フードリンクレポート


大阪発「情熱ホルモン」、200店達成。
出遅れる首都圏も100店を目指す。

2009.12.16
女性にも大人気のホルモン焼き。新鮮さにこだわる様々な部位を炭火七輪で焼く「情熱ホルモン」が直営・FC出店で快進撃を続け、当初目標の200店を今年12月に達成。出遅れた首都圏でも出店100店を目指して今年から活動を始めている。


全国で200店を達成。

2005年6月「情熱ホルモン」スタート

「情熱ホルモン」を展開するのは、五苑マルシン株式会社。1978年に大阪市大正区で「餃子の王将」FCとして外食事業を始めた。88年には独自の焼肉店「五苑」を開発。現在直営・FC合わせて北海道から沖縄まで54店。中生ビール199円で提供する人気の焼肉チェーンに育っている。他にも、お好み焼き「じゅうじゅううめぇ家」、中華「九苑酒家」、とり焼「オードリー」、串カツ「くし若まる」と業態開発を続けている。

 同社の創業者で現社長は川辺清氏。1938年生まれで、2歳のとき小児麻痺に襲われ不遇な青少年時代を過ごした苦労人。『負けたらあかん、勝つ!!』を合言葉に、大阪から食文化を全国に発信している。

 そして、焼肉チェーンのノウハウを基に、2005年6月に開発されたのが「情熱ホルモン」。現在、直営・FCで北海道から福岡まで展開し、今年12月には当初目標の200店目が誕生する。3年半で達成した。

 今、コラーゲンがたっぷり摂れるとホルモンブーム。「情熱ホルモン」は新鮮ホルモン290円(税別)から手軽な価格設定と相まって、20〜30代の若い女性を魅了している。女性客比率は平均で5割だが、立地によっては6割、日によっては9割を占めるという。


七輪で焼く。


加盟店は、営業利益30%、投資回収24ヶ月

 200店の内、約半数がFC。FC募集はホームページ上のみで宣伝活動は行っていない。オーナーからの紹介、紹介で増えている。営業利益30%、投資回収24ヶ月という実績が魅力となっている。外食以外の業界から加盟が大半。

 40席モデルでスケルトンからの初期投資2900万円。加盟金・保証金・研修費など520万円を含む。月商400万円で、原価率30%。ロイヤルティー3.8%も差し引いて、償却前利益で121万円。24ヶ月で初期投資が回収できる。

 この高利益は回転率の高さから。人気だが時間制限は基本的に設けておらず、週末はウェイティングが出来る。ホルモンは本部から安定的に仕入れることが出来る。大半の部位は店でカット。その方法は研修で学ぶ。仕入れても2日間で売り切れ、フレッシュ・ローテーションがますますお客を呼んでいる。

「情熱ホルモン」の他ホルモン焼との違いは、食べやすさ。食べやすく焼肉スタイルで出す点が評価されている。ホルモンをグロテスクに出す店は多いが、何度も通ってもらうために美味しそうな見た目を重視。小ポーションで1皿290円〜590円で提供し、色んなものを食べてみたいというお客のニーズを満たし、客単価は3000〜3200円にもなる。

 FC店の店長は、外食は素人ゆえに必死で働いてくれ、2〜3店舗に増やして外食事業部門のトップになろうと励んでいるそうだ。


メニュー。


ホルモン部位説明。


シロ 290円。


本日のミックス。


特製タレ。


首都圏は、新宿・思い出横丁店で成功

 五苑マルシンは、手薄だった首都圏での出店を加速させるため、今年から東京本部を新宿に構えた。大阪の外食企業が東京ですんなりと成功するケースは少なく、同社も苦労を重ねたが、東京の人材を採用し、立地の問題を補えるようになった。

 転機となったのは、新宿・思い出横丁の店。FC向けのアンテナ店として今年出店。屋上の電車から見える位置に巨大な看板を設置した。「情熱ホルモン」の認知が広がり、約半年で首都圏に23店が誕生した。


新宿店の外看板。


新宿店店内。

 関西では出店余地が少なくなり、首都圏でまずは100店体制を築こうとしている。その際には全国では350〜400店と、当初目標の2倍に達しそうな勢いだ。ホルモンの供給も確保されている。

 FCをフォローするためにスーパーバイザーだけでなく、教育担当者を巡回させ始めた。店舗スタッフの接客をチェックし指導する。現在、東京本部でテストを行っており、成果を見て全国に拡大する計画だ。

 気になるのは、ホルモンブーム。ブームは終わるのが常。同社はホルモンだから売れているという流れを変えていこうとしている。ホルモンの美味しい店だが、他にも店の用途を広げようとしている。和牛も下火だが売れ続けている。ホルモンも同様、使う頻度が減ったとしても美味しく提供していればすたれない。ブームの先を既に見据え、息の長い「情熱ホルモン」に育てようとしている。


→「情熱ホルモン


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年12月7日執筆