フードリンクレポート


マーケティングと理想のミックス。
〜かつての「牛角」のように、突き抜ける業態で日本一の外食企業を目指す〜(5−4)
西山 知義氏  株式会社レインズインターナショナル 代表取締役社長CEO

2010.5.13
親会社レックス・ホールディングスが2007年4月、MBOにより上場廃止となり、しばらく表舞台に出なかった西山氏。最近、自社業態の告知目的でテレビ出演も始めるなどレインズの顔として存在感を高めようとしている。今年2月にはツイッターも始めた。西山氏は今や「外食事業に集中する」という。目指す、日本一の外食企業とは。西山氏が沈黙の3年を破って語る。5回シリーズの第4回目。


「細かいレベルまでやらないと勝てない」と言う西山氏。

マーケティングと理想のミックス

「1年を52週に分け、どういう客層がいらっしゃって、季節毎に何が好まれているのかなどを細かくマーケティングしています。ターゲットに合わせた商品を提供して、PRを展開する。その手前では、トライアルをしてオペレーションの準備も徹底的にやります。同時に店舗のサービスレベルを毎日のアンケートで定量化して改善につなげるなど、土台をしっかりやり続けていく。こういったことをきちんとやるとなると、ものすごく手間がかかります。ただ、それくらい細かいレベルまでやらないと勝てないとも思っています。昔は、それほど深さを求めなくても勝てると思っていましたので、たくさん業態を作りましたが、今は、既存の業態をしっかりやっていくことに集中しています」と西山氏。

「僕がリーダーとなって、イノベーション・プロジェクトを始めました。プランを運用する人間は運用することは得意ですが、イノベーションという発想はない。日ごろ一生懸命 に足元を見ている人間に理想を語れと言っても語れないんですね。だから、僕が理想感を伝えています。これぐらいの商品を出さなきゃ、真の感動創造とは言えない、といったことを示さないといけない。ユニクロさんでも、社員なら既存の枠の中で精一杯考えて、フリースを4000円で売るでしょう。しかし、柳井会長が1900円で売りたいと理想を掲げた。そこからそのためにどうするかを既成概念を取っ払って考えたから、1900円という驚きの価格が実現したんです。こういったことをやらないと、ユニクロさんのような企業になれない。」

「最初の七輪をやる時も、USチョイスのカルビを490円で出そうとすると周りからそんなことできるわけないと言われました。けれども、必ず実現させるんだ、と真剣に思っていたから実現できたんです。実現させるために、職人不在にしたり、アルバイトに任せたり、色んなことを考えました。お客様に本当に喜んでいただけることは何なのかを、どんな時も考えました。その想いは、今も同じで変わりません。そういったことを社員達に気づかせるのは、僕の役目だと思っています。」

「1つの事業でも細やかにしっかりやらないと勝てない。そのために200〜300店舗の規模がないと勝つためのコストは出せません。200店舗以上作れる業態を作って、マーケティングプランを立てて、QSCやKPI(重要業績達成指標)を常にコントロールして、理想感は私が中心になって伝え続ける。レインズでは200店以上展開できる業態でないとやりません。」

「あの時の自分は牛角や色んなことを成功させて、自分で勘違いしていました。こんなことも出来るんじゃないか、あんなことも出来るんじゃないかと、深く出来ていないにもかかわらず色んな事業に手を出しておかしくなってしまったと反省しています。今は自分の何がいけないのかも分かってきました。それを踏まえて、今度は日本一の外食を目指してしっかり展開したいと思っています。」


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年4月6日執筆