フードリンクレポート


でも、ジャパニーズデリは可能性がある。
〜ニューヨークから1年で撤退。通用しない日本の常識とは?〜(7−4)

2010.5.20
ニューヨークでの出店を夢見る日本人は多いが、成功する方は少数。今回取材したS氏(匿名)は、和食カフェをマンハッタンで挑戦。半年遅れで開店し、その後1年で資金が尽きて無念にも撤退した。ニューヨークを目指す方々のために、勇気を持ってS氏は実体験を語ってくれた。7回シリーズの第4回目。


日本食のファーストフードも(本文とは別の店舗)。

でも、ジャパニーズデリは可能性がある

「業態としては、ジャパニーズデリは今でも可能性があると思います。1日の売上の最高は店売りとケータリングで合わせて3千5百ドル。瞬間風速ですが。ジャパニーズデリのマーケットとニーズがないことはない。但し、ニューヨーカーに認知させることが必要。私の場合は知らせるための活動が後回しになりました。目の前の作業で精一杯で、媒体を使ったプロモーションにお金を回せなかった。立地はオフィス街で夜は全く人がいない。ランチがメインで、ローカルのアメリカ人に対するビジネスをやるしかないので、店頭や5番街で英語のチラシは撒きました。」

「また、売るものを整理しないまま店を開けてしまった。この店はこういう店だと整備されたフォーマットにできなかった。人気はチキンてりやき丼4.99ドルでした。リーマンショックでランチに金をかけない、7〜8ドルではお客を引きつけられないだろうと最初は客寄せのつもりで始めました。チキンと米は安いので原価2ドルです。最後まで売れ続けました。」

「日本食の経験のある人は日本食に、ヘルシーという良いイメージを持っています。日本食が本当にヘルシーかどうかを科学的に理解してるわけではないです。極端に言えば、日本人には米国人のような肥満がいないよね程度。だから日本人が食べてる料理はヘルシーだと思っています。チキンてりやき丼は、てりやきという馴染みの言葉と、チキンというヘルシーさで、米国人が手を出しやすい。ちなみに、米国人は鳥皮は食べません。皮なしのモモ肉を使いました。でも本当にヘルシーを求める米国人は胸肉を選びます。日本とは逆に胸肉の方が値段が高い。」

「寿司も7〜10ドルでそこそこ売れました。でも、寿司はアペタイザー。我々の考えるワンパックでは彼らの1食にはならない。寿司とヌードルを一緒に食べたり、おやつ代わりに食べる人がいっぱいいます。夕方、家に帰る前に寿司を食べてちょっと小腹を満たして、家でちゃんと食べるとか。寿司好きは2パックを買ってランチです。売れるのは圧倒的にロール。」


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年4月9日取材