フードリンクレポート


ニューヨーカーに豚足を食べさせた男。
〜ニューヨークでフツーの店を出そう!〜(7−1)

2010.3.17
米国ニューヨークの日本料理店は、リーマンショック後の不景気で滞米日本人が減ったため減少傾向。現在はマンハッタンに7〜8百店。内、日本人が経営する店はおよそ半分。しかし、今、日本で言うフツー店にニューヨーカーが足を運び始めた。小規模企業でも出店のチャンスが来た。7回シリーズの第1回目。


「Fried Pork Tonsoku」(トンソク唐揚げ ユーリンチーソース)8ドル。

ニューヨーカーに豚足を食べさせた男

 今、ニューヨークで人気なのは、天ぷらや寿司などの代表的な日本料理が全て食べられるような日本式居酒屋ではない。それに飽き、専門店が求められている。しかも、08年秋のリーマンショック後の不景気が続く中、庶民的な食べ物の専門店が人気だ。日本人が経営する豚足、うどん、丼物の店を10年2月にニューヨークに飛んで取材した。

 まずは、ニューヨーカーに初めて豚足を紹介した「HAKATA TONTON」。経営するのは福岡で豚足料理専門店「新・美肌促進食堂 燈・巳家枇(ひ・みやび)」を持つ、ヒミ*オカジマ氏。福岡店のオープンは05年1月だが、2年9ヶ月後の07年10月には既にニューヨークに2号店を開店させた。そして、健康や美容に良いとニューヨーカーが続々足を運んでいる。


HAKATA TONTON」 61 Grove St NEW YORK, NY 10014


店内は、博多一色。


お客は、ニューヨーカーが半数。週末は3回転する。

「こちらに来た当初、ニューヨークはユダヤ人が多い街。豚を食べないユダヤ人の街で豚足なんて絶対無理とも言われましたが、健康や美容に敏感なニューヨーカーなのでウケると信じていました」とオカジマ氏。

 出店のキーとなったのは、米国人弁護士デビッド・シンデル氏との出会い。彼が主に出資し、オカジマ氏がノウハウを提供する形。独自に出店するより、現地の方とのパートナーシップが成功の要因のようだ。店舗に地元客を連れてきてくれるなどPRも一役買ってくれる。弁護士との出会いは、オカジマ氏がニューヨークでネットワーク作りに励んだから。

 そして、「週刊NY生活」http://www.nyseikatsu.com/ など地元日系新聞社、「JaNet ニューヨーク異業種交流会」http://www.igyoshu.com/ など日系人組織などの人脈をたどり、オープン前からニューヨークのレストラン業界で話題となった。

 オープン前に、地元有力メディアの一つである「New York Magazine」に取り上げられた。オープン日当日にはアメリカテレビ局の4大ネットワークの一つ、CBSの朝の看板番組「The Early show」で放送された。「Health Watch」という健康関連の情報コーナーで特集され、栄養士や皮膚科の医師のインタビューもあり、科学的根拠も取り上げられた。日本も同じだが、メディアでの認知が集客に大きな力を発揮する。


「HAKATA TONTON Hot Pot」(モツ鍋)13ドル(1人前、2人前から)。上に乗るのは、餃子の皮。〆のちゃんぽん麺は4ドル。


「Pork Tonsoku Ponz」(トンソクぽん酢)4ドル。


「Himi's Famous Homemade Gyoza」(鉄鍋焼き餃子)8ドル。

 豚足は米国人が食べないため、安価で仕入れられる。同じく人気のモツ鍋。そのモツは、人気のブランド牛「WAGYU」の内臓を使っている。こちらも、米国人は食べないため安価で仕入れ。客単価は60ドルくらいだが、原価は1〜2割しかかかってないという。しかも、40席が週末には3回転し、予約なしでは入れないという繁盛店だ。


ヒミ*オカジマ氏(右)と、マネージャーのミヤケ・ユリコさん。ミヤケさんは女優と兼業。


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年3月15日執筆