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“男のスパゲッティー”を開拓したナポリタン専門店「パンチョ」
~急成長!渋谷系がっつり麺飯店~(5-1)

2011.6.26
流行に敏感な街、渋谷で近年台頭が著しいのが、ラーメン、うどん、スパゲッティ、丼、チャーハン、カレーなどの単品で勝負する麺飯店。提供時間が早く、メガ盛当たり前のボリューム、かつ既存チェーンにない付加価値の高い商品が特徴。日本型ファストカジュアルの誕生をも予感させる、渋谷系がっつり麺飯店の魅力に迫りたい。5回シリーズ。レポートは長浜淳之介。


ナポリタン目玉焼き(700円)。渋谷系がっつりを代表するメニューだ。

・“男のスパゲッティー”を開拓したナポリタン専門店「パンチョ」

 京王井の頭線渋谷駅から道玄坂に出る抜け道にある、ナポリタン専門店「パンチョ」。昔、懐かしい喫茶店風のナポリタンをがっつり食べさせる店だ。


パンチョ 外観

 オープンしたのは一昨年11月。業績好調でその後、御徒町、神田、池袋、吉祥寺にチェーン化されている。6月20日には東急ハンズの手前に、渋谷2号店も誕生した。

 経営は吉祥寺を拠点に、「とりとん」、「ペコリ」などの居酒屋を展開するファイブグループで、「パンチョ」は新業態。同時期に2つの店舗物件が見つかり、そのうち1つは新しいことにチャレンジしようと、ほとんど思い付きで始めたらしい。それが思いがけないヒットとなったそうだ。

 オーダーは券売機で買ったチケットをカウンターに出して席で待つスタイルで、ラーメン屋のような感じだ。こういうスタイルのスパゲッティー専門店で、東京でチェーン化できるほど成功した例は過去あっただろうか。その1号店が渋谷から生まれた事実は重要だ。


ラーメンのように券売機でチケットを買う。

 基本となるメニューの「ナポリタン」は650円。「改めてナポリタンはうまいと言わせたい」がキャッチフレーズ。具はソーセージ、ピーマン、タマネギとシンプルで、缶詰のトマトを加え、トマトケチャップで炒めていく。トマトケチャップを多めに使った甘めの味付けで、昭和の喫茶店でよく出されていたナポリタンをイメージしている。


パンチョのメニュー。シンプルなナポリタンとミートソースだけの商売。


 麺は上品な細麺ではなく、極太の茹でおき麺をあえて使用して昔っぽさを表現している。あとはトッピングによってプラス料金が発生し、断然1番人気の目玉焼き乗せは700円。(冒頭写真)

 とろけるチーズ乗せ750円、厚切ベーコン乗せ850円、ハンバーグ乗せ850円、全部乗せ1200円となっている。また、「ミートソース」も650円で同様なトッピングができる。プラス100円でサラダ、プラス80円でドリンクバーも付けられる。


ドリンクバーはプラス80円。

 小盛り、並盛り、大盛りは全て同一料金で、がっつり食べたい人にはうれしい価格設定。毎日のように来る常連も多いことからも、牛丼チェーンやマクドナルドのような激安ではないが、1000円以内で食べられるB級グルメとしては満足度が高いことがわかる。

 しかも「パンチョ」の満足度の高さの一因として、並盛りで400グラムと普通の店では大盛りのボリュームの設定がある。小盛りでも300グラムで、これが通常の並みの大きさがそれよりやや多いくらい。女性ならたいていはお腹いっぱいになってしまう。大盛りともなると600グラムにあり、凄い分量である。それでも大盛りを選ぶ人が特に初回来店する人は3分の2に上る。渋谷の麺飯店では、大盛りという言葉に引かれる人はそれほど多いのだ。


大盛りは麺の量が600グラムもある。大盛り無料、粉チーズかけ放題はがっつり派には嬉しい。

 テーブルにある粉チーズはかけ放題。1日に2回ほど詰め替えないと追いつかない。タバスコもたっぷりかける人が多く、大サイズのビンがテーブルに乗っている。

 顧客はサラリーマンが主力で、特に平日の昼は8~9割を占める。年齢層は40代、50代が半数を占め、“男のスパゲッティー”という新しいジャンルを開拓したと言えるだろう。だいたいが一人で来てさっと食べていく。女性の顧客は1割もいないが、中には1人で来て男性並みにがっつり食べて帰る人もいる。

 若い人は基本、夜に団体で入って来るケースが多い。店内は22席あるが、昔の喫茶店を意識して赤いチェックのテーブルクロスを使ったり、マンガの本を置いたりしているので、特に若い人に長時間居座る人も増えてきた。そのため満席の時間待ちに諦めて帰る人も多く、回転率が悪くなっているのが課題としてあるそうだ。カウンターだけにした御徒町店では、その課題が克服されているとのこと。それでも1日に10回転は堅く、顧客単価は750円。十分な繁盛店である。


昔の喫茶店をイメージした内装。


1980年代のポスターが壁にペタペタと貼ってある。


入手困難なジャイアント馬場さんのサイン入りポスターやおニャン子クラブのポスターも。

 ランチの時間などは厨房でフライパンを炒めっ放しの状況で、繁盛する焼そば店のような力仕事の調理風景が、オープンキッチンで見られる。そうした臨場感もこの店の魅力だ。

 店内の内装は1980年代をイメージしてつくられており、当時の貴重なアイドル、プロレス、マンガのポスターなどが壁にペタペタと貼られている。それを眺めているだけでも楽しい。BGMもまた、80年代のアイドルなどが歌う歌謡曲が主に流されており、当時の気分にタイムトリップした緩い雰囲気でがっつり食べられる。

 ナポリタンという古くて新しい商材で、“男のスパゲッティー”を構築した「パンチョ」。渋谷系がっつりを代表する店となっている。

【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2011年6月25日執筆