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夏の定番メニューになる日も近い!?
「酢飯」のさらなる可能性を発見。

2011.7.11
「酢」を使ったメニューといってまず思い浮かぶのは、寿司や酢の物といった和食だ。そのさっぱりとした酸味も、健康的な効果効能も、特に女性の間で注目を集め、ヘルシーな調味料として支持を得ている。そんな日本食文化には欠かせない調味料である「酢」が、最近ではジャンルを超えて、さまざまな料理で使われるようになっているという。特に今夏は猛暑対策のひとつとして、各店が工夫を凝らした「酢飯メニュー」を提案していると聞きつけた。使い勝手のいい万能調味料、「酢」の知られざる可能性を探る。レポートは桜生マリコ。


「石焼ビビンバ」に使われているのが、なんと「酢飯」!(東京・青山「ソウル・オブ・ソウル」)


「情熱屋」の落ち着いた雰囲気の内装。


看板には、和洋折衷の人気メニューがずらり。

・りんご酢で作られた「酢飯」

 最近「酢飯」を使った料理が、和食以外にも増えてきている。門前仲町にあるダイニング「情熱屋(江東区門前仲町)」(運営:有限会社一の屋)は、和食をベースにスペイン料理やメキシコ料理のテイストを加えたメニューを提案している店だ。オフィス街と住宅街に囲まれた立地が功を奏して、平日は近隣のサラリーマン、週末は子供連れの主婦たちが集まり、休む暇なく込み合っているという盛況ぶり。2階には個室や座敷の部屋があり、小さな子供連れの主婦層、もしくは宴会用に使いたい幹事には嬉しい間取り。客側の小さな要望にも細かく応えていく、そういった心意気が伺える。


2階にある座敷スペースは主婦層に人気。


大人数で使える個室も完備されている。

 客想いの店だからこそ、誕生したのが「メキシカン!ライ酢サラダ(680円)」と店長の米良誠氏は語る。「夏のメニューとして、さっぱりと食べられるライスサラダを作りたいと思っていました。それも西洋風ではなく、“情熱屋”らしいメキシカン風に」。そこで思いついたのが、フィンガーフード形式で食べるサラダだった。食べる時、どうしてもご飯がパラパラとこぼれてしまうのが、ライスサラダの難点。そのためアンディーブを皿代わりにし、中にご飯を入れた。まさに重視したのは食べやすい、且つ取り分けしやすいということ。客目線のメニュー考案が、インパクトのあるメニュー作りにつながったという。


見た目も可愛い、「メキシカン!ライ酢サラダ(680円)」

 もちろん、味つけにもこだわった。「さっぱりとした夏のサラダに仕立てるために、酢飯にピリッと辛い赤唐辛子のパウダーを合わせました」と話すのは、料理長の岡田賢氏。「要は酢飯に“りんご酢”を使ったことでした。いわゆる鮨酢だと味わいが強すぎる。そこでフルーツの軽やかな酸味が香るりんご酢を採用」。結果、辛味パウダーと妙にマッチ。理想のメキシカン風サラダが誕生した。

 作り方は、まずりんご酢に塩と砂糖を加え、酢飯を作る。そこに細かく切った玉葱、セロリ、エシャロット、パプリカ、キュウリを多めに加え、塩こしょう、パプリカと赤唐辛子のパウダーで味つけ。さらに、次は塩と砂糖を混ぜない“2度目のりんご酢”を数滴垂らす。そして完成。りんご酢のフルーティな酸味が加わり、辛味は食べた後にじんわり、ほんのり感じる程度。幾らでも入りそうなほど、さっぱりとしたピリ辛サラダに仕上がった。


米良氏(左)が客の声を汲み取り、料理長の岡田氏(右)が料理に反映する。

 メニューとして誕生して1ヶ月が絶つが、平均として1日3〜4食は注文が入る。見た目も可愛らしいため、当初は女性ウケを狙ったが、実際は男性にも好まれ、年配客も面白がってオーダーしてくれるという。酢飯は少なめ、野菜は多め、というボリュームバランスに酢の食欲増進作用で、サラダでお腹いっぱいになることもなく、スターターとして成功しているようだ。

■「旬と炙りと大豆料理 情熱屋」
東京都江東区門前仲町2-3-13
電話:03-5639-1139
http://www.ichinoya.net/




地下1階とは思えない、天井の高い空間が魅力。

・ヘルシー料理で夏バテ防止

同じくサラダ感覚で酢飯を提供しているのが、新橋演舞場別館にある「HARUTA(中央区築地)」(運営:株式会社Delithy)。店内は地下とは思えない天井の高さがあり、落ち着いた雰囲気。野菜が主役の同店は、健康に気を遣う女性客が7〜8割を占める。


カウンターに並べられた、色とりどりの野菜。

 普段目にすることのない珍しい野菜は、南会津や岡山、岐阜、愛知、茨城、千葉など、全国の契約農家から毎週、有機野菜を送ってもらっている。徹底的に“旬”にこだわるため、野菜の種類は農家に完全に任せる。そのため日替わりで野菜のメニューは変わるという。栄養を損なわずに、旬の野菜を美味しく食べるためには、調理はいたってシンプル。一番の人気は、せいろ蒸しや蒸し野菜など。蒸すことで栄養分をほとんど壊さずに、また野菜の甘味が際立つという。


株式会社Delithy代表取締役の藤田氏

 健康意識の高い女性客が集まる店だからこそ、「酢」を取り入れることは自然な流れだったのかもしれない。株式会社Delithyの代表取締役である藤田悟氏が辿り着いたのが、「彩り蒸し野菜のガドガド風ライ酢サラダ(1,200円)」だった。ガドガドとは、インドネシアの料理で温野菜に甘辛いビーナッツソースをかけたもの。そこに、常温のご飯とサラダを混ぜ合わせるという、ライスサラダを組み合わせたのだ。


ボリューム満点の蒸し野菜も、酢飯といただくとさっぱり。

 作り方は、まず蒸し上がった野菜に酢をかける。酢が少ないとまとまりにくりため、蒸した野菜にも酢が行き渡るくらい、米がシャバシャバになる程度、酢を絡める。そこに周りをカリッと焼いたフライドエッグを乗せ、ピーナッツソースをかける。あえてまったく味つけをしていない蒸し野菜の甘味と柔らかい食感、さらに卵の甘味が酢飯と絶妙にマッチ。新鮮な野菜と酢飯が上手くメランジェされ、美味しい。力強くも胃に優しいひと皿だ。またライスサラダとはいえ、野菜のボリュームは多く、食べ応え充分。そしてローカロリーながら、栄養分はきちんと摂取できる。食欲が落ち、夏バテが懸念されるこれからの季節こそ、バランスの採れたメニューとして確実に人気を呼びそうだ。

■「旬彩 Tsukiji HARUTA」
東京都中央区築地4-2-11新橋演舞場別館地下1階
電話:03-6807-0051




階段を下りたところにある「Asian Healthy Dining Glamorous」

・“甘い”、“辛い”、“酸っぱい”をすべて満たす

表参道と外苑前のちょうど中間、青山通りから路地を入ったすぐのところにある「Asian Healthy Dining Glamorous」(運営:株式会社Delithy)は、国内の契約農家から仕入れる新鮮なハーブや野菜を多く使ったタイ料理が自慢。場所柄、アパレルやマスコミに勤める、流行に敏感な人たちが連日のように訪れる人気店だ。吹き抜けの階段を下りたところにある地下1階の店舗は、オープンエアーのカウンターやテラス席があり、開放的な雰囲気。東南アジアのリゾート気分が味わえる。同店では、この夏、酢飯を使ったタイ風のチャーハンを提供していて好評だという。


吹き抜けに創られたオープンエアーのカウンター。


テラス席は開放的。


エスニックな雰囲気漂う店内。

「カオ・パット・ナムソム・バイ・ホラパー(1,100円)」と名付けられたそのチャーハンは、ジャスミンライスをベースに、具には有機野菜を中心に、玉ネギ、万能ネギ、トマトとエビ、卵を使い、酢とタイの香辛料を使ってピリ辛仕上げる。アクセントとなっているのが、ホラパーと呼ばれるタイバジル。酢のサッパリとした風味に爽やかなタイバジル独特の風味が絶妙にマッチしている。ピリっと辛いタイの唐辛子も全体を引き締め、暑い夏にも食が進むこと間違いなしの一品だ。


「カオ・パット・ナムソム・バイ・ホラパー」(1100円)


差込みの特別メニュー。

 メニュー開発にも力を入れている同店で夏の特別メニューとして開発されたこのチャーハン。開発した株式会社Delithyの佐藤氏によれば、酢飯の持つ酸味と甘味はタイ料理に欠かせない要素だという。「タイ料理に重要な味の要素は、“甘い”、“辛い”、“酸っぱい”の3つです。そのうちの2つを酢飯は持っています。それにもう一つの“辛い”要素をタイの粉唐辛子、プリックポンで揃えたのが今回のチャーハンです。」タイ料理のロジックにもかなったメニューなのである。もともとタイ料理のチャーハンは砂糖を使って甘く仕上げるものが多いそうだが、新たに酸味と辛味が加わり、よりタイらしい味に仕上がったのはないだろうか。

 「タイ料理はバランスの料理と言われます。少しの調味料、1滴の加減で味が全く変わってしまいます。」と語る佐藤氏。酢の量や火加減、加えるタイミングなどは試行錯誤があったようだが、今では店の人気メニュー。一度食べるとハマってしまう人も多く、気に入って週2回食べに来る人までいるとか。


タイ料理にも詳しい株式会社Delithy取締役佐藤氏。

「例年夏にタイ料理が食べたくなる人は増えるのですが、暑い季節にさっぱりとするお酢の料理を食べたいなぁと思う方も増えるようです。そんな方にお勧めのメニューですね。」健康志向の女性客が多い同店では、ますます注目を集めそうなメニューである。「例年夏にタイ料理が食べたくなる人は増えるのですが、この暑く、体が酸性になりがちな季節に酢を摂りたいなぁと思う方も増えるようです。そんな方にお勧めのメニューですね。」健康志向の女性客が多い同店では、ますます注目を集めそうなメニューである。

■「Asian Healthy Dining Glamorous」
東京都港区南青山 3-8-2 青山OGビル B1
電話:03-6459-2578
http://asian-healthyglamorous.jimdo.com/





ランチタイムは圧倒的に女性客が多い。

・温めても美味しい

  アジア料理だけでなく、とうとうフランス料理にも「酢飯」を組み合わせているのが、池袋にある「サンシャイン クルーズ・クルーズ(豊島区東池袋)」(運営:株式会社銀座クルーズ)だ。「池袋サンシャイン60」の58階、地上210mの超高層ビルにあり、大きな窓からは東京の絶景を一望できる。店内は船内をイメージして作られ、開放感あふれるメインダイニングのほか、大小12の個室を完備。結婚式の2次会の場所としてもよく使われる場所だ。特にランチはバイキング形式になっているため、主婦層に圧倒的な人気を誇る。


ランチタイムは、バイキング形式。


パーティやイベントで使われることも多いスペース。

 酢飯をフランス料理に取り入れ、「酢飯を冷と温の組み合わせで〜酢飯のタタン仕立てと酢飯のポットスティッカー 自社農園のオリーブソース〜(1,280円)」を考案したのは、野菜ソムリエとしても活躍する支配人兼料理長、諸星純一氏。「酢飯は温めても美味しいと気づいたのがきっかけで、まず酢飯をポットスティッカー仕立てに揚げてみたのです」。ハートブリックという春巻きのような薄い生地に酢飯、モッツァレラチーズ、生ハムを挟んで、揚げる。するとモチっとした酢飯の食感や酸味はありながらも、脂っぽくなく、さっぱりとした味わいに。サクサクとした食感もいい。


高級食材を使った、見た目もゴージャスなひと皿。


大きなキッチンで指揮をとる、料理長諸星氏。

 「ただ、これだけではフランス料理のメニューとしては成り立たないと考え、“温”と“冷”が一つの皿で楽しめる料理を作りたいと思いました」。発想の源となったのは、フランス菓子で有名なりんごのタルト、「タルトタタン」だった。作り方は、セルクル(円筒形の底のない型)に酢飯を入れ、その上に雲丹やいくら、鮪、蟹など贅沢な魚介類を仕入れ状況に応じてトッピング。さらに香川県小豆島にある自社農園で作られたオリーブオイルのペーストを加える。すると、酢飯と生姜の酸味が際立ち、より深い味わいに。また、ビーツやマイクロトマト、赤水菜など珍しい野菜もオン。そして高級食材をふんだんに使った、絶品料理が完成。「“こんな野菜、見たことない”、“酢飯はこういう料理にも合うのね”と、お客様に新しい発見を提案したい」と諸星氏は語る。ひと皿に込めた料理長の想いは深く、発見の多いメニューとして今後も注目を集めるに違いない。

■「サンシャイン クルーズ・クルーズ」
東京都豊島区東池袋3-1サンシャイン60 58階
電話:03-3981-0962
http://www.ginza-cruise.co.jp/ikebukuro/index.html




オフィス街の中心に位置する「タバーン」。

・予想外に男性客ウケがいい

オフィス街の一等地にあるカフェ&ダイニングバー「タバーン(中央区日本橋室町)」(運営:株式会社ホテルオークラエンタープライズ)でも、今夏から酢飯を合わせた「グリーンカレー」を提案しているという。日本橋再開発の一環として、「コレド室町」と時を同じくして建てられたビル「YUITO」の地下1階にあるのが、「タバーン」。地下とはいえ、吹き抜けになったホールに面しているため、とても開放的で心地のよい店構えだ。朝7時から夜23時までノンストップ営業、さらにジョッキビールが480円からオーダーできる格安なメニューが揃い、近隣のサラリーマンたちには有り難い存在の一軒だ。


同ビルの他店舗と比較しても、圧倒的に安い価格設定が魅力。

 毎週のように通いつめる常連客に支えられている店だからこそ、客側のリクエストには常に耳を傾けていると話すのが、料理長である稲澤友紀氏。「ダイニングバーなので、夜は特にご飯メニューは出していません。常連のお客様に頼まれて、時にパスタ類を出す程度でした。今回も、“夏だからピリッと辛いものが欲しい”というお客様からのリクエストがきっかけでした」。そこで以前、本場タイ人から直々に教わったというグリーンカレーを夏の限定メニューとして始めることにしたのだと話す。


「たけのこと鶏肉の酢パイシーグリーンカレー(1,200円)」。

 ただ、本場仕込みのグリーンカレーは、日本人には辛すぎるのがネックだっと稲澤氏は続ける。「本来はタイ産の激辛唐辛子を入れるのがグリーンカレーには欠かせませんが、日本人は辛すぎて食べられない。そのため、辛さは1/3程度に抑えるように国産の唐辛子を使い、さらに中和させるためにトマトを混ぜ合わせた酢飯を合わせることにしました」。すると、グリーンカレーの辛さはそのままに、トマトと酢飯の甘みと酸味がうまく合わさり、口当たりがまろやかで食べやすくなった。「元来、タイ料理にはレモンやライムなど果実の酸味を使った料理は多い。暑い国だから、“酸っぱ辛い”ものが好まれるのです。グリーンカレーにもパームシュガーが入るため、辛い中にも甘さがある。トマトや酢飯は、酸味の中に甘さがある。この甘味がうまく混ざり合い、お互いの辛味や酸味の味わいを引き立てる、抜群の相性のメニューが完成しました」。また、ツンとした尖った酸味が特徴の白ワインビネガーより、マイルドな甘みのある米酢との相性がよかったという。


赤をアクセントにした店内インテリア。


気軽に立ち寄れるようカジュアルな雰囲気を演出。

 「グリーンカレー」も「酢飯」も女性が好むもの。当初は女性ウケを狙ったメニューとして考えついたが、いざ蓋を開けてみると男性客からのオーダーが7〜8割。若い世代を中心に、20〜50代まで客層も幅広い。小腹を空かせたサラリーマンが夕方からオーダーする場合もあれば、飲んだ後のシメにオーダーすることもあるという。限定メニューが始まって半月だが、1日平均5〜6食オーダーが入っている。「基本的に1日10食分を常備しているのですが、思いのほかオーダーが相次ぎ、売り切れることもたびたび」。そのうち、ランチメニューのひとつとしても検討したいと稲澤氏は語る。猛暑が続いているからなのか、健康志向の男性が増えたからなのか、予想外に男性サラリーマンからの人気を得ているのは事実だ。

■「カフェ&カジュアルダイニングパー タバーン」
東京都中央区日本橋室町2-4-3日本橋室町野村ビル地下1階
電話:03-3231-2881
http://www.okura-ep.co.jp/restaurant/list.html



バリの高級リゾート地のようなインテリアが魅力。

・“お好み”で酢飯を作る楽しさ

組み合わせもさることながら、酢飯の斬新な食べ方を提案しているのは、青山にある「ザ・ソウル・オブ・ソウル(渋谷区渋谷)」(運営:THE SOUL OF SEOUL)。本格的な韓国料理がいただける焼肉店だ。だが従来の焼肉店とは違い、バリの高級リゾート地を彷彿とさせるインテリアのため、カフェのような雰囲気で女性客同士でも気軽に楽しめるのが特徴だ。


大葉がたっぷりとのった「酢飯ビビンバ(1,480円)」

 女性が気軽にオーダーできるメニューを増やそうと思い、「酢飯ビビンバ(1,480円)」を考えついたと話すのは、プレイングマネージャーの長谷川博一氏。人気メニューのひとつ「SOUL風石焼ユッケビビンバ(1,400円)」をアレンジし、“酢をご飯にかける行為”を楽しみながら、食べられないかと考えた。もともと“ナムルの四種盛り合わせ(1,000円)”に穀物酢を使っていた。そのため、ビビンバの具材と酢の相性には自信があった。だが、実際に酢飯を作った上で具材を混ぜ合わせると、どこかしっくりとこない。そこで思いついたのが、「すし酢」を小瓶に入れ、熱々の石焼ビビンバが出来上がったところで、鍋肌に軽く“ひとまわし分”を垂らす。ビビンバを混ぜ合わせる時に「すし酢」も一緒に混ぜ合わせることだった。


小瓶に入っているのは、すし酢。


まずは鍋肌に沿って、すし酢をひと回り垂らす。


ジュワっとすし酢が音を立てているうちに、ざっくり全体を混ぜ合わす。


キムチ、大葉、梅が酢飯と抜群に合い、美味。

 すると、香ばしい焼き色がご飯につくとの同時に、柔らかい酢の香りが湯気に乗って漂い、食欲をそそる。「すし酢を鍋肌に垂らして温めることで、すし酢の尖った酸味が弱まり、逆に甘味が際立ちました」。さらに通常のビビンバには入っていない、大葉と梅、キムチをたっぷりとトッピング。石焼ビビンバにさっぱりとした和風テイストが加わり、何とも美味しい。さっぱりとした味やサクっとした食感が後を引き、やみつきになる一品だ。メニューとして登場して以降、女性客を中心に人気を集め、既に3週間のうちに二度もオーダーする客もいるほどだ。


“肉の塊”という印象の斬新な盛りつけ。

 同店では他にも「酢飯」を使ったメニューがある。それが、「肉山野酢之介(にくやまやずのすけ・1,380円)」という一風変わった名称の一品だ。もともと生肉のにぎり鮨がコースメニューにあり、よりインパクトやアジアンテイストを演出したかった。
 酢飯には胡麻を混ぜ合わせ、和牛のタタキに包み込む。見た目には“肉のおにぎり”のようだ。食べ方は、和牛のタタキを1枚とり、酢飯、トンブリ、マンゴー、ミョウガ、オリエンタルソース(ガリをピューレ状にしたもの)をすべて合わせて食べる。一見、多種多様な味つけに思えるが、口の中で不思議と調和する。マンゴーの甘味と清涼感、オリエンタルソースと酢飯のまろやかな酸味、和牛とミョウガの味わい、胡麻の香ばしさと食感…ひとつひとつが独特で個性の強い食材にもかかわらず、すべてが合わさると絶妙なハーモニーを奏でる。食事の美味しさだけでなく、メニューのネーミングを始め、食べ方にいたるまで、食べることのすべてを楽しんで欲しいいう長谷川氏の熱い気持ちが込められている。

■「THE SOUL OF SEOUL Oriental Grill Restaurant」
東京都渋谷区渋谷1-2-5アライブ美竹ビル地下1階
電話:03-5778-3896
http://thesoulofseoul.info/index.html


 これまでは「酢飯」=「寿司」という強い固定観念があったが、今回の取材を通して感じたのは、和食に限らず酢が調和できる食材や料理の多いこと、そして、どの店舗も客側の驚きや発見を提供し、常に食に対する考えを刺激するものを提案したいという強い気持ちだった。美味しいことはもちろんのこと、食べた人の心に残り、その人の料理観にも広がりを与えることができる。健康志向が高まるなか、和食だけではなく「酢飯」が今後さらに注目を集め、いずれその人気は世界規模にまで発展するのではないか。そんな期待さえ抱ける。「酢」はポテンシャルの高い、日本が誇れる調味料のひとつである。

【取材・執筆】 桜生 マリコ(さき まりこ) 2011年7月5日執筆

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