フードリンクレポート


リーガルは働かないし、残業させると給料1.5倍。
〜ニューヨークでフツーの店を出そう!〜(7−3)

2010.3.19
米国ニューヨークの日本料理店は、リーマンショック後の不景気で滞米日本人が減ったため減少傾向。現在はマンハッタンに7〜8百店。内、日本人が経営する店はおよそ半分。しかし、今、日本で言うフツー店にニューヨーカーが足を運び始めた。小規模企業でも出店のチャンスが来た。7回シリーズの第3回目。


「温や」支配人の稲垣稔氏。

リーガルは働かないし、残業させると給料1.5倍

「昼は1日200名で、月商400万円。夜はフルサービスの居酒屋になり、1日80人くらい。合わせて月商900〜1000万円。昼はローカルの人が多いが、夜は日本人。でも、徐々にローカルが増えています。夜は25〜30ドルのセットと安い。」


宴会コースは、25ドル、30ドルと安い。

「串カツも出していますが、串カツはこれから。油で揚げる“ディープフライ”はローカルの人は余り食べない。とんかつ、天ぷらもディープフライ。健康に気を付け、油を抜く。 肉系を食べないベジタリアンが多い。5人に1人くらいがベジタリアン。ピュアな絶対食べない人と、なるだけ食べない人に分かれる。うどんは魚の出汁で、それがダメな方もいます。」

「まずは日本人に来てもらわないと。日本人が美味しいと言わないと本物じゃない感じ。本物を中心にローカルな方向けにスパイシーなうどんを作ったり、ほうれん草を練り込んだうどんをクラムチャウダーにいれたメニューなどを開発中です。」

「鶏塩うどんがローカルな方に受けています。魚を使わず、チキンスープを使ったうどんです。」


人気の鶏塩うどん。

「正論でいくと辛い。うちはリーガル(合法的に働ける方)を採用しています。正直、レストランでイリーガル(ビザを持ってない移民など)を使ってない店は無い。日本のチェーン店だと会社のコンプライアンスとして絶対にそんなのを雇えない。だから、人件費が高くなる。リーガルは働かない。主張ばかり。イリーガルは生きるために働くのでハングリー。だから大手は成功しにくい。うちはリーガルばかり。グリーンカードを持つ日本人の主婦の方を昼間は雇っています。」

「給料は、イリーガルは1日12時間で週に400ドル。4〜5人で狭い部屋に住んでいるから生活していける。リーガルの給料は日本の1.3倍くらい。リーガルは働かないし、残業させると1.5倍払わなきゃいけない。20代で月4000ドルくらいもらいますが、医療保険が1200ドル、家賃が1500ドルもかかり、見かけの給料は高いが、日本ほど可処分所得がない。こっちで年収1000万円は日本で600万円位の感じです。税金にはメディケア保健代が入ってますが、一切面倒を見てくれません。低所得者の保健分を皆で負担する目的です。寄付の社会ですから。貧富の差が激しくて、中間層がしんどいです。」


ぶっかけうどんと、天ぷら。これで約9ドル。うどんはコシがある。


カフェの居抜き。壁や客席は前の店のまま。


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年3月15日執筆