フードリンクレポート


イノベーションで日本一の外食企業に。
〜かつての「牛角」のように、突き抜ける業態で日本一の外食企業を目指す〜(5−3)
西山 知義氏  株式会社レインズインターナショナル 代表取締役社長CEO

2010.5.12
親会社レックス・ホールディングスが2007年4月、MBOにより上場廃止となり、しばらく表舞台に出なかった西山氏。最近、自社業態の告知目的でテレビ出演も始めるなどレインズの顔として存在感を高めようとしている。今年2月にはツイッターも始めた。西山氏は今や「外食事業に集中する」という。目指す、日本一の外食企業とは。西山氏が沈黙の3年を破って語る。5回シリーズの第3回目。


レインズの創業店「七輪」(1996年)。

イノベーションで日本一の外食企業に

「2008年頃から、メディアに出るようになりました。自分が出ることで、伝わることがあれば、自社を代表する広告塔としてもっと前面に出たいと思っています。」と西山氏。

「MBO後、ファンドの方たちと一緒に仕事させていただいて、色んな事を学びました。あのままやっていたら会社がおかしくなっていただろうと思います。この3年で、無駄を排除して、社員達の力を引き出すことや労働環境の整備、コンプライアンスなど、会社が筋肉質になりました。土台が出来たので、成長力である理想を追求することも進めて、飛躍していきたいと思っています。」

「現在では、外食しかやろうと思っていません。日本一の外食企業になりたい。この日本一とは、お客様の笑顔を一番もらえる外食企業です。日本一お客様の笑顔がもらえるということは、一番集客ができて、一番店舗数が多いということです。それをはやく実現させたいと思っています。」

「居酒屋でも焼肉でも日本一になりたい。今の牛角は、焼肉チェーンでは店舗数こそ日本一ですが、レインズが理想と掲げている意味での日本一ではない。他のチェーンがここと競い合っても勝てないと思うレベルが一番だと思っています。例えば、カジュアルウェア業界でいえば、ユニクロさん。今回、牛角では、カルビが創業の味になりましたと言っても、1996年に七輪を創業した当時にお客様に感じていただけたインパクトに比べたら、今の牛角の商品では全然比較にならないし、まだまだダメと思います。」


「七輪」店内。

「今度の9月のメニューでは、イノベーション・プロジェクトというのを立ち上げて、お客様に強烈にインパクトを感じていただける商品を企画しています。今の牛角上カルビ490円も、日本で同じ質のものを出してる店はないと思いますが、まだまだ上を目指せると思っています。」

「付加価値が高いというのは、これまでになかった価値を圧倒的なレベルで提供するということです。僕はそれを創業当時の牛角でやってきました。いつのまにか色んなことをやって、そういうマインドが社内に薄くなってしまった。この3年は土台作りに集中してきたので、そういうことに着手していませんでした。でも、土台ができたので、これからはイノベーションしていかなきゃいけない時期です。」

「昔から安くて品質がいいものを提供したいと思っていましたが、それがお客様に伝わっていない。企業がコンセプトとして思っていることとお客様の認識にずれがある時、企業は上手くいかないのだと思います。今のレインズは、まだ付加価値が高いレベルではない。レインズの理念は感動創造。付加価値が高いものをお客様に提供しよう、というのがポリシー。でもまだまだ伝えきれていません。牛角も創業の味に戻って普通の焼肉屋さんよりも安くて美味しいかもしれないけれど、感動レベルまでは届いていません。ユニクロさんのフリースが4000円でもそれまでの常識からすると非常に安かったのに、そこからさらに、1900円の価格を打ち出した時はすごいインパクトでした。例えて言うなら、今の牛角はまだ4000円のレベルだと思っています。1900円にしてインパクトのあるものがないと感動のレベルとは言えないと思っています。」

「土間土間も日本で初めてのプレミアム居酒屋です。デートでいけるようなおしゃれな居酒屋は当時無かった。それを作ったのはレインズです。その後、土間土間を真似た居酒屋が増えました。今でも土間土間は20代前半の女性には一番の支持を受けていますが、当時のインパクトと比べれば、それほど高い付加価値を提供できていないと思っています。」


日本で初めてのプレミアム居酒屋「土間土間」。

「立地は重要ですが、差別化を図るなら、常に圧倒的な商品を出し続けないといけない。常にお客様に本当に支持されるメニューを開発し続けること。しかも他が出したからじゃなく、先頭に立って。外食では真似が日常茶飯事ですが、真似しようと思って待っているのか、新しいものを作り続けるのかで、お客様へのスタンスが違ってきます。」

「どんな業態も競合よりぶっちぎりで高い所に持っていきたいと思っています。このマインドがあったから、外食進出から7年で1000店を出すことができた。そのマインドは悪くない。でもやってきた中でちゃんと出来ていなかったことが多かった。労働環境の整備ができてなかったり、目標感だけで社員を引っ張ってしまい仕組みを作ってこられなかった。今考えると、戦略自体も間違っていました。」


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年4月6日執筆