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フードリンクレポート


【酒類大手4社の2010年】
角ハイボールの定着化とステップアップで、ウイスキー需要の拡大に繋ぐ。
サントリービア&スピリッツ株式会社

2010.2.19
2009年、角ハイボールで外食市場を元気にさせたサントリー。角瓶は前年比131%と今まで低迷したウイスキーのうっぷんを晴らすように驚異的に伸びた。今年は、外食店舗でのハイボールの定着化と拡大で、角瓶から山崎、白州など他ウイスキーへのトライアルを図る。


営業推進部 森本昌紀氏。

「美味しいハイボール」の更なる普及に向け、樽詰角ハイボール店を3千店に拡大

「今年の課題は、*飲用時品質をど真ん中において仕事をします。お客様はビールを始め色んなものを飲みたい。それも信頼できるブランドやしっかりとした作り方でないと、安いだけでは受け入れられません」と全国の外食市場戦略を立案する森本昌紀氏(営業推進第1部 課長)は語る。
(*飲用時品質:消費者の飲用時にもっとも美味しい状態で飲んでいただくための品質)

 首都圏の居酒屋ではデフレブームにも乗り、ビールよりも安く販売できることから、様々なハイボールが登場している。その中には、美味しくないものもある。サントリーにも消費者から、「ぬるかった」「ガスが抜けていた」「濃かった」という声が寄せられているという。

 そこで、ハイボールの品質維持のために注目するのが、冷たさ、炭酸、濃さの3点。これをお客に担保する方法を考えて行きついたのが、店側に扱いが楽な樽詰角ハイボール。10L入り。

樽詰角ハイボール(10L)

 飲用時品質にこだわるのは、かつてのウイスキー水割り時代の苦い経験から来ている。水割りの作り方を任せてしまったため、飲用時の水割りの品質に関与できず、味がまちまちで結果的にウイスキー人気をしぼませてしまった一因になった。

 樽詰角ハイボールは昨年4月頃から首都圏の一部の店で販売を開始。氷をいれたジョッキに注げば高品質の角ハイボールが簡単に提供できる。サーバーもビールやチューハイ用とは異なり、高いガス圧で注出できるように工夫した専用サーバーを用意している。昨年末で扱い店は約500店。これを今年は3000店に増やすのが目標だ。


樽詰角ハイボール専用サーバー。

 昨年で角ハイボールをメニューに掲載する店は6万店と推定され、今年は日本の隅々まで10万店に広がりそうだが、「これからは、単に扱い店数を増やすのではなく、売れるお店を作りたい。3杯売れるお店を100店より、100杯売れるお店を3店作りたい。樽詰角ハイボールは品質上からも一定の販売量が見込めるお店でのお取り扱いをお勧めしています」と森本氏。

現在約500店に設置されている角ハイボールタワーはモデル店として情報発信できる店を中心に今年は800店程度を計画する。一定の販売量が見込める店は簡単に提供できる樽詰ハイボールを、又その他の店でも、現在開発中の、置いたまま一定量ずつ注出できるポンプの設置等で更なる飲用時品質の維持向上に努める。


置いたまま一定量ずつ注出できるポンプ。


角瓶から他ウイスキーへのハイボール展開に向けて

 「まず角ハイボールでウイスキーの美味しさを体感いただいたら、次は角瓶だけでなく、山崎、白州、シングルモルトもあります。ウイスキーならではの幅と奥行きの世界を楽しんで下さい」と森本氏。

 ハイボールがウリの「並木ハイボール」(東京・銀座)では、お客の約2割が山崎、白州のハイボールを注文するという。ウイスキーのことを角瓶で覚えた方が、他のウイスキーのハイボールも楽しみ始めたようだ。「角ハイボール」と「山崎ハイボール」のオンメニュー併置店も多くなっている。ソーダで割ると各ウイスキーの個性が引き立つ。価格に拘らず様々なタイプのウイスキーでその奥深さを味わうことができる。


「並木ハイボール」 店内。


「並木ハイボール」でのシングルモルト・ハイボールのバリエーション。


「並木ハイボール」でのこだわり。

「まず外食市場でウイスキーを良いイメージで体感していただくことがウイスキーの更なる普及に繋がる」と森本氏。
 
 ウイスキー普及のもう一つの下地となっているのが、同社が実施しているウイスキーセミナーで、昨年1年間で流通・消費者向けに延べ1740回行い、5万4千人が受講した。彼らがウイスキーの世界を広めてくれる牽引車となることも期待できる。


「ザ・プレミアム・モルツ」は、1杯目を最高の状態で

 サントリーで好調なのは角ハイボールと、ザ・プレミアム・モルツ。昨年も対前年2ケタ伸びた。樽生取扱店は3万7千店で4千店増えた。全国の中で、特に伸び率が高いのが東京。発売から約10年経つが、大市場での支持が今も広がっている。

「外食市場でのビールの仕事は(発泡酒や第3のビールではなく)ザ・プレミアム・モルツでやるべきと考えています。家で普段飲むものを外食で推し進めると皆さん外食に行かなくなってしまいます」と森本氏は言い、外食市場はあくまでもビールで押す。

「かつてのように3〜4杯もビールを飲む方は少なくなっています。でも、1杯目でビールを頼む方は9割もいます。ビールに2杯目は無いというつもりで、1杯目を最高の状態でご提供いただきたい」とし、あまりビールが出ない店には無理に樽生ではなく、瓶ビールを勧める。

 バー業態での『ザ・プレミアム・モルツ』のブランドおよび品質訴求を目的に開発された『ボトルドラフト』は、ザ・プレミアム・モルツ小瓶をタンブラーに注いだ後、炭酸ガスをビール内に注入することで生ビールに近いクリーミーな泡と味わいを実現する装置。現在全国の有名ホテルバー・オーセンティックバー約200店舗に設置されている。


『ボトルドラフト』

「今や価格はどんな人も気にする絶対的な要素。ただ、そこにどんな価値をプラスできるかを考えています。家でできない体験をまず外食市場で我々の製品を通じてしていただきたい」と森本氏。デフレにもかかわらず、高付加価値商品で売上を伸ばしているのが、サントリー。今年も外食市場活性化に繋がる活動を期待したい。


サントリー株式会社


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2010年2月9日執筆


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