フードリンクレポート


ダルマイヤーに見るマーケットとレストランの融合。
〜ドイツは、ビールとソーセージだけじゃない〜(3−3)

2010.5.14
外食企業経営者と共に、毎年4月に海外視察を重ねて今年で4年目。過去は、ニューヨーク、イタリア、フランス。今年はスペイン・ポルトガルの予定であったが、アイスランドの火山噴火により欧州の空港が閉鎖され、最初の到着地ドイツ・ミュンヘンから航路での移動が困難に。幸いにも列車で移動できたドイツ国内の外食事情をレポートする。3回シリーズの第3回目。


「ダルマイヤー」のカラフルな野菜の陳列。

ダルマイヤーに見るマーケットとレストランの融合

 ミュンヘン繁華街のデパート「OBERPOLLINGER」最上階に日本には無いスタイルのフードコートがある。市場のような賑やかな屋台が並び、そこで様々なフードやドリンクをビュッフェスタイルで受取り、最後にレジで会計する。何よりも目を引くのは、華やかなディスプレイ。


デパート「OBERPOLLINGER」。


フードコート入口。


市場のようにメニューが並ぶ。要所要所の野菜のディスプレイが素晴らしい。


きれいな野菜のディスプレイが目を引き、食欲をそそる。


食材として使うニンジンとズッキーニが何気なくディスプレイされている。


ワインのグラス売りはお客が自分でグラスに注ぐ。


ビールとミネラルウォーターの大量陳列。


コカコーラのクラッシックな感じを出したディスプレイ。


気持ちのいいテラス席も選べる。

 ミュンヘンで300年の歴史を誇る高級食品店「ダルマイヤー」でも、ディスプレイの素晴らしい食品売り場の一角に、オードブルとワインが立飲みで楽しめるスペースが設けられている。生牡蠣も用意され、ギャルソンがオイスターグローブをはめてその場で牡蠣殻を開けてくれる。もちろん、ワインの種類も充実し、ボトル売りもある。但し、売り場の食品を持ちこむことは不可。ギャルソンにチップが入らなくなってしまうのも一因。


「ダルマイヤー」外観。


小さなキッチンもある。カウンターには氷を敷き詰め、生牡蠣や魚介類がディスプレイされている。


買い物客がくつろぐ。ハイスツールも用意されている。

 さらに生鮮食品だけではない。ワイン売り場とレストランの融合もよく見た。パリからベルリンに出店しているデパート「ギャラリー・ラファイエット」では、地下のワイン売り場の一角に本格的なワインバーが併設されている。同じく、シャンパン「モエ・シャンドン」のワインバーもあり、ドンぺリもグラスで味わえる。


デパ地下とは思えない、「ギャラリー・ラファイエット」のワインバー。


シャンパン「モエ・シャンドン」のワインバー。

 街場でも、ワインショップを改装したようなレストランが繁盛していた。こんな所にもテーブルを置いていいの、というような所まで、人一人がぎりぎり通れるくらいの間隔でテーブルが配置され、そのタイトさが賑わいを演出している。同様のワインショップのような内装のレストランは日本でも最近見られる。


高い天井まで積み上げられたワインに囲まれて食事する。最近のドイツワインはドライで甘くない。


ドイツ人の大好物の白アスパラが名物。


屋台でも大量に売られている白アスパラ。

 マーケットとレストランの融合は、日本では東京・代官山のイタリア食材店「イータリー」がそれ。日本のデパ地下は、惣菜売り場が中心でイートイン程度。落ち着いて食事をさせることなど考えていない。しかし、よく見ると、流行りのトロ箱系居酒屋もマーケット(魚屋)とレストラン(居酒屋)との融合の日本版と言えるのでは。APカンパニーの「塚田農場」等もしかり。欧州でも、外食はそのルーツたる食材にさかのぼっているように感じられた。

 最後に、ドイツの若者は、伝統的なビールからワインや低アルコール飲料に好みがシフトしているという。そんな流れを受けて、また世界市場を狙って、ドイツワインの辛口化が進んでいる。かつてのドイツワインは甘口を特徴として他国ワインと差別化を図ってきたが、辛口にシフトし販売を伸ばしている。もう一度、ドイツワインを見直してみてはいかがだろう。


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年5月6日執筆