フードリンクレポート


「レッドブル・エナジードリンク」でエナジーカクテル、
チェーン居酒屋には、客単価アップ商材。

2010.3.5
「レッドブル」は、エナジードリンクとして世界1位のブランド。日本には世界より遅れて2005年末に上陸。当初は、クラブやバーなどナイト市場で飲まれてきたが、昨年から「和民」などチェーン居酒屋での扱いが始まっている。


終電間際に安く提供し、朝まで飲もうという提案、“パワーアワー”。

定番カクテル「レッドブル・ウォッカ」

「レッドブル」のルーツは、アジア各地で当時から人気があったドリンク剤(強壮飲料ですが、、)にさかのぼる。そのころすでに日本ではドリンク剤の巨大市場があったが、アジアではタイからはじまった小さなドリンク剤が各地で販売されていた。そして、1984年にオーストリア人のディートリッヒ・マテシッツ氏(レッドブル創業者)がライセンスを取得し、さらにブランディングを含む世界に展開できる製品を開発し、現在の商品が完成した。清涼飲料市場の中に、エナジードリンクという新しいジャンルを作り出した。オーストリアの工場から世界中に輸出され、現在、同ジャンルでシェア1位。

 日本に上陸したのは、主要国で最後の2005年。その開発ヒントとなったリポビタンDを始め、栄養ドリンク市場が既に成熟した市場ゆえ、万全を期した慎重な導入となった。

 まずは、スタートが外食市場。どの国でも導入は外食。エネルギーを欲する人々のいるナイト市場、バーやクラブから始まった。世界でも定番となっている、ウォッカで割ったレッドブル・ウォッカが浸透していった。現在は、全国にある約500店のクラブの内、9割以上で扱われている。

 F1・MotoGPなどのモータースポーツやサーフィン・スノーボードなどエクストリーム・スポーツや、ブレイクダンスなどに積極的にサポートし、レッドブルが翼を授け、高いパフォーマンスを発揮できると、若者の心を掴んでいる。勉強する学生向けにも、試験期間中に大学構内にエナジーラウンジと称して、レッドブルを無償で飲める場を提供するなど様々なマーケティング活動の展開もしている。


試験期間中に大学構内に設けられる「エナジーラウンジ」。

 外食市場だけでなく、2006年からコンビニに入り始め、昨年はスーパーマーケットでも販売がスタート。現在は販売量の大半が家庭市場で消費されている。


チェーン居酒屋で客単価アップ商材

 昨年から、バーやクラブといったナイト市場だけでなく、居酒屋にも入り始めた。そして、ワタミフードサービスの「和民」「坐・和民」全店で扱いがスタート。そして、他の居酒屋チェーンでも試験導入が始まった。


「和民」のカクテルメニュー。エナジーカクテル599円。他のカクテルは概ね499円で100円高い。

「居酒屋ではカシス割りがよく出ます。ワタミさんは、オリジナルカクテルを作っていただきました。カクテルだけではなく、缶も必ず添えて提供しています。普通のカクテルより高いですが、売れています。特に、渋谷や新宿の店はよく出ます」とレッドブル・ジャパンの担当者。

 カクテルで使い残った缶も、必ずカクテルに添えてお客に提供するように依頼している。レッドブル1缶を飲みきらないと、期待される機能は得られないという。これはレッドブルでは、パーフェクトサーブという。ちなみに外食向けには250ml缶だが、家庭向けには185ml缶。元気の素となるカフェインは、どちらも1缶飲めば同量が摂取できるよう設計されている。


クラブでの「パーフェクトサーブ」。

 海外で“パワーアワー”と称して、店から帰ろうとするお客を引きとめるため、終電間際に安く提供し、朝まで飲もうという提案を行っている。今年はこれを日本でも提案する計画だ。また、バカルディー・ラムと提携し、流行りのカクテル“モヒート”をテーマに、「エナジーモヒート」を夏場に提案する。

 レッドブルは、不況の影響を受けず、年々販売数量が上がっているという。デフレ価格が進行するなかで、若者が高くても飲みたいと思ってくれる付加価値の高い商材だ。


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2010年2月16日執筆