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「えびす」は「牛角」と同年に誕生した。
〜100円焼肉「えびす」が首都圏進出。日本一の伝説のレストランチェーンを創る。〜(3−1)
勘坂康弘氏 株式会社フーズ・フォーラス 代表取締役社長

2010.12.12
石川県金沢市を本拠地に、低価格焼肉チェーン「焼肉酒家えびす」を北陸3県で16店、神奈川県で4店、計20店を展開するフーズ・フォーラス。2020年までに同店を日本全国で300店にする目標を掲げている。社長の勘坂康弘氏が目指すのは、「伝説」のチェーン。その意図を探るため、金沢市内の本社を訪ねた。3回シリーズ。レポートは安田正明。


勘坂康弘氏。

「えびす」は「牛角」と同年に誕生した

 100円焼肉「焼肉酒家 えびす」は今年7月、神奈川県横浜市旭区上白根町に首都圏初進出を果たした。フード全45品の内、「塩ダレトントロ」「塩ダレ豚バラ」「塩ダレ若鶏」「塩ダレポンジリ」「上シロ」「鶏皮」の6品を100円(税抜)で提供。他に、カルビやロース330円、レバーやトントロ190円といった低価格メニューが並ぶ。しかも、内外装はスタイリッシュで非日常的。家族連れを魅了している。その後、横浜市青葉区若草台、藤沢市湘南台、相模原市緑区橋本にオープンさせ、神奈川県で既に4店舗を展開するに至った。


「焼肉酒家 えびす」はスタイリッシュで非日常的な焼肉店。

 勘坂氏は1968年、富山県生まれ。大学卒業後、2年間のサラリーマン生活を経て、外食での起業を決め、地元の富山県高岡市で「えびす」1号店を97年5月にオープン。

「当時流行っていた焼肉に目をつけました。『焼肉さかい』など安い焼肉チェーンが流行っていました。地元でもアップルグリムの『カルビ牧場』が人気でした。友人の父親に地元の和牛専門の焼肉店によく連れて行ってもらっていました。そこと価格も味も違う。何でこんなので流行っているんだろうと思いました。僕は美味しい焼肉をアップルグリムの値段で、大学時代にバイトしたディスコで培ったサービスを付けて提供すれば楽勝で行けると確信しました」と勘坂氏。

 食肉と焼肉店経営を行う企業で10ヶ月間働きノウハウを取得した上で、「えびす」業態を作り上げた。業界誌の焼肉特集を片手に、入場料を取る「マルキ市場」や、「焼肉さかい」「一番カルビ」「からし亭」をベンチマーク。カルビ480円など500円以下のメニューで構成し、客単価は2200円。当時としては画期的に安かった。

「牛角」が東京・三軒茶屋で誕生したのは1997年で、同じ年だ。前身となる「七輪」が96年にオープンし、その翌年「牛角」と店名を変えた。

「1号店はうちの近所に出店し、両親にも働いてもらいました。店を増やすためにお金を作ろうと、両親に無給で働いてもらったんです。初日は17時のオープンでお客様が20、30組行列していました。肉が無くなり、19:30にオーダーストップになってしまいました。」

「2200円で原価率35%。家賃は12〜3万円。アルバイトしか使ってないので、月400万円ほど利益が出ました。このまま1店で10年やろうかなと一瞬思いましたね(笑)。その前までは金を貯めるために月1万円の生活をしていましたから、狂いそうになっちゃった(笑)。」

 98年9月に有限会社フーズ・フォーラスを設立し法人化。1号店から2年後の99年3月に2店目を富山県富山市にオープン。そして、富山・石川・福井の3県で順調に店数を伸ばし、2009年10月に16店を達成。北陸での出店余地が無くなった。

 そして、09年12月から始めたのが100円焼肉。それを武器に10年から首都圏への出店を始めた。神奈川県を首都圏初進出に選んだのは、人口に対して郊外型の店数が少ないから。


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき)  2010年12月3日取材