フードリンクレポート


大好きなものは毎日食べる米国人。
〜ニューヨークから1年で撤退。通用しない日本の常識とは?〜(7−6)

2010.5.24
ニューヨークでの出店を夢見る日本人は多いが、成功する方は少数。今回取材したS氏(匿名)は、和食カフェをマンハッタンで挑戦。半年遅れで開店し、その後1年で資金が尽きて無念にも撤退した。ニューヨークを目指す方々のために、勇気を持ってS氏は実体験を語ってくれた。7回シリーズの第6回目。


キリン・イチバンのタップは、日本刀をイメージ。

大好きなものは毎日食べる米国人

「米国人は保守的です。通勤のコースを変えようとしない。駅を出て自分のオフィスに行く途中のいつもの店でコーヒーとベーグルを買うという人は、いくら同じコースに新しい店が出来て、安い値段で、しかも淹れたての美味しいコーヒーを売っていたとしても、さらに試飲して飲んだとしても、パターンは変えない。そちらの方か良いと分かっても、自分のパターンを変えない人の比率が高い。」

「日本人とは異なる価値観です。通常のデリで1ドルのコーヒーを買うとする。同じコーヒーを日本人のホスピタリティーで、笑顔で、声もかけて、カップを両手で提供し、75セントで売っても売れない。その代わり、中には大感激してくれる人もいます。何で75セントでそこまでしてくれるのか、グレイト!パーフェクト!と日本では受けたことの無い賛辞をいただきます。でもそれが圧倒的多数にはならない。」

「また、毎日ランチタイムに同じものを食べる。日本人と食への興味が違う。他をトライしてみたい、というのはない。毎日食べる人は、それが大好きだから。一回好きになったら浮気をしない。毎日来る人に、いつものですね、とやると彼は常連として大事にしてくれていると思ってくれる。そこに毎日店に行く価値を見出しています。毎日同じものを食べても何も不満がない。大好きなことを毎日している訳ですから。」

「常連という物差しが日本と全く違います。1日3回来るのがロイヤルカスタマー。10時のコーヒーブレイクでコーヒーを買いに来て、ランチタイム 夕方3時の休憩、もしくは夕方にコーヒーを買って帰る。そんな方が10人以上はいました。」


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年4月9日取材