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フードリンクレポート


神奈川県受動喫煙防止条例の施行を半年後の2010年4月。
神奈川県内の外食企業は現状は?

2009.12.7
神奈川県の受動喫煙防止条例は施行を半年後に控えている。神奈川県だけ条例という具体的な動きをみせているが、これを機に全国へ広がる可能性もある。今後自身が当該者となった際にはそれぞれの立場で声をあげられなければいけないことも考えられる。現況を常に共有することで意識喚起につながり業界全体でより時代やニーズに即した動きができることを望む。


外食はお客様に楽しい空間を提供したい。

お客様の9割が喫煙者という個人店の現状

 個人で20年以上営業しお客様の9割が喫煙者という街場の店舗に現状を伺った。

現状なにか取り組みの進捗はありますか?
 喫煙率がとても高く、吸えるということが長年お客様に喜ばれることのひとつと当然のことのようにとらえてきました。各テーブルには灰皿を二つずつ置いています。愛煙家の方々に支持されてきたお店なので条例の話はありますが今も変わらずそのようにしています。

今後(施行までの期間)はどう考えていますか?
 愛煙家を大切に「お酒とたばこはセット」と考えていて、当店は吸える場所であってほしい、あるべきと思っています。よって夜は今後も喫煙者をメインターゲットに考えます。現時点では条例に関しては具体的な取り組みはないということです。ただランチに関してはアルコールを飲まれるお客様も少ないですし、たばこの煙で入店されない方も多いので、食事主体ということで禁煙にしてもいいかなという考えはあります。それは条例とは少し別で「お客様が食事を楽しまれる場」だという視点です。あくまでお客様に喜んでいただけるというのがベースにあります。

近隣の同業者の方はいかがですか?お話をされますか?
 こちらから敢えて話題にする場合はありましたが、普段から自然と話にでて関心が高まっていると感じたことはないですね。また話題にしたとしても「何もしてない」「関心がない」という反応です。自店の周辺(保土ヶ谷区)だけではなく横浜駅に近い飲食店の方々も考えていない気がします。同業の皆さんが考えているのか、又今後変化があるのか。情報交換は随時していける場があればいいと思います。



対象店舗を数多く持つ事業主の現状

 ある神奈川県内の企業は運営する飲食店舗20軒ほどの内、半分以上が条例の対象。対象店舗の洗い出しに県は床面積の数値を用いており「調理場などバックスペースを除いた床面積が100平米を越える飲食店」はそれである。営業中の半分以上の店舗で取り組みが必要となった企業に現状を聞いた。

条例についていつ頃から意識をされ始めましたか?
 この条例を最初に聞いたのは今年の春先で第一報が出されてすぐのことだったと思います。社内でも即共有されました。「100平米以上の飲食店舗」という数字も具体的にありましたので、県の窓口に聞きに出向いたのもすぐの対応でした。しかしそこでは「夏頃に詳細が発表される」とのことで待つような形になったのです。その後フードリンクのセミナーが企画され、神奈川県のたばこ対策室の担当者も参加し直接に話を聞ける機会だということで参加しました。詳細はそこで初めて対面で聞く形となったのです。

セミナーでどの辺りが理解されましたか?
 中小零細企業にとってこの設備投資がどれくらい膨らむものになるのか、その辺りの具体的なところに大変興味がありました。結果、金銭的なバックアップは全く県からはなく、更に「貸付制度があるので利用されるといい」等の言葉がありました。当然金利も掛かるしこちら側としては意図しない回答でした。補助予算などの話がでれば検討に前向きになる余地もあったかもしれませんが、100%自己賄いは現実的には窮屈です。外食業界の景気も悪い中で、難しい話だと感じました。分煙の設備投資をすることが、集客アップや顧客満足度アップの大きな要因になるという確信が得られるような内容も聞ければ、当然積極的になれたかもしれませんがそういう理解もできないままでした。


年末の繁忙期を控え、これから具体的にどういった取り組みが考えられるのか

現時点での取り組み状況はいかがですか?
 現在、全席喫煙可だった店舗の内、禁煙エリアを設けた店舗があります。設けたと言っても席数の50パーセントにも満たないごく一部分ではありますが。年末に向け集客のあがる時期です。その時期にできる範囲のトライアルを行って禁煙や分煙に関するお客様のリアルな反応を見たいですし声を集めたいと思っています。「お客様に楽しんでいただきたい」というのがレストランを運営していく上で欠かせない基本的考えなので、その空間としてどうなのかということです。

全面喫煙可であった店舗を分煙または禁煙とした場合、お店に何か変化があると思いますか?
最も容易に想像ができ且つ懸念されるのは売上げ減少の要因になるだろうということです。それでなくても世間の景気もあって昨年対比を超えていくのは難しいです。当社だけでなくそういった状況は同業の皆さん、同じではないかと思います。条例の施行が更に追い討ちをかけるのではと思います。

何か対策は考えていますか?
 吸えても吸えなくてもそれに関係なく「選んでいただける店」になるということです。「あの店はたばこが吸えないけれど美味しいし、サービスがいいし、また行きたい」と言ってもらえればよいのだと思います。サービス向上で何とかカバーできるだけの店舗力をつけたいと考えています。年末の集客をしながらその辺の対策やアイデアも探ります。

施行が目の前に来たら自店がどういう状況になっているか、イメージはありますか?
 空調関係の業者さんからのアプローチは既に何件か当社にあります。ただ現時点では見積もりをとったり、店舗を内覧いただいて詳しい提案を聞くなどの具体的な接触には至っておりません。積極的に分煙の設備投資をしていこうという動きがまだないのです。ですから結果的に時期がきたら、全席禁煙にせざるを得ないということもあるかと思います。その場合は良いか悪いかは別として、店前に灰皿を設置しそこで吸っていただくような対応も考えられます。

今、欲しい情報はありますか?
 同じエリアで経営している近隣の対象店舗、大手企業は別としても同じ立場にいる方々がどのようにとらえているのかをもっと知り合いたいです。施行開始の4月迄とその後の移行期間の1年をどう対応し過ごそうとしているのか。皆でタグを組むという訳ではないのですが、先に積極的に分煙や禁煙を取り入れたことで、ぎりぎりまで取り組まなかった近隣店舗に来年度の一年間、お客様を全てとられてしまうということも全く考えられなくはないと思います。


 お客様のことを思えば、楽しみで飲食店に来ていただき、歩いては吸えないし「お酒を飲んでいるとき」「飲んだ後」「食後の一服」これを楽しみたいというニーズにも応えたい、広い意味で楽しい空間を提供したいということに飲食店側は揺ぎ無い。お客様が店選びをする際に選択から落ちることは少しでも避けたいと考える場合、分煙に向けての設備投資へ踏ん切りがつかないというのが現状のようだ。


【取材・執筆】 国井 直子(やすだ まさあき) 2009年11月27日取材


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