フードリンクレポート


丼物専門店に転換して生き残った。
〜ニューヨークでフツーの店を出そう!〜(7−4)

2010.3.23
米国ニューヨークの日本料理店は、リーマンショック後の不景気で滞米日本人が減ったため減少傾向。現在はマンハッタンに7〜8百店。内、日本人が経営する店はおよそ半分。しかし、今、日本で言うフツー店にニューヨーカーが足を運び始めた。小規模企業でも出店のチャンスが来た。7回シリーズの第4回目。


「丼屋」マネージャーの佐伯紅二朗氏。

丼物専門店に転換して生き残った

 前出のウェストが経営する丼物専門店「丼屋」がある。「温や」の並び。カラオケ店として10年前に同じ場所でオープン。その後、イタリアンに。そして丼屋に転換。現在の店長は18年前にウェストの社員として渡米。オーソドックスな寿司と天ぷらの店からスタート。現在は「丼屋」を、粗利の歩合制で任されている。同店は週末にはニューヨークで外食で働く日本人のたまり場としても賑わっている。マネージャーの佐伯紅二朗氏に聞いた。


「丼屋」外観


奥行きのある店内。

「昼は丼屋ですが、夜は居酒屋。客層は日本人とローカル半々で、週末は日本人が増えます。去年は儲かりました。月商1000〜1200万円。他店は全然ダメといわれていましたが、悪くなかった。ランチは10ドルちょっと、ディナーも20〜30ドルとリーズナブルだから。最近は日本酒より、焼酎の方が売れています。酒税が高いので、焼酎の値段は日本の倍ぐらいするんですが。」


ランチメニュー。親子丼定食10ドル、カツ丼定食12ドル、北海丼定食14.5ドルなど。


夜の居酒屋メニュー。枝豆4ドル、鶏唐揚げ5.5ドル、刺身盛り合わせ18.5ドル〜など。


雑誌『New Yorker』の25ドル以下で安く食べられる店の特集で取り上げられた。

「最初にニューヨークに来た頃は日本人向けだったので、英語は不要でした。経営側になって、米国人の弁護士を通してライセンスを取るのが大変でした。また、弁護士を通して、年間50万円くらいリカーライセンスを維持するために払っています。」

「スタッフの給料は、ランチはチップ制。朝4時までの深夜営業を始めた時に、夜は定額制で、入りが悪くても給料をもらえるように変えました。」

 チップについて従業員と経営者がもめる場合が増えているという。チップは、基本的にバスボーイ、サーバー、バーテンダー、ソムリエ、メートルドテなど現場で働く方々で分けるもの。それをキッチンにも分けさせることで訴訟になったケースもある。2007年には「NOBU」が管理職であるフロアマネージャーとチップを分けさせられたことで従業員が訴えた。「NOBU」など有名店は特に訴訟対象とされやすい。通常、サーバーはチップが収入の大半。アイリッシュパブでは、セントパトリックデーに1日で1人30万円を稼ぐ。「NOBU」のような高級店では年間1千万円を超える方もいる。

「今は古い日本食レストランのスタイルはだめ。何でもあるはダメです。専門店じゃないと。あと、米国人パートナーが要ります。日本の専門知識とコチラのノウハウを合体させると成功します。100%日本人の専門店は難しい。」


最近は人気のラーメンも提供。ラーメン&ミニカレーセットで13ドル。


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年3月15日執筆