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焼鳥・おでんが90円。昼3時から営業する大衆居酒屋
「炭火やきとり たまちゃん」
(川崎・溝の口/焼鳥)
第316回 2010年5月18日
外観。「90円やきとり」の看板が目立つ。
1号店「ご馳走居酒屋 たまい本店」が、大衆酒場としてオープンしたのは昭和42年。それ以来、「溝の口の発展とともに自分たちも成長する」をモットーに、居酒屋、焼鳥、焼肉、ダイニング、ホルモン、中華、ラーメンなど、さまざまな業態を出店してきた。
社会貢献の具体的な表現として、たまいグループ社員で街を巡回して、警備をかねてゴミを拾う、清掃行動を行っている。また、「たまい本店」では高津区役所、近隣5店と協同して、溝の口を舞台にするアニメ・漫画『天体戦士サンレッド』に登場する「鶏だんご鍋」を地元高津区の野菜を使って再現するイベントを、今年2月から3月にかけて行った。
そうした、たまいグループの最新店が、今年4月26日にオープンした「炭火やきとり たまちゃん」。両駅から歩いて3分ほどの飲食ビルの1階にある。
昼の3時より開いている店で、平日が休みの人など、昼間近くのパチンコ屋で遊んでから食事ができる場所を探している人を、ターゲットにしている。夜は11時までと、店じまいも早い。
売りは1本90円(税込94円)の焼鳥と焼とん。野菜の串焼も少しある。スタッフおまかせ5本で440円のセットも提供している。
焼鳥(焼とん、野菜串含む)1本90円。ラッキースポットでは1本70円。
同店の焼鳥など串焼の特徴は、安くて手打ちでかつ炭焼であること。具も通常の焼鳥店で見るよりは一回り大きい。不況で消費者の懐は寂しいが、安い値段でおいしく、お腹いっぱい飲んで食べてもらおうという趣旨の店だ。
串焼の具は、当日仕入れ、当日売り切りをモットーとしており、全て新鮮。毎日600本〜900本打つ串焼はほぼ完売となる。足りなくなると、近所のたまい系列店から調達するケースもあり、そこは溝の口に店舗が集中している良さに助けられている。
人気メニューは、鶏の手羽、定番のヒナ、豚の特上シロやタン。値段は150円するが、シロコロホルモンのオーダーも多い。
もう一つの売りは、1個90円のおでん。10種類の具が揃っており、スタッフおまかせ5点盛り440円のセットもある。
おでんは1個90円。おまかせ5点盛り440円。
一品料理は早く出せる15種に絞っており、枝豆(250円)、若鶏唐揚げカレー味(560円)をはじめとする揚げ物に人気がある。
ドリンクは、氷を入れない「三冷ホッピー」(420円)が売り。キンキンに冷やしたホッピーを「キンミヤ焼酎」で割り、キンキンに冷やしたグラスで飲む。つまり、ホッピー、焼酎、グラス共に冷やして提供するから“三冷”なのであって、氷を入れないから時間が経ってもお酒が薄まらないメリットがある。
1℃まで冷やせる冷蔵庫に入れた、ホッピー・黒ホッピーと、キンミヤ焼酎、グラスでつくる、氷を入れない「三冷ホッピー」。
たまい社長・石井一之氏解説、三冷ホッピーの説明書。各テーブルに置いてある。
同じく、「キンミヤ焼酎」を使った昔ながらの下町の「元祖ハイボール」(350円)もあり、夏は焼鳥、冬はおでんをメインに楽しみながら飲める。
空間は昭和レトロを意識して、コンクリート打ちっぱなしに、昔の大衆酒場風の安っぽいテーブル、椅子、壁にメニューがペタペタと貼ってある、提灯や裸電球を吊り下げるといった演出を行っている。BGMは祭囃子を採用している。
顧客層は、近隣に住む20代半ばから60代までと幅広く、男女比は7:3で男性が多いが、女性同士の来客もかなりあり、男性ばかりというわけではない。顧客単価は約2000円となっている。
休日は家族連れも多く、店内に設置してある、わたあめが自作できるわたあめ製造機の需要が増える。わたあめは通常200円だが、お子さんと美人さんは50円。美人さんかどうかは自己申告とのことだ。
わたあめ200円。お子さま、美人さん50円。
さらに、入口付近のカウンターなどでは、「ラッキースポット」として、焼鳥など串焼が1本70円になる特典がある。
「お客様がたくさん入っていると外から見えるように、入口付近にラッキースポットを設けてみました。ラッキースポットに座って、お酒を注文せず、水を飲みながらひたすら焼鳥を食べ続ける人もいますよ。手羽、特上シロ、タンは、原価を考えると手打ちだからこそ、この値段で出せる大サービス品ですね。お客様はよく知ってます」と、岩坂卓店長はラッキースポットと手打ちの効果を語る。
入口付近のカウンターなどはラッキースポット。焼鳥70円。
店内。
ラッキースポットには女性客が多く、奥のテーブル席の壁際はカップルが多い傾向が出ているそうだ。
特にオープンしてから宣伝はしていないが、平均して120人くらいの来客があり、1人平均焼鳥5本を食べるという。回転数が高いとは言えないが、集客は順調でこのペースで十分採算は取れるそうだ。
地域密着、焼鳥・おでん90円、ラッキースポット、昼3時から営業、三冷ホッピー、わたがしと、いろんな仕掛けが詰まった「炭火やきとり たまちゃん」。ただ料金が安いだけでは差別化が図れなくなってきた、これからの居酒屋のあり方に一石を投じた考え抜かれた店と言えるだろう。
岩坂卓店長。
【炭火やきとり たまちゃん】
住所 | 神奈川県川崎市高津区溝口1-12-10-1F |
電話番号 | 044-822-5002 |
営業時間 | 15:00〜23:00 |
定休日 | 無休 |
客席数 | 100席 |
客単価 | 2000円 |
目標月商 | 600万円 |
開店日 | 2010年4月26日 |
経営母体 | 有限会社パブリックハウスたまい |
※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。
長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年5月8日取材
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