減るのである。

 高円寺にある「関根精肉店」(株式会社APカンパニー)では、ハイボール好きな常連を中心に勧め、ボトルキープの割合も高かった。仮に飲みきれなくても、キープできるという点で少人数でも頼めるセットなのである。


「関根精肉店」店内。


「関根精肉店」店内での告知。

固定客の獲得にも一役

 このボトルキープができるというのは、固定客の獲得にも一役買っている。ボトルキープをすれば、訪れる動機ができるからだ。3000円前後でボトルキープができれば、ボトルキープの習慣があまりない若い世代にも受け入れやすい。

 同じく、常連を中心に勧めていたというのは「海宴丸 武蔵小杉店」。4〜5名以上のグループで1杯目にハイボールを注文された際には、セットを勧めた。通常頼む場合と比べて、どれくらい得かという説明をすると、セットオーダーに切り替えるグループもあったという。そして、店側の努力で氷やレモンのお替りを自由にすると、さらに満足度が上がった。


「海宴丸 武蔵小杉店」店内。


卓上に置かれたポップ。

 40〜50代のサラリーマンが顧客の大半を占めるという「さくらさく 総本店」では、顧客のウイスキーへの親和性が高く、受け入れられやすかったようだ。通常店で出しているハイボールは、ウイスキーの割合が高め。今回のセットのように、自分で作るスタイルでは自分の好みで割合を変えられるという点も客側にとってはメリットだったのかもしれない。


「さくらさく 総本店」店内。


「さくらさく 総本店」カウンター席。


「さくらさく 総本店」エントランス。

 広く受け入れられ、ますますファンが増えるハイボール。気軽にボトルを頼んで、グループみんなでワイワイと作るところから楽しむ。作りたてを飲む。そんなスタイルが新しいハイボールの楽しみ方になってきたと同時に、そのニーズに応えて飲食店も動き始めているようだ。


■店舗情報
「神屋流 博多道場」
東京都港区芝5-22-5 タムラビルB1
電話:03-6459-4048

「赤坂聳え(ソビエ)別館 となり」
東京都港区赤坂3-7-9
電話:03-6459-1680

「関根精肉店」
東京都杉並区高円寺南4−49−1 
電話:03-5364-5321

「海宴丸 武蔵小杉店」
神奈川県川崎市中原区小杉町1-403 武蔵小杉タワープレイス2F
電話:044-712-1160

「さくらさく 総本店」
東京都港区虎ノ門1-12-14 虎ノ門第3神原ビルB1
電話:03-3591-1681

【取材・執筆】  村田 麻未(むらた あさみ) 2010年6月29日執筆


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