フードリンクレポート


デビュー元年「パクチー鍋」。
〜「鍋はおうちで食べるもの」?!シーズン到来、この冬「外食」でこそ食べたい鍋は〜(5−4)

2010.11.4
鍋の美味しい季節が到来、各店ではオリジナル鍋が続々と登場し始めている。ぐるなびのアンケート調査ではこの冬最も食べたい鍋は「ラー油鍋」だという。過去にも「トマト鍋」「カレー鍋」「タジン鍋」などが話題をさらった年もあった。今年はどんな鍋を「誰と」食べたいか。おうちで食べる鍋とは一線を画す「外食」でこそ食べたい鍋をリサーチ取材した。5回シリーズ。レポートは国井直子。


「中村 玄」のパクチー鍋 。

デビュー元年「パクチー鍋」

 恵比寿の「中村 玄」は隠れ家的雰囲気と、会津地鶏を使った本物のぷるぷるコラーゲンスープにこだわったコラーゲン鍋が人気のお店。今年でオープンから丸13年を迎える。元々評価も品質も高いぷるぷるコラーゲンスープをさらに進化させるべく今年の鍋はどうするか、検討段階で挙がったのは「すごく好きか、拒否するほど嫌いか」どちらかに寄ったとんがった味ではないかということ。

 同店を運営する株式会社イイコの社長、横山貴子氏が無類のパクチー好きであったこともあり、案として挙がったのは「パクチー鍋」。料理長の長谷川佳央氏は徹夜で研究し、その二日後には形にしたという。


料理長 長谷川佳央氏。

 ベースになるコラーゲンスープは、今まではぷるぷるのゼリー状だったが今年からはコラーゲンが溶けたサラサラの状態で提供する。もちろんこれも冷やせばゼリーになるのだが本物であれば「見た目」にこだわらなくてもと伝わるはずと、敢えてサラサラの状態を選んだ。鍋の形状も平べったい鍋よりも「トッピングしよう感」を出すためのこのセレクト。


トッピング薬味 パクチーペースト(200円)。


トッピング薬味 トムヤムペースト(200円)。

 コラーゲンのスープ地にパクチーペーストが溶け込んでいて、そこへフレッシュのパクチーをどっさりとトッピング。しゃぶしゃぶした位に軽く火が通ったところでいただく。味わいは意外とあたりがやわらかく驚きだ。もっとパクチーを強く感じたければ更に「パクチーペースト」を追加、アジアンテイストを強くしたければ「トムヤムペースト」といった具合に「味変薬味」は全8種類(各200円)が用意されていて一鍋で色々と楽しめる。


玄鍋相関図。

 来店動機は「隠れ家」「入口」「この空間」が先で、やはり「料理が一番」ではないのかなという懸念が以前からあったという横山社長。「『インパクトのある一品』が欲しかった、空間だけじゃ弱い。もう2回3回ときたくなる味、高級感ある『鍋』よりもどんどん足したり色々楽しめる『鍋』を提案したかった。パクチー好きなコアな人を狙いたい」とメニューコンセプトをまとめた。「半歩先に食探し」という理念に基づいた変わらない見せ方・味への探究心がつまった一品といえる。
 
 シンプルで深味のある基本のコラーゲンスープ「玄鍋」こそが「中村 玄」に来たのであれば絶対に食べておきたい味で且つ安心できる味、「再来店するのであればやっぱり『玄鍋』に戻るかな」とも思った。しかしパクチー鍋の本当の実力が分かるのは食べたその日のその瞬間では全くなくて、実にその1〜2週間後。インパクトを狙った「印象に残る鍋」は狙い通りに刺さっている。

■「中村 玄」
東京都渋谷区恵比寿南1-18-11 西田ビル201
電話:03-3711-5897
http://www.e-e-co.com/index.html


【取材・執筆】 国井 直子(くにい なおこ) 2010年10月29日執筆