・小箱でコストをかけなくても、成功できる
店を作るのに不可欠なのが設計施工会社。日本から来た外食企業の設計施工を一手に受け、レインズ「牛角」やWDI「田舎家」などを作ったYTデザインが有名。清水建設のニューヨーク支社で働いていた方々が独立した会社。
今回は、ホスピタリティ寿司「JEWEL BAKO」、マクロビオティック「SOUEN」、デザート「ChikaLicious」、そして豚足「HAKATA
TONTON」など話題の小規模店舗をデザインしている、スーパーパプリカSUPER PAPRIKA(http://www.super-paprika.com/) の鶴田博己氏に聞いた。
『ニューヨークタイムズ』で、「時間通り、予算通り、これニューヨーク?」と仕事ぶりを絶賛された。
「設計施工の費用は、価格的にはニューヨークの方が高い。日本は価格破壊ですが、こちらは価格が守られています。そして、1ヶ月で終わるものが半年か1年かかります。職人の仕事時間が9時〜17時で終わるから。オープン日は事前に決められません。引き渡しが絶対に送れます。管理するのが大変。例えば、今、ブルックリンの物件を作っています。現場を見に行ったのが昨年の夏。設計を進めて、工事の許可が下りるまで半年かかりました。」
「諸事情を説明しても日本のお客さんは信じてくれません。日本の感覚で出店して失敗する方が多い。オープンして後も大変。大手企業はイリーガルは雇えない。言葉、文化、教育の問題です。食材も日本から仕入れる。家賃も高いので利益は上がらない。」
「ウチはアメリカ人のお客さんが多い。日本人はあまりいません。日本人は大きな箱でやりたがりますが、上手くいきません。なぜ大箱でやるのでしょうか?大箱だと適用される法律も変わって来きます。そうしたことを理解したうえで採算を考えては。」
「初めて手掛けたレストランは寿司店『ジュエルバコ jewel bako』(http://nymag.com/listings/restaurant/jewel-bako/)。10年ほど前に開店。オーナーは弁護士で奥さんは米系韓国人。2人が住んでいるビルの向いにサイドビジネスで開けました。私は、近くで別の店の施工を管理していたら、たまたま訪ねてきたんです。そこからトントン拍子に話が進みました。オーナーは若い時、デイビッド・ブーレーさんの店でマネージャーを務めており、寿司店に高級レストランのサービスを取り入れて大当たりしました。今は、4店持っています。」
「ジュエルバコ jewel bako」外観。
「立地は、もともと家賃が安い場所。20坪に35席。客単価は安くても100ドル。それが3回転します。2週間くらい前でないと予約が取れません。全てコースで高級ジャパニーズの走りです。ピークは1日売上1万ドル。家賃は月額5千ドルなので儲かります。家賃が高いとどう考えても儲かりません。」
「オーナーが毎日店に立っています。お客は彼に会いに来る。米国人が経営しているので、お客にとり安心。ネタの1個1個を魚図鑑で説明します。今は似たような店が増えたので競争が激しくなりましたが、週末は忙しいです。」
「内装にお金をかけない。費用を落として良いものを作って、スケジュールも守るのがポリシーです。シェフが自分の店を持ちたいなど、夢を実現したくて自分で店をやりたい人の仕事を受けています。日本料理と西洋料理は半々です。」
日本でも話題となったデザートバー『チカリシャスChikaLicious』(http://www.chikalicious.com/) 、有機野菜を使ったマクロビオティク・レストラン『ソウエンSOUEN』(http://souen.net/)など、きらりと輝く店を作っている。小規模企業を顧客に設計施工を行っている。
「チカリシャスChikaLicious」の千加・ティルマン氏。米国人の夫と共同経営。
夜10時でも、店内でお客がウェイティング。
通りを挟んだ向かいにも2号店を出店。
「飲食店は今は儲かっている感じじゃない。どれだけ家賃やフードコストを抑え、お客さんの回転率を上げるか。魚は金額が合わない。ベジタリアンもどこどこの野菜を使わなければならず、デリバリーコストも高い。ステーキー、ハンバーガー、ピザの方がコストが安いんです。」