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【独占インタビュー】
全国初、受動喫煙防止条例を施行した神奈川県では何が起こったか?

2010.12.17
 10月にたばこが一斉に値上げされ、日に日に関心が高まる受動喫煙防止への動き。禁煙・分煙を行うことで、営業への影響を心配する飲食店もさらに増えてきた。今年4月から、全国に先駆けて受動喫煙防止条例を施行した神奈川県。施行から半年以上が経ち、どんな変化があったのだろうか?条例施行に携わる、県の担当者に話を聞いた。<全文フリー>


回答者:
神奈川県保険福祉局健医療部たばこ対策課 
企画広報グループ 主幹 加藤康介氏


<ダイジェスト版>


全編をご覧になりたい方は→こちら

Q. 受動喫煙防止条例の概要は?

A. 室内における喫煙に関する日本で初めての規制です。一般の方がお客様として入る施設は全て規制の対象です。その施設の分類は次の2通りです。
第1種施設:病院、学校、など誰もが利用する公共性の高い施設は、原則として禁煙。
第2種施設:飲食店、旅館・ホテル、理美容店などのサービス業の施設は、分煙か禁煙を選択。
基本的に、施設管理者に施設の分類に応じた措置を取る義務が生じます。施設管理者は、その規制が施設利用者に分かるよう貼り紙などで広報すること、たばこの煙がある所には未成年者を立ち入らせないようにすることが求められます。


Q. 来年4月から、条例に反した際の罰則適用が始まりますが、それに対しての戸惑いの声はあるか?

A. 第1種施設に関しては、条例施行前からすでに禁煙になっているところが多く、特にありませんでした。第2種施設に関しては、もう既に約8割ほどのお店が禁煙・分煙に対して何らかの対応済みです。中小規模の企業や店舗ですと、分煙は費用がかかる場合も多いので、対応が難しいと言われることもあります。飲食店は禁煙・分煙が選択できますが、禁煙を選択する方が圧倒的に多いようです。4月までの本格的罰則適用までは様子見、という飲食店もあります。


Q. 条例を知ってもらうために、どのような活動をしている?

A. 飲食店などに関しては、県職員が県内の一軒一軒のお店を個別訪問し、条例の内容を説明したり、ステッカーをお配りしたりしています。これはあくまで、内容を知って頂き、条例が必要だと認識して頂くための活動で、取り締まりではありません。


Q. 市民からの条例への取い合わせは?

A. 条例施行からの7か月間で約2600件ありました。1日10件くらいです。


Q. 住民からはどんな意見が寄せられているか?

A. 県内のこの店が禁煙・分煙対応ができていないよ、という具体的な情報が入ることがあります。その場合は、まず訪問して状況を確認し、お店の方とお話をします。もし、分煙・禁煙に対してやり方がわからないということであれば、無料でアドバイスをさせていただいております。また、資金的に難しいということであれば、中小企業対象の低利の融資制度を設けております。その利子の半分を県で負担するという支援制度です。実際には、分煙よりは禁煙を選択するケースが多いので、実際にこの制度が使われたケースはまだありません。


Q. 条例を守っていない施設に対する対応は?

A. まずは、現地に行って状況を確認し、指導させて頂きます。その後変化がなければ、勧告。それでも対応して頂けない場合は、行政処分にあたる命令を出させて頂くことになっています。それでもご対応がなければ、科料処分と言って、お金を徴収する罰則を設けています。施設管理者に対しては、5万円以下の科料です。なお、今回の条例では、指導、勧告に応じて頂けない場合は、その施設の住所、名前を県の公報で公表させて頂くことになっています。これは、住民の方に対して、この店では受動喫煙の危険性があることを知らせる目的です。この指導や勧告、処分の流れは、罰則適用が始まっても変わりません。今のところ、勧告などを行った施設はありません。


Q. 神奈川県の他に、受動喫煙防止条例を検討している自治体、もしくは団体はあるか?

A. 最も具体的に進めているのは兵庫県。静岡県、京都府も検討していると聞いています。市では、千葉県流山市です。兵庫県では、我々(神奈川県)の条例をベースにさらに踏み込んだ内容にすると聞いています。飲食店などのバックヤード部分も対象にした条例にするようです。


Q. 国の受動喫煙防止条例対策については?

A. 今年2月に出された厚生労働省の健康増進法の解釈通知では、不特定多数の人が出入りする施設に関しては、原則として禁煙にするように通達が出ました。また、5月には、労働安全衛生法の改正を目指した動きがあり、神奈川県の条例では対象にしていない、職場に関しても規制をする方向で話し合いがされています。これが改正されれば、神奈川県の条例よりも厳しい内容の規制がかかることになります。全ての施設で平等に受動喫煙防止の対応がとられることになれば、逆に吸える場所にお客さんが他へ逃げるということもなくなると思います。

Q. 神奈川県が規定する分煙対策はどのような内容なのか?

A. ただ席を分けただけでは分煙にはあたらず、空間をきちんと分け、喫煙・分煙のエリアに分け、壁を作って頂く、喫煙のエリアには屋外に空気が流れる排気設備を設けて頂くことになっています。原則は換気です。そのエリアの境界に空いている空間がある場合には、禁煙エリアから喫煙エリアに向かって、毎秒0.2m以上の空気の流れを作って頂くことになっています。この流れを作るには、ある程度まとまった排気量が必要です。条例では、喫煙所を設けることも可能です。喫煙所とは、お店のサービスは受けられませんが、ただタバコを吸うためのスペースのこと。喫煙所を作る方が、分煙設備を入れるよりは、コスト的には低く済むと思われます。


個別訪問をするなど、条例普及に力を入れてきた神奈川県。条例施行後も大きな混乱はなく、条例の浸透が進んでいるようだ。条例施行後、禁煙にした神奈川県内の飲食店では、ほとんど客足に影響がなかったというアンケート結果が近々出そうだという。それによってさらに他の県でも同じ対応をしていこうという動きがさらに高まるのではないだろうか。

【取材・執筆】 村田 麻未(むらた あさみ)  2010年12月11日執筆

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