フードリンクレポート


ランチは“to go”、自席で食べる。
〜ニューヨークから1年で撤退。通用しない日本の常識とは?〜(7−5)

2010.5.21
ニューヨークでの出店を夢見る日本人は多いが、成功する方は少数。今回取材したS氏(匿名)は、和食カフェをマンハッタンで挑戦。半年遅れで開店し、その後1年で資金が尽きて無念にも撤退した。ニューヨークを目指す方々のために、勇気を持ってS氏は実体験を語ってくれた。7回シリーズの第5回目。


観光客で連日賑わうブロードウェイ。

ランチは“to go”、自席で食べる

「店の規模が小さくて家賃が安ければ上手くいったのでは。客席が30席も設けましたが、ちょっとしたカウンターだけでよかった。最初はテーブル、椅子があると座って食べるのかなと思いました。ところが、次から次に持って帰る(to go)。日本のサラリーマンはランチを食べる時は座るので、こんなにテイクアウトしていくとは思わなかった。」

「彼らは事務所で食べる。自分の席でランチが当たり前。会社にマイクロウェイブがあるのも当たり前。買ってきたものを食べるスペースがあるのも当たり前。ランチを自席で食べる。その代わり会社がランチ代を支払う。休みを取らないで従業員に仕事をさせるためだそうです。ランチしながら電話を取らせる。そんな会社が沢山あって、だから皆持って帰る。会社に掛け売りします。ウェブ上で従業員が注文できデリバリーしてくれ、支払いは会社の口座で決済するビジネスモデルを作った会社が大ヒットしています。」

「デリバリーは面白いビジネス。普通のレストランは全てデリバリーをやります。パーティーだけでなく、自分のディナー用にも。その売上は馬鹿にならない。デリバリーの人間はチップも貰える。デリバリー要員を雇ってチップだけで配達している店もあるし、単価の安い場合はデリバリーのチップに加え店が時給(ハウスペイ)を出している店もあります。」

「私の店ではデリバリーは1日に7〜8件しかありませんでした。店の近くにイタリア料理店に聞くと、デリバリーの注文が来だすまでには時間がかるが、やり続けなければダメとアドバイスをもらいました。デリバリーのビラ撒きはやりましたが、1年では難しかった。」


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年4月9日取材