メディカル・レストラン
第7回「ひむか」
10.13
現役の医師が、健康になれるグルメ情報をお伝えします
ようやく夏の空も終わりを告げ、夏雲の横に秋の雲がちらほらとお目みえする季節になってまいりました♪
秋のいわし雲やさば雲を見ていると・・・「あー。。もう秋だよなぁ。。。。。そんな事より腹へった〜ぁ。」となるのは食いしんぼのラボ所長だけでしょうか?爆。
さて今回は和食の名店です。ネットへの登場はいっさいお断りしていると言うお店ですが特別に許可してもらいました。「ひむか」とは九州の『日向(ひゅうが)』の事で、名前から察しますと本来は宮崎料理を出すお店のはず・・・ところが御主人の柴田和幸氏(いつもは優しいけどケンカは負け知らず)はあちこちで厳しい修行をされたらしく、宮崎料理と言わず彼なりのアレンジをされた楽しく素晴らしい品々を四季ごとに披露して下さいます。
御主人の柴田和幸
お店の場所は麻布十番。二の橋から仙台坂方向にちょっと行った所です。実はラボ所長は何の情報もなくこの前を数年前に歩いていて、ムム。。この店の中から美味しいオーラが感じられる・・っと入ったのが「ひむか」への最初の来訪でした。そして自分の動物的直感がズバリ的中した事がとっても嬉しかった事を覚えています。
「ひむか」
(住所)東京都港区麻布十番3-10-9 ミリオンパレス麻布仙台坂
(電話)03-5443-5198
(営業時間)18:00〜24:00頃
(定休)日・月曜の祝日
さて、席に着きましょう。今夜の所長の夕食は、
1、鯖の胡麻醤油
2、海胆と半熟卵のゼリー寄せ
3、鰻と夏野菜のサラダ
4、ひむか風豚シャブ
5、生姜と油味噌
1、まずスタートはこのお店の名物の一皿。鯖の刺身に胡麻とあさつきが豪快に振りかけてあります。たっぷりと山葵も添えてまとめて口にいれますと・・口の中にカオスの美味しさが広がります。秋の空に鯖が泳ぐこの季節に相応しい一品かと思われます。
鯖の胡麻醤油
鯖の胡麻醤油
2、これも半熟卵を壊しながら海胆とわさびとゼリーを一緒に頬張りますと・・口の中が幸せいっぱいで膨らみます!ワンスプーンごとに卵とゼリーと海胆の比率が違う事で毎度毎度新鮮な味わいが得られます。
海胆と半熟卵のゼリー寄せ
海胆と半熟卵のゼリー寄せ
3、鰻のサラダ!鰻を使用してこんなに美味しいサラダが作れる事を今まで誰が想像した事でしょうか!サッパリとした水茄子やゴーヤやトマトとの組み合わせはコロンブス級の発見かと思われます。
鰻と夏野菜のサラダ
鰻と夏野菜のサラダ
4、今晩のメインです。ここのシャブシャブは肉をシャブシャブする汁の方に秘密があります。玉ねぎがたっぷりと入りそこに1滴のごま油。玉ねぎの柔らかな甘さを含んだスープと一緒にお肉を口に入れる前に柚子胡椒をお肉の端に乗っけましょう。玉ねぎの甘さと柚子胡椒の辛さの絶妙なマリアージュが豚肉の美味しさを何十倍にもひきたてます。お汁も1滴も残らずたいらげたい所です。まさに「鍋壊し!」の美味しさでした。
ひむか風豚シャブ
ひむか風豚シャブ
5、最後は芋焼酎を片手に、生姜+油味噌でチビチビといきました。スタッフ共々お口のなかが生姜とお酒で消毒(?)されてサッパリ!「ひむか」さんには美味しいご飯ものも色々とあるのですが今日はガマンガマン。。。笑。
生姜と油味噌
所長のコメント:
和食は健康食の王様です。しかし好きなものをかってに寄り好みして食べていたのではその素晴らしさも半減してしまいます。コース料理ならいざ知らずアラカルトでしたら頭を使って美味しいだけでなく身体に優しい自分だけの献立を組み立てましょう。
今回の献立はシャブシャブの肉以外は全て魚とお野菜類で取り揃えました。
そして最初の鯖には身体の血をサラサラにする油が大量に含まれており、和食の際にはこれら青ざかなの献立を必ず入れて頂きたいと思います。海胆と玉子と言うリッチなメニューにもにもオクラと言うやはりサラサラ系の食材が入り、コレステロールが気になる一品のマイナス面を中和させています。そして鰻のサラダにもゴーヤや水茄子、茗荷などカロリーが少なくビタミンも豊富な物がどっさりと入っております。そして全てが、と・っ・て・も・お・い・し・い!!これがキモ!健康な食事を究極の美味に昇華させて提供する柴田氏の腕前に脱帽です!
さて、実は今回はここのシャブシャブをご紹介したかったので「ひむか」さんに足を向けました。
普通のシャブシャブはダシの入ったお湯に肉をシャブシャブしてから醤油ベースのタレか胡麻ベースのタレで食します。私の個人的な意見では醤油ベースのは家庭でもそこそこに作れますが胡麻の方はプロにはかないません。よって外食でシャブシャブ屋さんに行った際に胡麻ダレで食さないのはもったいないと思います。
ところがこの胡麻ダレの胡麻油自体は身体に良い油なのですがカロリーが高く、そこに血をドロドロにするお肉を浸して食すとなるとちょっとメディカルレストラン的には疑問です(勿論スキヤキなどに比べればずっと素晴らしい食方法ですが)。もっと美味しくカロリーオフでシャブシャブする方法はないのだろうか??
そこで登場しますのが「ひむか風シャブシャブ」です。なんとシャブシャブする土俵を美味しくし(血をサラサラにする玉ねぎがいっぱい!)余計なタレは用意しなくても良く(家庭でもきっとできるはず?)サッパリとしていながらコクがある。例えるならお肉のブイヤベース。肉以外の余計なカロリーをカットした素晴らしい究極の豚シャブの食べ方です。
「ひむか」さんの完璧すぎるが故の欠点。。。。料理は美味しくお酒も貴重なる品々が揃っておりコストパフォーマンスも宜しいのにこれ以上いったい何を求めるんすかぁ??・・・それは、美味しさのあまり、つい食べすぎ飲み過ぎをしてしまう事でーす!
しかし、今回所長はいつもよりも一品減らし最後のご飯物も涙を呑んで止めました。パチパチパチ(拍手)。。。
・・と言う事で、今回の『健康×美食ラボ』からの提案は、
「健康な食事量でおさえる意志力を養う!」。
我々は犬や猫ではありません。目の前に美味しい物が山と出されても腹八部で押さえ事がきっとできるはずです。自分の意志でガマンすれば良いのです。さもなければお店に行く時に財布の中身を少なくして行くしかありません(笑)。何事も訓練です。毎回腹八分にしてますとそのうちに胃袋も小さくなり(医学的には胃のサイズが小さくなる事はありえませんが)食べられなくなるものです。ですから注文し過ぎて料理を食べ残すなんてのが最悪です。マナー的、ロハス的にも宜しくありません。きちんと考えて注文する様にいたしましょう。
さて、和食はサラサラ系の究極の食事ですが食材各々のサラサラ度を比較してみましょう。お肉には残念ながらサラサラ系はないので、魚貝類、野菜、果物のサラサラ度の金銀銅メダルを書いてみまーす。
《血のサラサラ食材》
まず、お魚さん。
金賞:鰯、鯖、鮪
銀賞:太刀魚、秋刀魚、鰻、真鯛
銅賞:鰊、鰆、鰹、焼き海苔、イサキ、ホッケ、アナゴ
次に、お野菜さん。
金賞:にんにく、青葱、ラディッシュ、チャイブ
銀賞:さやいんげん、カイワレ、エシャロット、トマト、アスパラガス
銅賞:玉ねぎ、ブロッコリー、ピーマン、セロリ、ゴーヤ、クレソン
最後に、果物君。
金賞:残念ながらいません。
銀賞:メロン、甘夏
銅賞:グレープフルーツ、はっさく、レモン、いちご
しかし、これらを選んでいれば動脈硬化も少なくなり健康体間違いない!ってなわけには行かなくなって参りました。特に昨今問題になっているのが魚貝類の重金属汚染です。今まで散々「健康に良い」ともてはやされていた魚貝類に問題点が発生しました。それらをお知らせしたいと思います。
Ⅰ、水銀
数年前にブラジルやカナダで水俣病が発生し一躍問題視され・・特に妊婦では注意して魚を選択する必要が出てきている様です。要注意の海の幸と制限量は、
1、イルカ(週に10g以下にすべし)
2、金目鯛、メカジキ、本鮪、メバチ鮪、越中バイガイ、ツチ鯨、マッコウ鯨
(週に80g以下にすべし)
3、キダイ、真カジキ、ミナミ鮪(週に160g以下にすべし)
特に金賞さんの鮪やカジキ類が気になりますよね。案外ガップリと食べるお魚ですし。。マグロ船の船員は長期にマグロを食べるため毛髪の水銀レベルが高いそうです。。。。
Ⅱ、ヒ素
ヒジキが問題視されております。平成16年には英国では日本から輸入されたヒジキに高濃度のヒ素が認められたため国民に食べないように指示が出されました。他の海草にはヒ素はヒ素でも人体に悪影響を与えにくい有機ヒ素化合物になっているのですがヒジキには毒性の高い無機ヒ素として大量に含まれているそうです。
(Q)ではヒジキは食べない方が良いのでしょうか?
(A)研究によりますと水戻しで約半分、湯で戻すとほとんどのひじき内のヒ素
が溶出して毒性は減少するらしく(栄養分は変わらず)、小鉢ぐらいの量
でしたら毎日食べてもあまり心配はないそうです。
ミネラルも豊富で食物繊維が大量にある(ごぼうの約7倍)ヒジキは医学的には身体へのプラス面がかなり大きく、きちんと戻して毒をとりさって食したい所ですね。
*今日の流通機構は素晴らしく地球の裏側の食材が数日後には我々の口に入る時代になりました。その素晴らしさ故に世界レベルで食材の品質チェックをしないと安心して食べられないと言う・・便利な様で不便な時代なのです。それも新鮮であるかどうか?保存状態がどうか?などでは判らない危険が潜んでおり、日々の情報収集は大事かと思われます。BSE問題に限らず今後も色々と難しい問題が発生しそうです。まだ誰も知らず、今後発表になるであろう未知の汚染や感染生物も多々あるはず。ラボからも適時情報を流しますが、個人個人でも情報に注意を向け、特に妊産婦さんや子供達には本当に身体に良い物を食べさせたいですね〜。
執筆 『健康×美食ラボ』所長:医学博士 岡野喜久夫 2006年9月29日
『健康×美食ラボ』所長 岡野内科診療所院長 |