羽田の路面店は空港勤務者、菜食、江戸前で新規客開拓。
〜羽田空港のダイニング、新国際線ビル開業で話題沸騰〜(6−6)
京急穴守稲荷駅前 マクドナルドもあり鳥居の奥が改札になる。
・羽田の路面店は空港勤務者、菜食、江戸前で新規客開拓
空港の施設以外の羽田の飲食事情はどうなっているだろうか。
京浜急行空港線沿線の穴森稲荷、大鳥居といった空港島の外部にある、昔からの羽田地区は羽田空港の拡大によって、空港勤務者の移住が進んでいる。つまり国際感覚を持った高感度の人たちが住む、高層マンションなどが増えているのである。
人口が増えることにより飲食需要も増える。羽田は路面店にとってこれから成長性が見込める有望エリアなのである。
穴守稲荷駅より線路の南側を空港方面へ5分ほど歩いた住宅街にポツンと、「油揚げ」という名の一軒のカフェがある。自宅の1階を店舗に改装して営業している。
「油揚げ」 外観。羽田の住宅街にあるカフェ。
自宅を改装して店舗にした。赤ん坊が寝転べるのでママからは好評。
オーナーの松田ゆりさんは台東区谷中にあった「谷中カフェ」を約7年経営した後、2009年4月に羽田に移転してきた。「なぜ羽田だったのか」と聞くと、羽田の出身だからと明確な答えが返ってきた。「前の店は忙しすぎたので疲れてしまって、もう少しゆとりがほしかった」とのこと。
当時「谷中カフェ」は谷根千の代表店となっていて、非常に成功したのでもったいない気もするが、あまりに多忙だとスローライフとは程遠くなるかもしれない。「油揚げ」の店名は稲荷からの連想で、油揚げを使った料理が常時提供されるわけではない。
メニューは新鮮な季節の野菜を使った料理で、肉、魚、卵、乳製品といった動物性タンパクを使っていない。ベジタリアンの中でもビーガンと呼ばれる分野である。「谷中カフェ」では魚料理を出していたこともあるので、より菜食に徹底した。
野菜は茅ヶ崎と埼玉県三芳町の契約農園から有機野菜が直送されてくる。庭でもハーブ、プチトマト、ニラ、ゴーヤ、ピーマン、ハツカダイコンなどを栽培しており、家庭菜園ではあるが店で出た生ごみを堆肥に変えて循環型の農法を行っている。
食事はランチが800〜1000円で3種類。マクロビ水ぎょうざ、ベジミートからあげなどといった定食メニューがある。
ドリンクは無農薬のコーヒーや緑茶、りんごジュースなどがあり、デザートはアーモンドのムース、玄米アイスなどいずれも自然食である。
夜はたんたん風ラーメン、ジャージャー麺、つけ麺、玄米チャーハン、水ぎょうざなど中華風のメニューが多い。もちろん野菜サラダもある。お酒も、オーガニックビール、自然酒、玄米焼酎などを置いている。
たんたん風ラーメンまたはジャージャー麺をメインにしたコース(3150円)と、麺か玄米ぞうすいで締める鍋のコース(2840円)もある。
たんたん風ラーメン(880円)は濃厚な練りゴマベースの味でベジラーメンファンにリピーターが多い。
顧客は年齢を問わず圧倒的に女性が多く、カップルも目立つ。ランチ需要が中心でもう少し夜に入ってくれたらといったところ。
男性の顧客では空港関係者が宗教の関係で、何らかの肉が食べられない外国人を連れてくることが多く、空港ビル内にはそういった需要を満たす店がないので喜ばれている。また、精神世界に興味がある人、野菜のみを使うベジラーメンばかりを食べ歩いているマニア、「谷中カフェ」の頃からのファンもやってくる。地域的には都内と違って自然食の店が少ない川崎、横浜方面の人もリピーターには多いそうだ。
土曜朝市、有機農園のお手伝い、ライブ、スピリッチュアルお茶会など地域活性とファン交流を考えた活動も「谷中カフェ」と同様に行っている。
自然食品などの物販も行う。
松田さんに「羽田はどういう町か」と質問すると、「先祖代々住んでいる人が多いし、一言で言うと“村”」だそうだ。しかしその“羽田村”にも国際化の波は及んできている。
「海外にはベジタリアンの人も多いし、宗教的に肉が食べられない人もここなら安心です。空港の近くに自然食、ビーガンの店があることをもっと広く知ってもらいたい」と、国際化の進展を大きなチャンスと見ている。
大鳥居駅より環八通りを越え北へ3分ほど。生活感ある商店街より入った路地に今年9月にオープンしたのがイタリア田舎料理の店「リストロ・ジン」。
「リストロ・ジン」 外観。
★続く。
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