フードリンクレポート


芋焼酎「黒丸」はデフレ阻止。
ボトル売り&食コラボを推進。

2010.1.20
本格焼酎ブームも昨年から曲がり角の中、芋焼酎のみ今も伸び続けている。牽引するのは「黒霧島」(宮崎県・霧島酒造)を中心とする上位ブランド。その中に、ビール会社が販売する本格芋焼酎として唯一、「黒丸」が入っている。


「黒丸」と焼鳥とのコラボメニュー。ボトルを見せてボトル売りを勧める。

本格焼酎3%減、芋7.8%増

 日本酒造組合中央会が発表した2008年7月〜09年6月の本格焼酎の課税出荷量は、前年に比べ3%減少。原料別に見ると、さつまいも7.8%増、米6.1%減、麦8.9%減、そば2.1%減。唯一、さつまいもを原料とする芋焼酎のみが伸びている。

 中でも、「黒霧島」は家庭用の1.8L紙パックが好調で、外食市場より家庭市場で数量を伸ばしている。外食市場での高いブランド力が、家庭消費を誘っている。

 他に上位で伸びている芋焼酎は、「白波」(鹿児島県・薩摩酒造)、「一刻者」(販売・宝酒造)、「伊佐錦」(鹿児島県・大口酒造)、「海童」(鹿児島県・濱田酒造)。そして、濱田酒造が製造し、サントリーが販売する「黒丸」。この6ブランドが主に目立っている。

「本格芋焼酎 黒丸」

 大手ビール会社は、本格焼酎ブームの到来とともに、02年頃からこぞって本格焼酎の蔵元と提携し、自社ブランドでの製造を委託。ビール会社は販売者として、主に自社樽生ビール扱い店に販売してきた。

 その中で「黒丸」は鹿児島県の老舗蔵元、濱田酒造を選んだ。広告でも「創業140年、薩摩の名門『濱田酒造』が心をこめて醸しました」と明記。製造元を明らかにしている点が消費者の評価を高めた一因だろう。


低価格化が起きない飲み方提案

「黒丸」は今年1年間、季節毎の和食とのマッチングを広告、販促で展開してきた。実際に飲食店で飲まれるシーンに近づけた。

 純粋な広告だけでなく、食の専門誌で「黒丸」が飲める飲食店とタイアップ記事を展開するなどで、消費者のイメージを高めた。さらに、店舗独自の料理写真を取り込み、ボトルの写真も入れたオリジナルメニューを作成するサービスも行っている。


広告 「黒丸」&蟹。


広告 「黒丸」&鮎。

 さらには、ボトルを消費者に知ってもらおうと、ボトルと氷、水をセットした水割りセットの販売を飲食店に促している。通常、本格焼酎はショット売りが中心。ショットであれば通常2杯で終わるお客がボトルにすると3〜5杯も飲み、滞在時間も伸びて客単価が上がる。

「外食市場が伸びない中、低価格化を進めるのではなく、ブランド焼酎を作っていきます。料理との相性もきめ細やかに配慮して、1杯1杯の価値を伝えたい。伸びは期待できない限られたパイの中、低価格化がおこらないよう、業務店でのお客様との接点をベースに品質訴求を行う事で、じっくりブランドを育てていきます。来年は、1割程度の伸びを狙います。」とサントリーでマーケティングを担当する深田啓志氏(サントリー酒類株式会社 スピリッツ事業部)は語る。


サントリー酒類の深田啓志氏。

 2010年には、パッケージをリニューアルし、より本格芋焼酎の表情を持った「黒丸」、飲食店限定商品の「本格芋焼酎 黒丸(黒)」も発売される。ふかし芋と焼き芋を原料にした「まろやかなコク」「香ばしい風味と余韻」、常圧蒸溜による芳醇な風味と味わいが特徴だ。

「本格芋焼酎 黒丸(黒)」
*2月中旬出荷分から順次新発売
http://www.suntory.co.jp/news/2010/10638.html

「黒丸」販売の9割は外食市場。不況によるデフレが深化する中、その流れを僅かでも食い止められる商材として注目したい。


→「本格焼酎黒丸

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2010年1月15日執筆