フードリンクレポート


接客の面白さを味わえるニューヨーク。
〜ニューヨークから1年で撤退。通用しない日本の常識とは?〜(7−7)

2010.5.25
ニューヨークでの出店を夢見る日本人は多いが、成功する方は少数。今回取材したS氏(匿名)は、和食カフェをマンハッタンで挑戦。半年遅れで開店し、その後1年で資金が尽きて無念にも撤退した。ニューヨークを目指す方々のために、勇気を持ってS氏は実体験を語ってくれた。7回シリーズの第7回目。


ニューヨークは人を引き付ける。

接客の面白さを味わえるニューヨーク

「ニューヨークのビジネスの魅力はお客が1回好きになったら浮気しないこと。本当に毎日来てくれる。自分が気に行った店には必ず友人を連れてくれる。楽しい接客をしようと思えばできる。日本では接客を褒められることはないが、当たり前のように褒めてくれる。接客の面白さを簡単に味わえる。こちらから仕向けなくても、お客から仕向けてくれる。こちらはそれに合わせるだけ。」

「外食はロボットができる仕事じゃない。人間がやるから価値がある。ニューヨークの経験は今後の日本のフードビジネスの発展に役立ちます。」

「ニューヨークにもう一度行きたい。進出される方は、日本の常識と違うことがニューヨークでは沢山あるので、使える資金の範囲を決めてその中でやる覚悟が必要です。」

 出店にかかわる初期投資が大きくて引くに引けない状況になり、海外にかかり切りとなり、日本がおろそかになってビジネス全体が傾いてしまうことが起こりうる。確かにS氏が言うように、限度額を決めて挑むことが重要だ。さらには、経営者自らが海外に乗りこむ場合には、日本側の運営をしっかり任せる体制が出来ていなければならない。もしくは、海外を任せられる人間を見つけて託すというやり方。

 しかし、ニューヨークに店を持ち、接客の面白さを知ったり、日本では学べない経験を味わい、それを日本に持ち帰ることで、新たな外食ビジネスが生まれてくることは間違いないだろう。世界が和食ブームに沸いている。日本の外食企業が世界で活躍できるチャンスだ。


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年4月9日取材