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チャイニーズの居抜き物件を契約。
〜ニューヨークから1年で撤退。通用しない日本の常識とは?〜(7−1)

2010.5.16
ニューヨークでの出店を夢見る日本人は多いが、成功する方は少数。今回取材したS氏(匿名)は、和食カフェをマンハッタンで挑戦。半年遅れで開店し、その後1年で資金が尽きて無念にも撤退した。ニューヨークを目指す方々のために、勇気を持ってS氏は実体験を語ってくれた。7回シリーズの第1回目。


ニューヨーク、タイムズスクエア。

チャイニーズの居抜き物件を契約

 S氏は大手ファミレスチェーンに勤務後、コンサルタントとして独立。日本の外食企業によるニューヨーク出店のプロジェクトチームの一員として、度々渡米し、人脈を広げた。その中で現地法人の社長を務める日本人と意気投合し、2人で和食カフェの出店を決意した。

「最初は、彼(現地法人の社長)が独立して店を持つという話で、2008年1月に手伝いに行きました。なかなかオープンできずにいた所、不動産屋から物件を紹介されました。ニューヨークをよく知る彼から、良い立地で家賃も高くないので一緒にやらないか、という話になり、彼に99%の信頼を置いていた私も安易に、やろうやろうと盛り上ってしまいました。」

「契約は結びました。1階70坪、地下も70坪。地下は賃料のベースにはなっていません。坪当たりでは1780ドル(1スクエアフィート当たり50ドル)。相場からは高くなかった。サブプライムの前で、今なら高いですが。分厚い契約書も彼がいるからと、安心してサインしました。約2千万円の資金調達も完了。ところが、店を開ける前に彼が逃げた。最終的に裏切られました。」

 S氏は一人で、店を開けざるを得なかった。

「寿司を全面に出して、日本のデパ地下のように惣菜をショーケースできれいに陳列して測り売りするスタイルです。マンハッタンにはないフォーマットなんで上手くいくんじゃないかと思いました。加えて、注文を受けてから調理するヌードルや丼も提供。店前にはコーヒーのカウンターがあり、イートイン用に30席の客席も設けました。」

「チャイニーズデリの居抜き物件を使って、ローコストで改装。ニューヨークはビルが100年とか平気で経っているので、内装を全部スケルトンにして作る店はごく一部です。 大半は化粧直しのレベルでオープンして、上手く行ったら金をかけて改装する。ウチもだから2千万円で出来上がりました。」


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年4月9日取材