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メディカル・レストラン

メディカル・レストラン

『健康×美食ラボ』が送るメディカルフードレポート
『健康×美食ラボ』所長:医学博士 岡野喜久夫 

第11回「田佐久」


2007.5.25
現役の医師が、健康になれるグルメ情報をお伝えします
 
 今回所長が舞い降りたところは東京は下町のミッドタウンである浅草!それも食通通りでございま〜す。前回シャンウェイを探し出した合コン好きのスタッフはその成果が認められ5月から正社員に昇格!!彼が今回もディープなディープなお店を教えてくれました。ムムムム。。。おぬし何モンやねん。いつも机の上でぐーたら寝ている新人とはとても思えん!「美味しんぼ」の山岡士郎の生まれ変わりかぁ?キサマなんぞに負けられるかい!こちとら海原雄山やで〜てんでつれて行かされた先がここ「田佐久」でござんす。そこはそこは本当に奥の深いスッポン料理の浅草旗艦店でした!

「田佐久」

(住所)東京都台東区浅草1-14-2
(電話)03-3841-3143
(営業時間)不定休

 
 暖簾をくぐると・・そこはスッポンの世界!・・じゃなくって鮟鱇の骨と歯のネックレスがつるし切りよろしく出迎えてくれま〜す。魑魅魍魎の世界には縁のなさそうな優しそうなご主人の笑顔も最高!!



 さて、席に着きましょう。今夜の所長の夕食は・・・いきなりですか?!い、い、生き血かよ! 亀ハメハーー!!


生き血

 士郎なんかに負けられるかい!ドラキュラになった気分でクィーっと一気飲み!あーしんど。。突き出しのアナゴの肝などでビールをあおる間もなく今度はスッポン生もの揃い踏みだぁ。心臓、精巣、卵巣、肝臓、腎臓、胆嚢、筋肉!! やさしいご主人がふつ〜の顔して「あ、胆嚢だけは苦いから噛まないで飲みこんでね。」。。。あのね〜そう言う問題じゃなくってさぁ・・・と思ってるそばから士郎のヤツはガツガツ食い始めました。「クソー!ナマがなんだ。まずは腎臓から食ったるわぃ!」・・「ウン?美味い!」サッパリしててすんごくおいしいのです。腎臓は処理が悪いとアンモニアの臭いがするのに新鮮で臭みもまったくないしこりゃたまげました。言われないと鳥の内臓そっくりで卵巣なんか焼き鳥のチョウチンより美味いのだ。いっくらでも食べれま〜す。海原雄山になりきった所長は「うん?苦いからと言ってスッポンの胆嚢をちゃ〜んと味わえないようではな。おまえも正社員と言ってもまだまだラボの新人だのぅ。ガハハ。。」と社長座りで胆嚢をたんのう(笑)した所・・ウゲゲゲ。すごーーーーく苦い!!!噛むんじゃなかったぁ。。結局食事の最後まで苦みが口の中に残る羽目に。トホホホ。。


突き出しのアナゴの肝


心臓、精巣、卵巣、肝臓、腎臓、胆嚢、筋肉


 はあぁ。苦かった〜っと今度はなんだぁ??


スッポンの腕(足?)の丸焼き

 御造りに続きます今晩の焼き物はスッポンの腕(足?)の丸焼きでごじゃりましたぁ(泣)水かきや爪まで良くわかる〜〜わかり過ぎだって。「ここでは何も考えちゃいけない。心を無にして明鏡止水。けっして何も考えては。。。」と呪文を唱えながらカブリつきます。そう!これも当然ながら見た目を考えなければ美味いのであります!ナマがあれだけ美味しいんだからそりゃ想像できますよね。牛の頬肉に似たテクスチャーで油が多いのに何故かあっさりしています。完食!
・・・・だんだんこの世界が普通になっていく自分が恐い。。。

 さて、スッポン料理と言えば鍋!ドーンと出てまいりましたー


すっぽん鍋

 おー!なんと大量のスッポンが入っている事か。甲羅も入ってるし!ここのお店は完全予約制でお客に合わせて取り寄せております。今夜のは九州産のが2匹まるまる使用されております(精巣と卵巣があったって事は雄と雌だったのでしょう。恋人同士だったのかなぁ?私の胃の中で再び寄り添って愛を語らいなさい、笑)。さーてっと、うん?これ何?? ゲロゲロゲロ。。。。スッポンの頭だぁ〜い。こっち見てるしー!


すっぽんの頭

「ラボのカシラがカシラを食べないでどうするんですかー笑」って士郎の奴こんな時ばかりおだてやがって!顔ですよ。くゎお。トホホ。。。しばらくにらめっこしてたらスッポンが莞爾と笑って「Eat me if you can !」だと。 てめーなめんじゃね〜ぞー!思わずバグっとスッポンに喰らいつきましたが、ガチ!甲羅は柔らかいのに頭蓋骨は固〜い。カメへんわー! 仕方なく口からスッポンの首を引き抜きますと頭皮だけズルッと剥けてスッポンちゃんはスッポンポンの髑髏顔・・なのにジッとまだ私を見ているじゃありませんかぁ。。ダジゲデグレー!これは夢に違いない。。。。

 気を取り直してスープを口に。流石に最高のダシのうま味が生姜の風味と共に口の中にフワ〜っと広がります。浮かんだ言葉は「し・あ・わ・せ」じゃなくって「へ・い・わ」。このお店に入りドキドキしっぱなしでやっとたどり着いた平和な瞬間でした(笑)。

 最後は普通ならマル雑炊ですよね。ところがここはスッポン鍋のスープだけを使ってご飯を釜で炊いてくれます。銀シャリがほんのり黄色く色づいて金シャリに昇華されております。


スッポン鍋のスープだけで炊いたご飯

 美しいです。今までの作品に比べて綺麗すぎで信用できません。この金シャリの中から何か(シャリコウベ?なんちゃって)出てくるのか。。と蚤取り眼で観察しますが何もなーし。コラーゲンがタップリの濃厚なご飯を口に含みながら驚愕しまくりのパンドラの箱は徐々に閉じて行くのでした。。。。やれやれ。。


所長のコメント:


 さて、食の大君中華料理の次に「メディカルレストラン」が取り上げた食事はスッポンです。漢字だと鼈。英語だとSoft-shelled turtle。時々英語ってその物の要点を言い表してて感心するのですが、スッポンはまさに甲羅が柔らかいのであります。蟹が脱皮をした直後に食べてソフトシェルクラブ、な〜んて言ってる輩とはまったく違いましてスッポン君は構造自体が妙なのであります。それは、甲羅と言いましても亀みたいに甲羅全体がカチカチになっているわけではなく、肋骨状に固い甲羅様の組織が数本のびててその間を靭帯が覆っているのであります。その靭帯の箇所はかなり柔らかいんですよ(食べて特に美味しくはないですが。笑)。知らなかったでしょう?京都の「大市」なんぞで出すスッポン料理はひたすら品の良い鍋と雑炊です。甲羅や内臓などは出さないのでスッポン君の解剖は学べませ〜ん(笑)。

 スッポンは油とコラーゲンに富み素晴らしいダシがでるため、究極の食べ方はやはり吸い物、鍋、雑炊あたりに落ち着くのでしょう。今回は2匹のスッポンを頭から足まで全てガップシと堪能させて頂きましたが翌日の所長の胃腸はとっても良い感じでした。油が多いのに牛肉系と違って翌日の胃腸が軽いのは羊の際もそうでしたが一見動物性の肉質ですが水分が多く含まれている油が植物性に近いからなのです。カロリーも少なくビタミンAとB1とカルシウムが多いのも魅力的です。そして最大の栄養的特徴は、タンパク質にあります。スッポンのタンパク質はアミノ酸が豊富で、分析しますとアルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニールアラニン、チロシン、ロイシン、グリシン、アラニンなど18種にも及ぶアミノ酸が含有されておりとても優れた食物である事が判ります。

 今回取材したスッポン君は美味しいだけでなくコラーゲン他含有タンパク質や油からカルシウムまで健康食そのもの!メディカルレストラン的にはお勧めの食材です。問題は処理の仕方と日常では食べない「カメ」を食べる心情&ど〜見てもビジュアル系の食物ではないって事でしょう。そこで、視覚的にキツイのであればまずは品の良い鍋料理のお店から入門されたら如何でしょう。そして世界が認める最高のダシ(フレンチでもダシは最高のコンソメとして扱われます。肉は食べないのがもったいないですね)が取れますので様々なお料理の隠し味にスープだけを使用するのも宜しいと思います。そして何度もスッポン専門店を行脚された後に「田佐久」と言う「現代のスッポンの基礎知識」いや「スッポン解剖学マニュアル辞典」の暖簾をくぐってみて下さいね。


 さて、ここですんなりと終わったら面白くないですよね。今回はテーマであるスッポンに絡ませましてメディカルコーナーを設けました〜。

 お題は・・・、


「強壮力と男性更年期の壁を科学する!」


 ラボ所長もおじさんの街である新橋で開業して早10年。サラリーマンの方々からシモの悩み相談を日々受けております。最近では男性更年期が問題にもなってきており、この『壁』に対してメディカルレストランは切り込む事にいたしました。果たしてスッポンやその他諸々の強壮食(漢方も含めて)に男性陣の求めているパワーがあるのか?

 調べてみましたよー!精力剤にはスッポン以外にも、サイの角やオットセイやヤクの睾丸やら怪しい物が並んでおります。マムシや毒ヘビ関係も多いですね。植物ではクコの実とマカがありました。これらの食品の特徴としましては例外はありますが、

1)どれもこれもそこらへんに転がっているものではない物。
2)おどろおどろしい物。
3)普通は食べるとは考えられない異様な物。

 まずはこれらから文献検索をしてみましたが、西洋医学関連ではほぼ全ての食材に対し残念ながら否定的な論文しか存在しませんでした。そしてその研究たるや量が少ない!やはり何千人レベルでの大規模な性的な研究系には大きな壁がある様です。しかし東洋医学関連におきましては一部において肯定的な食材や漢方薬も書いてあります。しかし。。実験系が人での物が皆無であり動物実験レベルの話ばかりです。ネズミの性生活になんて興味ありませ〜ん(笑)。もともとネズミ算なんて言うくらいお盛んでボコボコ増えるんだしさぁ。。。。薬物を喰わす前から元気で実験になってないじゃん!

 やはり真の強壮食は世界広しと言えども見つからないのでしょうか?今まで信じられていたおどろおどろしい物は単なる思い込み(プラシーボ効果)で効いた様に感じられてたのでしょうか?(男は単純だからなぁ。。爆)

 アプローチの方向を変えて、男性力の低下が問題になっている男性更年期その物について考えてみましょう。その原理を解読し解決する事で男性力を強化し『壁』を打ち破る事が出来ないのか!

 昔は男性の更年期なんて物はないと考えられておりましたが最近では男性にも立派にあるという方向になり研究が盛んにされております。では、まずは更年期とはなんでしょう?それは性ホルモンの減少に伴い体質が変化し身体の様々なバランスが崩れる事です。


 男性の場合、その3大更年期症状は

1)うつ傾向。
2)女性の更年期症状の様なほてりや発汗など。
3)性欲減退&男性力の低下。 

 そもそも男性も女性も生まれながらにして男性ホルモンと女性ホルモンをきちんと持っております。

 女性はある年齢になりますと急激に女性ホルモンが減り昔から有名な更年期の諸症状がはっきりと急に出るんですね。もともとある男性ホルモンは減らないので相対的に男性ホルモンが優位な状態に変化します(アクティブになり強くなり・・恐い恐いオバタリアンが出来上がります、爆)。

 男性サイドは男性ホルモンは急激には減りませんが30歳過ぎから徐々に減少していって女性同様に若い頃よりかなり減少してしまうのです。そしてもともとある女性ホルモンは減らないので相対的に女性ホルモン優位になります(ノンアクティブになり人間がまるくなり優しくなるんですね、笑)。


 男性更年期の治療は二つです。

1)心のケアと自律神経のコントロール
2)男性ホルモンの減少が問題なわけですから男性ホルモンの補充。

 そしてこの2の男性ホルモンこそ男性力プア、強壮力プアを打ち破る根本的な物質なのは想像に難くありません。しかし男性ホルモンは注射で投与するしかなく経口剤では無理と考えられており・・結局食べ物からも補充する事は無理って事ですね。。。泣。ではそれ以外に口から摂取して男性ホルモンの変わりになる物質はないのでしょうか?これがですね・・・・なんとあるので〜す!!

 それはDHEAと言う男性ホルモンの前駆物質(その前段階の物質)です。DHEAは男性ホルモン以外の物質にもなりますが男性更年期に効果があるので海外ではかなり使用されております。しか〜し、DHEAを多く含んだ食物が見つかったという報告は残念ながらまだありません。壁ルネ・ソービニョン(意味なし、笑)。

 もしもDHEAたっぷりの食物があったら。そして美味しかったら。。。何千年も昔から世の皇帝や王が世界の果てまで捜させた食材が発見される事になります。もしも存在しなくても遺伝子工学がこれだけ進歩しているのですから遠くない未来に美味しくってDHEAタップリの食物が味わえるはず。♪〜24時間たったかえますか〜DHEA!DHEA〜♪

 それにしても果てしなくそびえたつ男性力プアの『壁』でしたが・・考えてみれば人間にもっとも遺伝的に近いチンパンジーでさえ更年期などなく本来の寿命で死んでいくわけです。人間だけが科学の力などで本来の寿命より長生きし過ぎているのですね。。。。生きれば生きるほど人間という生き物の悩みが増えていくと言うジュリアノ・ジレンマ(これが判るマカロニ・ウエスタン好きだった方は更年期近いかも。爆)。。。


■所長の独り言

 まーね。男性のあそこの調子は心理的な事がおおきーのよ。だから気分が良くってリラックスできて心がプアでなくリッチになれば大分違うはず。そう言う環境を作るほうが先でしょうよ!今はストレス社会ですからね〜ストレスが少子化も生んでると思うな〜。

 今夜のケーススタディであるラボスタッフ全員はスッポン君の効果もなくプアな夜を過ごしたと報告を受けております。。。。なさけなや。。。爆

執筆 『健康×美食ラボ』所長:医学博士 岡野喜久夫 2007年5月25日

『健康×美食ラボ』所長
医学博士 岡野喜久夫

岡野内科診療所院長
東京都港区新橋1-18-14 三洋堂本館ビル8F
03-3502-8060

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