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ガスがシャットダウンされた。
〜ニューヨークから1年で撤退。通用しない日本の常識とは?〜(7−2)

2010.5.18
ニューヨークでの出店を夢見る日本人は多いが、成功する方は少数。今回取材したS氏(匿名)は、和食カフェをマンハッタンで挑戦。半年遅れで開店し、その後1年で資金が尽きて無念にも撤退した。ニューヨークを目指す方々のために、勇気を持ってS氏は実体験を語ってくれた。7回シリーズの第2回目。


ニューヨークの別名「ビッグアップル」。NYはりんごの名産地で「州の果実」として認定されている。

ガスがシャットダウンされた

 3月に物件を契約して、6/12オープン予定。人も採用していた。

「前々日の6/10にガス会社が調査に来ました。その時点では工事は終わってなくて、以前の店のままでガスの配管が非合法でした。ガスは供給できない、シャットダウンすると言われてしまいました。翌日には保健所の検査が来ました。お湯が出ないので許可されるはずがありません。」

「必ずしも合法的に改装工事をやった訳ではありません。ビルディング・デパートメント(役所)に図面を起こして工事をする申請をして、許可をもらってから工事をしなきゃいけない。でも、許可を取るのに時間がかかり、図面を書き直すと金がかかり、予算内でできなくなる。申請しないで、化粧直しだけでやろうよ、と投資家と工事業者で合意して進めていました。ガス会社に発見されなければそのままオープン出来た。」

「ガス会社は今まで使ってなかった店舗から新しいアカウントを申請されたからチェックに来たんです。通常は工事が終わってから申請するのに、投資家の1人が知らずにガス会社に早く連絡したのが理由と後で分かりました。日本では施工業者が全部やってくれますよね、でもニューヨークでは施工業者からアナウンスが無かった。工事の中で合法的な配管に変えるはずだったのに。」

「申請し直さざるを得なくなりました。その為にはエンジニアを雇って、既存の設備図面と新しく変える図面に両方を作って役所の許可をもらって、ガス会社に申請する。すぐ始めました。ところがガス工事の連絡が全くない。実は、施工業者にガス会社から配管の指示レターが届いていたが、それが施工業者のところで握りつぶされ止まっていた。ガス会社から、やる気がないならガスは一切使わせないぞと通知が来ました。私は全く知らなかった。」

「あわてて連絡すると、工事はガス会社の指定業者を使いなさいと言われました。そこで、初めて現地人に間に立ってもらい交渉を任せたら、現地人から業者は賄賂を要求しているようだと教えてくれ、1千ドル出しました。すると、次の日にガスが使えるようになったんです。最初に来た時に渡しておけば、予定通りにオープンできた。もっと早く、気付けばよかった。」


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年4月9日取材