フードリンクレポート


<マルシェ・ジャポンを知る>
アットホームな地元密着型マルシェ、
「マルシェ・ジャポン ヨコハマ・カワサキ」
(神奈川県/横浜市都筑区/パルスポットセンター南)

2010.3.15
「マルシェ・ジャポン・プロジェクト」の現況を追うシリーズ、今回はヨコハマ・カワサキプロジェクト。ヨコハマ・カワサキ地区は「みなとみらい54街区(MM54区)」「パルスポットセンター南(センター南)」「ラチッタデッラ川崎」「二俣川駅構内」の4箇所で毎週水曜と金〜日曜の合計4日間移動して開催される。都心とは違うアットホームな雰囲気満載の神奈川県のマルシェの様子をセンター南駅前で取材した。


「みなとみらい54街区(MM54区)」「パルスポットセンター南(センター南)」「ラチッタデッラ川崎」「二俣川駅構内」の4ヶ所で開催。

アットホームな雰囲気が最大のウリ


マルシェ内。

 横浜市営地下鉄、センター南駅を降りるとすぐに緑色のテントが目に入る。東京都内のマルシェに比べて派手さはないがコンパクトにまとまっている駅前のマルシェ。のぼりなども見受けられほのぼのした雰囲気が感じられる。住宅地が隣接するここでは主婦やシニア層の来店が多く、「日曜はここ」と決めて通う固定客も少なくない。生活導線の途中にマルシェを置くことが、利用者にとっても主催者にとっても利便性が高い。運営するのは株式会社NKB(本社・東京丸の内)で交通広告を中心に扱う広告代理店である。元々駅周辺事情の情報を多く持ち、交通関連企業とのつながりもある背景の中、この会場も選ばれた。


運営スタッフ。前列中央が会場運営責任者の大圃孝之氏。

 会場内には赤い揃いのジャンパーを着たスタッフが目に付く。全体管理のスタッフで開催時間中、まんべんなく参加店舗やお客様に声を掛ける様子が伺える。同マルシェは、昨年9月のスタート時、それほど多くなかった出店者であったが、そこから始まりスタッフ全員で一緒に盛り上げてきた。現在では毎回20店舗ほどの参加があり、お客様も1500人程訪れる。

 また、ここのマルシェでは毎回運営スタッフと参加店舗全員で朝礼を行うという。目的は「こちらにない野菜もこちらの店舗であれば扱いがある」「(それぞれの)店の本日の一押し商品」等の情報を全体で共有するためである。マルシェに来たお客様全員にマルシェをトータルで楽しんで満足して欲しいという願いからだ。そもそも生産者自身が自分の作った野菜に適正価格を付け、直接消費者に手渡しその価値を知ってもらうという基軸コンセプトのある「マルシェ・ジャポン・プロジェクト」。「マルシェ内で価格競争やデフレを起こさずに1つ1つの商品の適正な値付けを行いお客様に納得してお買い上げいただきたい。」と運営責任者の大圃氏は語る。「全体でひとつの店舗」を基本コンセプトに「マルシェ・ジャポン ヨコハマ・カワサキ」はチームワークとアットホームな雰囲気が最大の特徴といえる。


地元とのコミュニケーションを大切にしたい

 地元とのコミュニケーションを大切にしたいというのもコンセプトのひとつ。川崎や横浜市内で店舗をもつ、地元ならではのお店もマルシェに並ぶ。洋菓子工房「マカデミア」は川崎産の素材を中心に使う洋菓子のお店。ホールで売られるチーズケーキはお店のある川崎市宮前区の名前から「みやまえ牧場」と名づけられた。どこか懐かしい手作りの味とふんわりとした食感が人気。


洋菓子工房「マカデミア」(川崎市宮前区 松永さん)。

 シフォンケーキ専門店の「横浜シフォン」は横浜市青葉区にて、インターネットショップでシフォンを売っているお店。毎週土曜は工房にて直販も行い、マルシェがスタートしてから土曜日は二俣川駅構内、日曜日はこのパルスポットセンター南の会場で販売をしている。オーガニックで安全にこだわった商品はパソコンを使い慣れないお客様にも、マルシェを通して手渡しで届けられる。


横浜シフォン(右はオーナーパティシエの田原こずえさん)。

 横浜市青葉区からの「さくら工房」は女性4人で運営している一年ほど前に始めた会社。安心・安全な食材や製法にこだわり、その季節限定の旬の果物や野菜をつかったシフォンケーキなどを販売している。糖度13度の益荒男ほうれん草を使用したシフォンは特におすすめ。又同じくマルシェに参加している「ボニカ・アグリジェント(本社・港区赤坂)」と、マルシェをきっかけにつながりができた。そちらのドライバジルを使用した「バジルのシフォン」も作っているが香りがよく好評。


女性4人で運営している「さくら工房」。


埼玉県三郷市から美味しい野菜を届ける「ボニカ・アグリジェント」。


三浦野菜が人気

 ここのマルシェでは採れたての三浦野菜が多く見受けられた。マルシェスタート時に、生鮮類の販売出店者を募るため神奈川県の農家さんへ、参加のお声掛けをしていったという。当初マルシェジャポンプロジェクトの価値を地元の生産者の方々になかなか理解していただけず出店者集めに苦労した。その一方で神奈川県の南東部、三浦半島で生産される三浦野菜を扱う農家さんは反応がよかった。

「川ばた農園」(三浦)の野菜は、パッケージなどをせずに手にとってその新鮮さがわかるような陳列が目を引く。この日の一番人気はキャベツと白菜。大きくて重いので、やはり都市型マルシェでは難しい商品。近隣の来店者が多いこのマルシェでは躊躇せず手にとることができる。


川ばた農園の三浦野菜。


川ばた農園のキャベツと白菜。

 マルシェ入口近くの「高梨農園」でも三浦半島の野菜を大量に購入する個人客が目立って見受けられた。ここのマルシェは都心型のマルシェにくらべて特に高いと感じる値付けもなく新鮮な野菜が買いやすく、週一回の固定客を確実に増やしている。


高梨農園の三浦野菜。


今後のマルシェ・ジャポン ヨコハマ・カワサキの展開

 4月以降は国からの助成金がなくなり、全国のどのマルシェも独自運営となる。「マルシェ・ジャポン ヨコハマ・カワサキ」は運営会社が食関連の業者さんとのお付き合いが多いなど、独自のリレーションを活かしていく。各社からの企画提案を積極的に受入れ、単に素材を置くだけでなくそれを使った調理法の展示や実際の調理による飲食スペースも設けたいと考えている。また「地元に根付いたマルシェ」という点では、町の人々がより集まる「祭り」などの催しにフットワークよくマルシェを移動させイベント的にマルシェを開催させたいという構想もある。地元の人々との接点を様々な場面で増やしていきたいという。


【取材・執筆】 国井 直子(くにい なおこ) 2010年3月1日執筆