フードリンクレポート


【酒類大手4社の2010年】
「ラガー」をさらにラガーらしくブラッシュアップ。
好調の「一番搾り」とあわせて、「ラガー」、「キリンフリー」、そして新たな洋酒ラインアップで攻める。
キリンビール株式会社

2010.2.19
昨年、麦芽100%にリニューアルした「一番搾り」が好調で、ビール市場が縮小する中、前年比100%を実現。今年は、キリンビールの歴史的ブランド「ラガー」をさらにラガーらしくブラッシュアップ。2ブランドでビール市場を追求する。そして、昨年人気のアルコール0.00%「キリンフリー」では『ハンドルキーパーびん』を期間限定で発売。


「ラガー」をラガーらしく、ブラッシュアップ。

ガツン!とくる「ラガー」を訴求

 キリンビールは、三菱合資・明治屋の関係者らによって、1907年に設立された。同社が設立以来、製造してきたのが「キリンビール」。85年の「キリンびん生」、86年の麦芽100%の「ハートランドビール」など様々なタイプのビールが発売される中、「キリンビール」は他商品と差異化するため、88年に「キリンラガービール」と名称変更された。一番麦汁だけを使った「一番搾り」が登場するのは90年。

 キリンビールにとって「ラガー」は120年以上続く歴史的ビール。それを、今年2月中旬製造から順次ブラッシュアップする。ラガーらしい「のどにグッとくる刺激感、コク・飲みごたえのある味」をさらに強化する。消費者調査による味の評価も従来のラガーより好評だ。瓶、缶、樽ともにブラッシュアップする。

「ラガー」瓶。

 苦味を増す訳ではなく、ガツン!とくる味を強化する。ホップの配合を見直し、ホップを約1.3倍に増量し、醸造過程でホップを加えるタイミングを見直した。さらに、ラベルデザインには、さまざまな分野で幅広く活躍中のアートディレクター佐藤可士和氏を起用し、ラガーの正統感・力強さが際立つ現代的なデザインとした。

「ラガー」の歴史を知る年配の方々だけではなく、「ラガー」を知らない若い世代にもアプローチする。

「若い人にはラガーは新鮮だと思います。すっきり味以外のビールもあることを知って欲しいです。お店でも、『一番搾り』とはタイプの異なる味なので、両方置いていただき、お客様にビールの楽しみをご提案いただきたいですね。」とキリンビールの和田烈岳氏(営業本部 営業部 営業企画担当 主務)は勧める。

 幅広い業態にマッチする、麦芽100%ながら飲みやすい「一番搾り」が主流となるだろうが、個性的な「ラガー」で店にアクセントを付けることも面白い。

 デフレの中、発泡酒「麒麟淡麗<生>」を扱う店がじわじわ増えている。しかし、「ビールと発泡酒の両方を扱っている飲食店様では2〜3割が発泡酒というところが多いようです。顕著にビールから発泡酒に変わっている、という感じではありません。『麒麟淡麗<生>』は、『一番搾り』よりもすっきりした味をお好みのお客様に飲まれているようです。ビールを飲みたいお客様も多く、劇的に発泡酒に変わっているわけではありません。」と和田氏。どうせ外で飲むなら、美味しいものを飲みたい、食べたいという気持ちはデフレの中でも強い。


「キリンフリー」はハンドルキーパー運動を推進

 昨年4月に発売された、ノンアルコール・ビールテイスト飲料、アルコール0.00%の「キリンフリー」が絶好調だという。「『キリンフリー』なら飲んでもいい」というお客様が増えた。そこで、飲酒運転根絶をテーマに活動を始め、昨年9月に財団法人 全日本交通安全協会、社団法人 日本フードサービス協会、社団法人 日本自動車連盟(JAF)が推進するハンドルキーパー運動への協力を表明した。


幕張パーキングエリアでハンドルキーパー運動を告知するキリンビール、松沢幸一社長。

 ハンドルキーパー運動とは、車で仲間と外食店などへ行く場合に、お酒を飲まない人(ハンドルキーパー)を決めて、その人が運転して仲間を自宅に送り届ける運動。

 今年もハンドルキーパー運動を応援する。運動を告知するため、瓶のラベルにハンドルキーパーマークを付けたものを2月上旬製造分から順次出荷する。限定発売。


肩ラベルにハンドルキーパーマークが付いた「キリンフリー」。

 外食店も飲酒運転根絶を謳うことにより、社会貢献に繋がる。しかも、ハンドルキーパー、飲まない人を決めることにより、それ以外の人に積極的にお酒を進めることができると営業面での効果もある。

 そして、昨年11月から、「ジョニーウォーカー」「I.W.ハーパー」「スミノフ」「ゴードン」「タンカレー」「ベイリーズ」など英ディアジオ社の洋酒ブランドの扱いが始まった。外食向けの商品のポートフォリオが一気に広がり、総合ドリンク提案が可能になった。

 ビール関連ジャンルで、「一番搾り」「ラガー」「キリンフリー」と強力ブランドを持つキリンビール。それに洋酒の強力ブランドが揃い、外食市場向けの様々な提案が出来る体制となっている。今年は、サッカー世界大会、ワールドカップの年でもあり、日本代表を応援するキリンビールへの注目、期待が高まる。


キリンビール株式会社


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2010年2月22日執筆