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フードリンクレポート


プロジェクトスタートから5ヶ月、話題沸騰。
週末の街角で目にする「マルシェ・ジャポン」とは。

2010.2.19
2009年9月17日、アーク・カラヤン広場(東京・溜池)で「マルシェ・ジャポン」のグランドオープンセレモニーが行われた。押切もえさん、落合務シェフなどを迎えた華やかなイベント。近頃よく聞く「マルシェ・ジャポン・プロジェクト」とはいったいどういったものなのか。4回シリーズの第1回。


生産者と消費者が触れ合う。

「マルシェ・ジャポン」って?

「マルシェ・ジャポン・プロジェクト」は、農林水産省の補助事業として、大都市の真ん中で生産者と消費者をつなげるコミュニティの場として開催されるマルシェ(市場)だ。場所は公園などを活用し、全てがオープンスペースで行われる。北海道の札幌から福岡まで全国9都市20以上の会場で開催されている。

 マルシェの運営者は、「TBSテレビ(東京)」「森ビル株式会社(東京)」など全12社で、生産者を中心とした出店者の募集や会場の設営などを行い通年に渡ってマルシェ開催に携わる。

 生産者は自身の農産物を開催場所へ運び、自身で値段を決め、大都市の真ん中で直接消費者に商品を手渡す。普段はスーパーなどで置かれたそれを手にしている消費者もface to faceのコミュニケーションを通し、商品の特徴・生産者の想いや人柄に触れて商品を購入することになる。「対面販売」はこのマルシェのルールのひとつでもあるのだ。では普段生産者に触れることのない大都市の消費者にとって「マルシェ・ジャポン」開催はどんな意味と影響をもたらすものなのか。


大都市で開かれる「マルシェ・ジャポン」。東京・溜池のアーク・カラヤン広場。


お台場ヴィーナスフォートで開かれた「マルシェ・ジャポン」。


旗振り役は小山薫堂(こやまくんどう)氏

 幅広いフィールドで活躍される放送作家の小山薫堂氏は、今回「マルシェ・ジャポン」の旗振り役。

 小山氏はこの開催意義について、生産者に直接会い実際の農産物に触れることは本当の価値を見つめ直す機会になると語っている。「高くてもいいから買いたい」とか「いい物を買いたい」と思えるだろうし、更に一歩踏み込んだところで「すごくいい仕事をしている人に、その生き方に拍手(対価)を送る」という温かい気持ちの交流も生まれてくるだろうと。


どんな商品が買えるの?

 全国のマルシェの様子は「速報!マルシェ・ジャポン全国レポート」として全国各地のレポーターがリアルタイムで情報をwebにアップしている。新鮮な季節の野菜・果物はもちろん、大量生産されていない、目新しい食材などに出会えるのもマルシェならでは。生産者にとっても多くを生産できない希少な商品の販路として有効だ。珍しい食材に出会ったらその上手な調理方法など興味の赴くまま生産者に色々聞くとよい。

 生鮮品以外にも調味料や自家製のパンなどの加工品も種類が幅広い。試食も色々とできて楽しい。素材をそのまま絞った100パーセントの野菜ジュースやフルーツジュースなどは子供たちにも分かりやすくて大人気。一方、名古屋のマルシェでは日本海からの魚介類や伊勢志摩産の干物も並ぶという。色鮮やかな生花が登場するマルシェもあり、それぞれの地域にそれぞれの特徴がでてきているようだ。

 土日の開催が多いマルシェでは家族連れも多い。マルシェ内ではライブや大道芸人のパフォーマンスが見られるところもあり、来場する多くの人を飽きさせない工夫が感じられる。通りすがりの人々もつい足をとめてしまうような楽しいイベント。マルシェは週末の街角を楽しく盛り上げている。


新鮮な季節の野菜・果物はもちろん、大量生産されていない、目新しい食材などに出会えるのもマルシェならでは。


生産者はどこから集まるの?

 参加する生産者は、近郊・遠方から広く集まる。「自分で価格設定したい」「消費者の喜ぶ顔が直接みたい」と熱い想いを持って、自身の農作物を運んでくる。イベント前夜は早朝の出発に備え準備に大忙しのようだ。都心の消費者が分かりやすいように、また目に触れ易いようにとそれぞれお洒落なディスプレイや分かりやすさに工夫を凝らす。この催しを通して生産者は、売上げアップはもちろんのこと、生産意欲も喚起される。消費者の声を直接聞ける重要さと、それに加えて他の生産者の工夫を凝らしたPR戦術を目の当たりにすることもよい刺激となる。

 逆に消費者は、農業に携わる方だからこそ語れる農業の実際の経験談や、地元ならではの食にまつわる知恵などを是非直接聞いてほしい。積極的な会話は、多くの発見と学びをもたらしてくれるはずだ。


どんな意味をもち、今後の期待は?

 パリやニューヨークなどでは、生産者による朝市(マルシェ)はよく見かけられる光景。日本では朝市といえば旅先、つまり産地に近いところの駅前や「道の駅」で触れるケースが多いのが実状だ。日本の大都市でも交流の場としてマルシェが定着し、産地(生産者)と消費地(消費者)がより身近なものになっていくことが期待される。

 また、都心に住む近隣住民同士の関わりを育む絶好の場ともなる。人と人の触れ合い空間が増えることは、今の時代とても貴重であり且つ求められてもいる。

 まだ行っていない人も是非「マルシェ・ジャポン」の目印となる旗を見たら立ち寄ってみて欲しい。


【取材・執筆】 国井 直子(くにい なおこ) 2010年2月10日執筆


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