フードリンクレポート


<マルシェ・ジャポンを知る>
青山通り沿いのお洒落マルシェ、
Farmer’s Market@UNU
(東京都/青山・国連大学前広場)

2010.3.8
青山通り沿いの国連大学前広場。向かいには青山大学があり一日の通行量は2~3万人といわれる。このエリアはお洒落で大人の街のイメージやファッション情報の発信地として知られアパレル系のショップやオープンテラスのカフェが多く並ぶ場所。この立地にぴったりと合った「お洒落マルシェ」の魅力にせまる。


国連大学前広場のマルシェ。

どこまでもデザインの効いたお洒落マルシェ


赤や黄色のストレッチファブリック。

 ここのマルシェを運営するのは株式会社マインドシェア(東京都港区)。地域活性なども手掛けるコミュニケーションマーケティングの会社である。いたるところに品よくデザインの効いたアイテムを工夫して配し、マルシェ全体でこの街にあった演出が上手にされている。空に向かって張られる日よけも兼ねたカラフルなストレッチファブリックは空間デザイナーによるもの。全体の雰囲気をつくる立役者。「のぼり禁止」「ハッピ禁止」がここのルールで、青山にマッチしたトーン&マナーが統一されている。

 陳列用の木箱も全てオリジナルで作った。木箱に書かれている「Farmer’s Market」という名前は同社が運営する2箇所のマルシェで使われている。二箇所とは今回取材した「Farmer’s Market @UNU」(国連大学前広場)と、表参道に面した商業施設「ジャイル」で行われている「Farmer’s Market @GYRE(渋谷区神宮前)」。マルシェがどういうものかを、よりダイレクトに分かり易くお客様に伝えたいと考えられた。

 真ん中に置かれたウェイティングスペースのテーブルとその周りの丸太の椅子。このさりげないテーブルセットがここではとてもマッチしている。


雰囲気をつくる木のテーブルと丸太の椅子。


滞留時間を長くするための工夫

 色々な人が通行するこの場所では、家族連れもいれば近隣の住人もいる。又若いデート中のカップルも多い。通りがかりの人もちょっと立ち寄れて、立ち寄ったらつい長く居てしまうような仕掛けを考えて工夫しているという。「マルシェのあるライフスタイル」を根付かせる為、食品以外の様々なショップも一緒に並ぶ。そのひとつがこのマルシェオープン当初から出店している「かごバッグ」を中心に扱う雑貨店。野菜を買って籐のかごバッグに持つのもここのお客様には雰囲気が合うだろうと主催者は考えている。
この日は子供向けに「ひょうたんで笛を作る」というワークショップスペースを設置。作るのに30分〜1時間位は掛かるので真剣にやっているとあっという間。その間にママはお買い物というのも考えられた戦略のひとつ。


カゴを売る雑貨屋。


子供向けのワークショップ。

 又オリジナルでフリーペーパーも発行、同社の主催する2つの会場に置いている。マルシェに対する想いや主催者のストーリーなどの読み物で、英字新聞のような手に取りたくなる雰囲気が感じられる。これも滞在時間を長くさせるための工夫のひとつだ。会場に自然に溶け込んでいる仕掛けのひとつである。


Farmer’s Market フリーペーパー(会場で配布される)。

 外観の可愛らしいキッチンカーもいくつか並ぶ。たまたま通りかかった人達も天気のいい日は特に、ちょっとしたteaタイムを過ごすのに気軽に立ち寄り易い。

「Tree house Cafe」は軽井沢のお店で、東京ではここでしか食べられない「パンケーキ」と「マイルドカプチーノ」を販売。ふわふわのパンケーキは、もちもちでしっとりとしている。トッピングには軽井沢周辺の農家さんの果物を使ったジャムを使用。


並ぶキッチンカー。


パンケーキを販売するキッチンカー(松永明子さん)。


シェフも集まるFarmer’s Market

 このマルシェの特徴のひとつとして、周辺レストランのシェフ達が新鮮な野菜や果物を求め多く集まることが挙げられる。普段なかなか出会うことのない「都会のシェフ」と「生産者」、双方にとってこの場で会えることのメリットは大きい。単なる食材の販売にとどまらず、生産者の想いやエピソードも付加価値としてシェフに手渡しされるのだ。料理人が得た生産者の声は料理をつくるときのアイディアやホールスタッフのサービストークにも活かされていく。群馬県桐生市のNPO法人「元気のでるファーム」は、無農薬・有機栽培で作った安心安全な野菜をバリエーション豊かに揃える。「金光菜」や「ステムレタス」など珍しい野菜は特に人気でリピーターも多く、早い時間にSOLD OUTとなる。

 同じく群馬県甘楽(かんら)町の「太陽と雨」は奥田典子さんが大切に育てた減農薬・無化学肥料の野菜達が並ぶ。奥田さんはアパレル関連の会社を退職以降、こだわり野菜を育てはじめて12年、3600坪の耕地で年間120種もの野菜を育てている。農業を勉強し、研究を繰り返して有機質肥料栽培に挑戦してきた。今では有名レストランやホテルの料理人からも高い信頼を寄せられている。美味しくきれいで安心な野菜作りをモットーに、今もなお進化中という。


「元気のでるファーム」 SOLD OUTが目立つ。


「太陽と雨」 奥田典子さん。


ライトアップも美しいナイトマーケット

 毎月第三土曜はナイトマーケットを開催している。マルシェ全体がライトアップされ、昼間とはまた違った趣をみせる。休憩テーブルの数を増やし食事をしながら来場者と出店者がゆったりコミュニケーションをはかることができる。クリスマスにはゴスペルのステージがあり、雰囲気もぴったりで盛り上がりをみせたという。ナイトマーケットを開催しているのは全国でもこのマルシェだけ。

 全体の統一感を大事にした、一貫した雰囲気作りはマルシェ目当ての来場者だけでなく青山通りを歩く様々な人たちを来場喚起する。また集まる人々が主催者の目指す雰囲気作りの一端を担っていることも分かる。ここでは統一感が心地よいくつろぎのお洒落マルシェを楽しめる。


ナイトマーケットの風景。


Farmer’s Market開催場所
■ファーマーズマーケット@UNU(国連大学前広場)
東京都渋谷区神宮前5-53-70 (表参道駅より徒歩3分、渋谷駅より徒歩8分)
■ファーマーズマーケット@GYRE
東京都渋谷区神宮前5-10-1(表参道駅より徒歩2分、原宿駅より徒歩6分)
※開催スケジュールはこちらから。


【取材・執筆】 国井 直子(くにい なおこ) 2010年2月27日執筆