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モスとミスドの実験的コラボ店「モスド」。広島で進化中。
〜新業態開発に、商品拡販に。広がる外食の企業コラボ〜(6−5)

2011.3.4
外食の経営手法として全く別の企業と企業、店舗と店舗が、協力し合って1つの店を立ち上げたり、1つの店の中で別の店の商品を売ったりするケースを、ちょくちょく見かけるようになった。知恵を出し合い、お互いの長所を活かし、欠点を補い合う。外食同士のコラボの実情を取材してみた。6回シリーズ。レポートは長浜淳之介。


「モスド」 外観。「イオンモール広島府中ソレイユ」内に誕生。

モスとミスドの実験的コラボ店「モスド」、広島で進化中

 ファーストフードの異業種合同店舗として話題となったのは、「モスバーガー」と「ミスタードーナツ」が合体した「MOSDO(モスド)!」。

 第1号店は2010年4月23日、広島県府中町の「イオンモール広島府中ソレイユ」内に誕生。反響は大きくそのオープン日は長蛇の列ができた。5月には当初見込みの160%を達成、予想を上回る好調なスタートを切った。

 何よりも全国に知られた有名ファーストフード同士のコラボであり、ハンバーガーとドーナツが一緒に食べられるのが好感を持って迎えられた。早速シナジー効果は出た。

 両社広報に確認したところ、扱っている商品は違っても同じファーストフードの分野。「モスバーガー」を経営するモスフードサービスと、「ミスタードーナツ」を経営するダスキンのトップをはじめ上層部は、現職だけでなく過去にも面識があり、経営理念などで共感する点が多かったのが、新しいコラボレーションブランドを共同開発する動機になった。


「モスド」は広島が1号店。

 実際、両社は2008年に資本提携を行っており、モスフードサービスの持つダスキン株式は発行済株式総数に対する割合1.5%、ダスキンの持つモスフードサービス株式は発行済株式総数に対する割合4.1%となっている。

 その際に、販売促進手法の相互利用、オリジナル商品の共同開発、衛生管理・品質管理のノウハウ共有、共同購買によるコスト削減、共同配送による物流効率化、海外を含めた共同出店の展開、新業態の共同開発を、それぞれ進めるとしていた。

「モスド」は資本提携の時に行うとしていた共同事業構想の具体化の1つで、特に新業態の共同開発にあたるものと言えよう。

 立地する「イオンモール広島府中ソレイユ」は広島駅より北東2キロメートルにあり、人口117万人を擁する政令指定都市の広島市と、行政は異なるが商圏は同一。2004年にキリンビール広島工場跡にオープンしており、キリンビアパーク広島の敷地内にある。当初は「ダイヤモンドシティ・ソレイユ」と名乗っていたが、07年にダイヤモンドシティがイオンモールと合併して、現在の名称に変更された。


イオンモール広島府中ソレイユ。

 広島駅から1駅目の山陽本線天神川駅より徒歩5分、また広島駅新幹線口から無料シャトルバスも出ていて交通の便もいい。駐車場は約4300台を停めることができ、広島県内のみならず全国でもトップクラスの集客を持つショッピングセンターだ。

 第1号店にこの地が選ばれた理由には、「モスバーガー」、「ミスタードーナツ」ともにファミリー層に強みがあり、この層へのさらなる浸透を狙ったことがある。席数は68席。目標の月商は1300万円。

「モスド」は外観、内装ともに、両社の既存店舗とは異なった「自然共生型未来空間」をイメージしたデザイン。清潔感ある白を基調とし、水をイメージしたガラスモザイクタイルや、花びらをイメージした赤いチェアーを配している。制服もまた「自然共生型未来空間」のテーマに沿った、オリジナルのものを着ている。


店内。


モスド制服とモスドセットの例。

 一方でレジは当初「モスバーガー」、「ミスタードーナツ」に分かれていたが、7月1日よりオペレーション変更が行なわれ、店内レジが統一された。

 厨房は「モスバーガー」、「ミスタードーナツ」に分かれていて、店長もそれぞれで立てている。やはり企業文化も扱っている商品も違うので、客席の空間は共有であっても裏方はそうもいかないようで、社員やアルバイトの研修も別々に行っている。

 そうした中、コラボ店ならではの「MOSDOセット」(580円)という、ハンバーガーとドーナツを同時にドリンク付きで楽しめるメニューもある。

「MOSDOセット」の対象商品は、「モスバーガー」側がモスバーガー、テリヤキバーガー、サウザン野菜バーガー、具だくさんミネストローネ、モスのミモザサラダの5品。7月より「モスド」オリジナルの「海鮮お好み焼きバーガー」(後述)も加わった。

「ミスタードーナツ」側は当初ポン・デ・リング、フレンチクルーラー、D-ポップのみだったが、7月1日よりパイ以外の全ドーナツに拡大され、提供方法も対面からセルフ式に変更された。
 ドリンクは当初レジによってモスとミスドのどれかが選べる方式だったが、これも7月1日より「MOSDOドリンクメニュー」として統一された。

 このように「モスド」では両社の交流が徐々に濃密になるに従って、オペレーションの変更なども行われており、まさに実験的で現在進行形のコラボといった感じだ。

 また、オープン時より「ミスタードーナツ」では、広島銘菓もみじまんじゅう風ドーナツ「もみド」、ドーナツの上にアイスとソースを乗せた「ドーナツパフェ」、7月1日からご当地ドーナツ第2弾としてポン・デ・リングの生地にお好み焼き風ソースをコーティングした「ポン・デ・お好み」や、タマゴたっぷりの生地にストロベリーチョコをコーティングしカラーチョコスプレーをトッピングした「カラフルリング」(147円)といったユニークな商品を販売していたが、現在は「モスド」のみの限定商品は「ポン・デ・お好み」のみである。


お好み焼き風のポン・デ・お好み。

「モスバーガー」では7月15日より、「海鮮お好み焼きバーガー」(320円)という海の幸(帆立、イカ、海老)と野菜(タマネギ、ニンジン、枝豆)が入ったかきあげに、紅ショウガ、キャベツ、鰹節をトッピング。広島のイメージの1つである「おたふくソース」にマヨネーズで仕上げた、ご当地風ハンバーガーを「モスド」限定メニューとして発売した。チーズ入り(350円)もある。こちらは販売継続中である。


海鮮お好み焼き風バーガー。

 両社では今のところ広島の「モスド」を通じて、交流を進めている印象があり、今のところ経営統合などは考えていないそうだ。

「モスド」以外では物件情報の共有、単発の共同販促なども効果が上がっているようで、順次シナジーをはかれることは実現させていく模様だ。

 ハンバーガー業界では「マクドナルド」のカフェの市場をも脅かすコーヒーの低価格路線が席巻している感があり、ドーナツ業界にも脅威となっている。

 しかも、ハンバーガー業界では「佐世保バーガー」のようなご当地バーガー、高級バーガーが好調で、良い素材で手づくり感ある「モスバーガー」も安閑としていられなくなった。ドーナツ業界でも「クリスピー・クリーム・ドーナツ」、自然派ドーナツ、生ドーナツといった新興勢力が台頭し、「ミスタードーナツ」の地位も絶対的でなくなってきた。

 加えて、ここに来ての小麦粉、コーヒーなどの原料高もあり、さらなる店舗・商品・経営力の強化、スケールメリットの追求を行う必要性を両社ともに感じていると理解していいだろう。

「モスド」は広島での検証を踏まえ、多店舗化が計画されている。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ)  2011年2月24日執筆