メディカル・レストラン
『健康×美食ラボ』が送るメディカルフードレポート
『健康×美食ラボ』所長:医学博士 岡野喜久夫
第17回「はいさい」
(沖縄料理、東京・新橋)
2008.4.15
現役の医師が、健康になれるグルメ情報をお伝えします
所長のクリニックは開院して11年目に入りました。その間どんなに体調不良になろうがともクリニックを休診にした事はありません。しか〜し、日韓ワールドカップサッカーの時には半日休診にして静岡まで観戦に行っちゃいました。サッカーは所長の大好物なんでーす(笑)。
ところでサッカーってのはもっとも点が入らないスポーツとも言われており両チームの攻撃の99%は失敗の繰り返しなんですよね。その失敗のてんこ盛りを我々は90分間ずっと観ているんです・・ですのでサッカーの面白さは試合の勝ち負けや美しいゴールだけでなく、一瞬の選手の技術力や運動能力に感動する事なのですね。
サッカーの攻撃側の選手の「技術」の中で一番大切なのは何でしょう?(守備力は個人技以外のシステムなどの重要度が高いので別にします)キック力とその正確さ?足の速さ?視界の広さ?ゴールへの嗅覚でしょうか?勿論全て大事な能力なのですがその中でもっともと言いますと・・私は「トラップ」だと思ってます。ポーンと飛んできた球を身体のどこかを使って一瞬に自分が蹴り易い所に止める技術ですね。これが出来てこそ瞬時に良いバランスで次のキックができるのです。そしてトラップの技術的延長にあるのがダイレクトパスだと思います。つまり飛んできたボールを止めるかわりにそのまま思ったところに運ぶ技術ですね。欧州チャンピオンズリーグレベルの試合を観て下さい。まるでピンボールの様なスピードでダイレクトパスの応酬が行われ、点が入らなくってもけっして観てて飽きる事がありません。
日本の選手はキックの技術はそこそこ素晴らしいと思うんです。だからこそ球がきちんと置いてあるセットプレーからの得点がほとんどなのですね。しかし。。。トラップ力が完璧ではないためパスを受けた直後に蹴ろうとしてもバランスがイマイチで〜結果、次のパスやシュートが上手く行かないのではないでしょうか。キックやシュートをする前の段階で勝負は既に決ってるんですね。
えへへ。。。この場に乗じてすっかりサッカーの技術論を語ってしまいましたが、サッカーなどのスポーツに限らずプロの世界では良い仕事をするためには「センスや身体能力」だけでなく、地味で目立たない「技の練習と鍛錬」が必要なのは当たり前ですよね。例えばそれが一流の職人や料理人の世界で一流になるのには何十年もの歳月が必要です。しかしスポーツの世界ではトップで活躍出来る期間はあまりにも若い時の数年に限られます。何十年も待っている時間的猶予がないのです。つまりワールドクラスレベルのサッカー選手を日本国で育成するにはもっともっとガキの頃からトラップなどの地味な練習を営々孜々と行う必要があると考えているのはあっしだけではないと思うんですけどね。。。
さてと、今回のメディカルレストランは「沖縄家庭料理」です。所長のクリニックから徒歩数分の所にあるお店で、沖縄の方は元よりその味に魅かれて遠くから再訪される人も多い本物の沖縄料理が味わえる名店です。沖縄料理はサッカーのトラップ同様みんな地味系ですが、ここのご主人はサッカー界で言えばブラジルレベルの力量をお持ちです。彼からの鋭いダイレクトパスをしっかりと胃袋でトラップしてみたいと思いまーす。
ところでサッカーってのはもっとも点が入らないスポーツとも言われており両チームの攻撃の99%は失敗の繰り返しなんですよね。その失敗のてんこ盛りを我々は90分間ずっと観ているんです・・ですのでサッカーの面白さは試合の勝ち負けや美しいゴールだけでなく、一瞬の選手の技術力や運動能力に感動する事なのですね。
サッカーの攻撃側の選手の「技術」の中で一番大切なのは何でしょう?(守備力は個人技以外のシステムなどの重要度が高いので別にします)キック力とその正確さ?足の速さ?視界の広さ?ゴールへの嗅覚でしょうか?勿論全て大事な能力なのですがその中でもっともと言いますと・・私は「トラップ」だと思ってます。ポーンと飛んできた球を身体のどこかを使って一瞬に自分が蹴り易い所に止める技術ですね。これが出来てこそ瞬時に良いバランスで次のキックができるのです。そしてトラップの技術的延長にあるのがダイレクトパスだと思います。つまり飛んできたボールを止めるかわりにそのまま思ったところに運ぶ技術ですね。欧州チャンピオンズリーグレベルの試合を観て下さい。まるでピンボールの様なスピードでダイレクトパスの応酬が行われ、点が入らなくってもけっして観てて飽きる事がありません。
日本の選手はキックの技術はそこそこ素晴らしいと思うんです。だからこそ球がきちんと置いてあるセットプレーからの得点がほとんどなのですね。しかし。。。トラップ力が完璧ではないためパスを受けた直後に蹴ろうとしてもバランスがイマイチで〜結果、次のパスやシュートが上手く行かないのではないでしょうか。キックやシュートをする前の段階で勝負は既に決ってるんですね。
えへへ。。。この場に乗じてすっかりサッカーの技術論を語ってしまいましたが、サッカーなどのスポーツに限らずプロの世界では良い仕事をするためには「センスや身体能力」だけでなく、地味で目立たない「技の練習と鍛錬」が必要なのは当たり前ですよね。例えばそれが一流の職人や料理人の世界で一流になるのには何十年もの歳月が必要です。しかしスポーツの世界ではトップで活躍出来る期間はあまりにも若い時の数年に限られます。何十年も待っている時間的猶予がないのです。つまりワールドクラスレベルのサッカー選手を日本国で育成するにはもっともっとガキの頃からトラップなどの地味な練習を営々孜々と行う必要があると考えているのはあっしだけではないと思うんですけどね。。。
さてと、今回のメディカルレストランは「沖縄家庭料理」です。所長のクリニックから徒歩数分の所にあるお店で、沖縄の方は元よりその味に魅かれて遠くから再訪される人も多い本物の沖縄料理が味わえる名店です。沖縄料理はサッカーのトラップ同様みんな地味系ですが、ここのご主人はサッカー界で言えばブラジルレベルの力量をお持ちです。彼からの鋭いダイレクトパスをしっかりと胃袋でトラップしてみたいと思いまーす。
「はいさい」
(住所)東京都港区新橋3丁目3-3 新橋パイオニアビル5F
(電話)03-3507-8131
(営業時間)11:00〜14:00 17:00〜23:00
(定休日)日祝と第3以降の土曜日
さて、席に着きましょう。今夜の所長の夕食は、
1)地豆とうふ(じいまあみとうふ)
2)くーぶいりち
3)んじゃなばーサラダ
4)豆腐よう
5)なかみ汁
6)もずくの天ぷら
7)まーみなー
8)やきそば(ケチャップ味)
9)そーきすば
1)豆とうふ(じいまあみとうふ)
なんて美しい豆腐でしょう。そしてこのネッチリモチモチ感がたまりません。実はこれは落花生からできる豆腐なんですね。地面の下に出来る豆だから落花生の事を地豆と沖縄では呼ぶそうです。しかしこの美しい豆腐を作る作業は実は大変で、まずはこの落花生を擂り粉木ですってすってすりまくり完璧な滑らかな状態にする事から始まります。主婦の愛情と労力から生まれる舌ざわりと美しさなのですね。今晩はキックオフから良質の高蛋白&低脂肪料理ですね〜。ゴーヤチャンプルぐらいしか知らないラボスタッフ達は地豆とうふを一口含んだ瞬間にその食感にど肝を抜かれた様でした。
2)くーぶいりち
「くーぶ」とは昆布の事です。ご存知の通り、沖縄料理は豚肉&昆布ワールドなのでございます。そして昆布の旨味であるグルタミン酸は三大旨味成分の一つです(他はシイタケのグアニル酸と鰹節のイノシン酸)。グルタミン酸が主成分の「味の素」は世界が認めた調味料で「世界のナベアツ」ならぬ「世界のグルタミ」でござんす(笑)。ですので昆布のグルタミを活かした沖縄料理は数多くあるのですね。しかし所長は昆布その物をしゃぶるって事になりますと少しひいてしまいます。不味くはないのですが〜噛むとネチネチしてて歯にくっつくし。。。おでん屋さんでも敢えて注文は致しません。「味の素」だってその粒子をダイレクトになめると不味いっすよね。どうやらグルタミとは他の旨味成分とジョインすることでその実力を発揮する物質の様であります。そして面白い事にグルタミは昆布の様な海産物に多く存在するので、肉などの海産物でない食品との出会いがよろしいらしいのですね。男女間の異性の好みと同じでお互いに自分にない物を求めるのでしょうかねぇ(オゥモロ〜〜!)。
ところでこのいりち!今まで所長が人生で食べたあらゆるジャンルの昆布料理の中で最高の作品だと思います。沖縄料理法で「いりち」とはゆっくりと弱火で炒め煮をする調理法の事で、強火でザザッっと炒める「ちゃんぷる」と並んで調理法の双璧なんですね。くーぶいりちには昆布の他に棒かまぼこやニンジンなど数種類の野菜と豚肉が全て細〜く切って入っててテクスチャーも良く味付けも薄味で最高の美味しさでした。最初は高蛋白&低脂肪美味料理、そして次は食物繊維大盛美味料理!はっきり言いましてこの超健康美味料理二品の往復だけで大満足なんですが。。。取材ですからね〜どんどん先に進みましょう。
3)んじゃなばーサラダ
三品目はナんじゃがな?この「んじゃがな」とは沖縄の「にがな」と言う苦味のある植物です。この葉を細かく刻んでオニオンスライスやキュウリなどと和えてあります。んじゃがなにはビタミンとミネラルが豊富に入っててこの爽やかな苦さは・・・おとな限定のサラダとでも言いましょうか。沖縄で「やっぱりゴーヤは美味しいなぁ」と子供が言うと「お前もやっとおとなになったんだねぇ」と母親に言われるそうです。ゴーヤなどの美味しい苦さは大人だけの特権なんでしょう。本来、苦味は毒などの危険な味として回避されるべき味覚として我々の脳にインプットされております。その苦さを美味しいと感じるには何回も苦い料理を食してその食品の安全性を知り、その内に秘めたる深遠なる旨味を浴びながら脳の伝達系をリセットする必要があるのですね。
4)豆腐よう
てな話をしながら食べておりますと突然美味そうな豆腐ようが目の前に。キッタァーー!泡盛メチャメチャいっちゃうじゃん。皆様も見たことあるとは思いますが島豆腐を陰干しにして、泡盛と紅麹を混ぜた漬け汁に数ヶ月間熟成させた物ですね。紅麹は中国から渡来しており豆腐ようの起源は中国の腐乳だそうです。腐乳とは豆腐の漬物とでも言いましょうか・・中華粥などに入れるとコクが出てお粥がググッと美味しくなる一品なのですが、塩分の代わりに泡盛を入れて豆腐を熟成させるとまったりとして和風チーズの様な酒の肴が出来上がったと言う訳ですね。爪楊枝でチミチミしながら泡盛モリモリしてながらやっとハーフタイムを迎えました〜。
5)なかみ汁
さて、後半のしょっぱなは「なかみ汁」です。この「なかみ」とは豚の身体のなかみの意味で豚の胃と小腸がたっぷり入った汁物です。説明を聞くと飲み屋の「煮こみ」をついつい想像してしまいますが、意外や意外〜口に入れると完全にお吸い物なのであります。あっさりしてて臭みも何にもありません。それもそのはずでご主人の山川盛政さんにお聞きしますとこれは日常の家庭料理と言うよりめでたい時に出す特別な献立なんだそうです。
ご主人の山川盛政さん
臓物を掃除して周りの脂肪も取り去りピッカピカにして臭みを取り、昆布ダシと塩と泡盛で味を調えるそうですが内臓の処理は時間がかかると思います。究極のアッサリ系ホルモン汁ですね。この品は先日に予約をして本日のために用意をしてもらいました。もしもなかみ汁を食べたい時には常連になられて山川さんにおねだりするしかありませ〜ん(笑)。それにしても地豆、昆布、にがなと言い山川氏の「歩をと金に変える」その技には驚かされます。今まで他の沖縄料理店で食べてきた品々はいったいなんだったのでしょう。。。わかった。歩だ(爆)。
6)もずくの天ぷら
沖縄のもずくは有名です。もずくに多く含まれるフコイダン(昆布にも入ってます)は抗癌作用(ナチュラルキラーセルの増加)や胃潰瘍や胃癌の原因であるピロリ菌を減少させる作用などが言われておりますし、食物繊維とミネラル分やアミノ酸のアスパラギン酸とグルタミン酸も豊富。メディカル食材のセレブリティです。
しかしそのもずくを天ぷらで食べた事のある人は少ないのではないでしょうか?是非皆様にも食べて頂きたーい!このフワフワ感。マシュマロよりも柔らかいもずくですよ!食物繊維を微塵も感じないもずく!どうやってこの美味しさを作り出したのか山川氏に尋ねますと「あー。その天ぷら?え〜と。。普通は小麦粉を水でとくでしょ。水の代わりにビールでやるとふわっとなるんよ」。なるほど〜ビールの細かな泡が小麦粉に入り込んでこのフワフワ感をだしているんですね。是非セレブリティの皆様がご自宅のパーティーでこれを調理される際はシャンパンを入れて作ってみてください〜なんちゃって。
7)まーみなー
モヤシのチャンプルです。チャンプル入れずして沖縄料理は語れません。しかしあえてゴーヤチャンプルは外しました。あまりに当たり前ですもんね。もずくも単なるもずくの酢の物じゃあオゥモロ〜ないから天ぷ〜ら。そしてチャンプルもゴーヤじゃなくってモヤ〜シです。ゴーヤは身体にメチャ良いですが沖縄モヤシだって負けておりませんよー。沖縄モヤシは太くて短くてシャキシャキ感が素敵ですね。これに様々なお野菜を細く切りランチョンミートを入れて有ります。まさに家庭のお昼のお惣菜です。それにしてもどの品にも野菜がふんだんに混ぜ混ぜしてあります。野菜の総摂取量を考えますと前回のメディカルレストランで申し上げた理想の食比率の2:1:5より野菜の比率がはるかに多いかもしれません。沖縄料理の特徴として野菜類をあまり生で食しません。逆に生でないので量を多く摂取できるとも考えられます。つまり長寿食の沖縄料理を勉強しますと「野菜を生で食べる必要性はまったくなく、無理にサラダで食べる事は総体的な分量を多くとれないのでかえってマイナスになるのかもしれない。」と言う事実が浮かび上がって来ます。
8)やきそば(ケチャップ味)
やきそばはケチャップ味。これにもゴーヤなどのお野菜がタップリコと乗っております。使うは沖縄すば(ソバ)。そしてここにも最後にビールを隠し味で使用したんだそうです。きっとこれにも何か理由があると思って山川さんにお聞きしますと「あー。ビールねぇ。え〜と。。あんまり理由ないんよ。なんとなくかけてみた。」「あ〜あとねぇ。その海苔も大島ので昨日もらったのでちょっとかけてみた。」・・肩すかしとは正にこの事かぁ!!五十肩になっている所長には痛すぎる肩すかしぃ。。ま〜ね。このゆるさが良いんですよ。本来の家庭料理ってのはその場にある物を使ってササッと作るのが本当です。山川さんのお宅にお邪魔したつもりになって毎回少しづつ違う料理を楽しむのも一興かもしれません。
9)そーきすば
実はもう満腹のスタッフ達だったのですが隣のテーブルに運ばれてくるソーキスバ(そば)を見てしまい「あれ、食べたいよね〜」って誰かが言い出しました。ソーキとは沖縄では豚のスペアリブの事なのですがソーキならぬソノキになって「えんちょ〜せんにとつにゅー!」(ゆるい沖縄のお話を書くのに漢字は合わないと所長は思います。全部ひらがながで書きたいぐらいなのですがそうも行かず。ひらがなですと読み難い所はカタカナにて書いておりま〜す。)運ばれきたスバがうまい!実は所長は沖縄で数回ソーキスバに挑戦して全敗で、「ソーキスバとはイマイチどころかイマサンなる物なり」と思っておりました。ところがこりゃ驚きです。そして一緒に入っているモズクを絡めながら頂きますともっと美味い事を発見。しかし山川さんに聞いてみると。。。思った通り今日はたまたまモズクを入れてみたそうで。。。皆様は是非ご注文の際には「モズクだくソーキスバ」とでもおっしゃって下さいね(笑)。
1)地豆とうふ(じいまあみとうふ)
2)くーぶいりち
3)んじゃなばーサラダ
4)豆腐よう
5)なかみ汁
6)もずくの天ぷら
7)まーみなー
8)やきそば(ケチャップ味)
9)そーきすば
1)豆とうふ(じいまあみとうふ)
なんて美しい豆腐でしょう。そしてこのネッチリモチモチ感がたまりません。実はこれは落花生からできる豆腐なんですね。地面の下に出来る豆だから落花生の事を地豆と沖縄では呼ぶそうです。しかしこの美しい豆腐を作る作業は実は大変で、まずはこの落花生を擂り粉木ですってすってすりまくり完璧な滑らかな状態にする事から始まります。主婦の愛情と労力から生まれる舌ざわりと美しさなのですね。今晩はキックオフから良質の高蛋白&低脂肪料理ですね〜。ゴーヤチャンプルぐらいしか知らないラボスタッフ達は地豆とうふを一口含んだ瞬間にその食感にど肝を抜かれた様でした。
2)くーぶいりち
「くーぶ」とは昆布の事です。ご存知の通り、沖縄料理は豚肉&昆布ワールドなのでございます。そして昆布の旨味であるグルタミン酸は三大旨味成分の一つです(他はシイタケのグアニル酸と鰹節のイノシン酸)。グルタミン酸が主成分の「味の素」は世界が認めた調味料で「世界のナベアツ」ならぬ「世界のグルタミ」でござんす(笑)。ですので昆布のグルタミを活かした沖縄料理は数多くあるのですね。しかし所長は昆布その物をしゃぶるって事になりますと少しひいてしまいます。不味くはないのですが〜噛むとネチネチしてて歯にくっつくし。。。おでん屋さんでも敢えて注文は致しません。「味の素」だってその粒子をダイレクトになめると不味いっすよね。どうやらグルタミとは他の旨味成分とジョインすることでその実力を発揮する物質の様であります。そして面白い事にグルタミは昆布の様な海産物に多く存在するので、肉などの海産物でない食品との出会いがよろしいらしいのですね。男女間の異性の好みと同じでお互いに自分にない物を求めるのでしょうかねぇ(オゥモロ〜〜!)。
ところでこのいりち!今まで所長が人生で食べたあらゆるジャンルの昆布料理の中で最高の作品だと思います。沖縄料理法で「いりち」とはゆっくりと弱火で炒め煮をする調理法の事で、強火でザザッっと炒める「ちゃんぷる」と並んで調理法の双璧なんですね。くーぶいりちには昆布の他に棒かまぼこやニンジンなど数種類の野菜と豚肉が全て細〜く切って入っててテクスチャーも良く味付けも薄味で最高の美味しさでした。最初は高蛋白&低脂肪美味料理、そして次は食物繊維大盛美味料理!はっきり言いましてこの超健康美味料理二品の往復だけで大満足なんですが。。。取材ですからね〜どんどん先に進みましょう。
3)んじゃなばーサラダ
三品目はナんじゃがな?この「んじゃがな」とは沖縄の「にがな」と言う苦味のある植物です。この葉を細かく刻んでオニオンスライスやキュウリなどと和えてあります。んじゃがなにはビタミンとミネラルが豊富に入っててこの爽やかな苦さは・・・おとな限定のサラダとでも言いましょうか。沖縄で「やっぱりゴーヤは美味しいなぁ」と子供が言うと「お前もやっとおとなになったんだねぇ」と母親に言われるそうです。ゴーヤなどの美味しい苦さは大人だけの特権なんでしょう。本来、苦味は毒などの危険な味として回避されるべき味覚として我々の脳にインプットされております。その苦さを美味しいと感じるには何回も苦い料理を食してその食品の安全性を知り、その内に秘めたる深遠なる旨味を浴びながら脳の伝達系をリセットする必要があるのですね。
4)豆腐よう
てな話をしながら食べておりますと突然美味そうな豆腐ようが目の前に。キッタァーー!泡盛メチャメチャいっちゃうじゃん。皆様も見たことあるとは思いますが島豆腐を陰干しにして、泡盛と紅麹を混ぜた漬け汁に数ヶ月間熟成させた物ですね。紅麹は中国から渡来しており豆腐ようの起源は中国の腐乳だそうです。腐乳とは豆腐の漬物とでも言いましょうか・・中華粥などに入れるとコクが出てお粥がググッと美味しくなる一品なのですが、塩分の代わりに泡盛を入れて豆腐を熟成させるとまったりとして和風チーズの様な酒の肴が出来上がったと言う訳ですね。爪楊枝でチミチミしながら泡盛モリモリしてながらやっとハーフタイムを迎えました〜。
5)なかみ汁
さて、後半のしょっぱなは「なかみ汁」です。この「なかみ」とは豚の身体のなかみの意味で豚の胃と小腸がたっぷり入った汁物です。説明を聞くと飲み屋の「煮こみ」をついつい想像してしまいますが、意外や意外〜口に入れると完全にお吸い物なのであります。あっさりしてて臭みも何にもありません。それもそのはずでご主人の山川盛政さんにお聞きしますとこれは日常の家庭料理と言うよりめでたい時に出す特別な献立なんだそうです。
ご主人の山川盛政さん
臓物を掃除して周りの脂肪も取り去りピッカピカにして臭みを取り、昆布ダシと塩と泡盛で味を調えるそうですが内臓の処理は時間がかかると思います。究極のアッサリ系ホルモン汁ですね。この品は先日に予約をして本日のために用意をしてもらいました。もしもなかみ汁を食べたい時には常連になられて山川さんにおねだりするしかありませ〜ん(笑)。それにしても地豆、昆布、にがなと言い山川氏の「歩をと金に変える」その技には驚かされます。今まで他の沖縄料理店で食べてきた品々はいったいなんだったのでしょう。。。わかった。歩だ(爆)。
6)もずくの天ぷら
沖縄のもずくは有名です。もずくに多く含まれるフコイダン(昆布にも入ってます)は抗癌作用(ナチュラルキラーセルの増加)や胃潰瘍や胃癌の原因であるピロリ菌を減少させる作用などが言われておりますし、食物繊維とミネラル分やアミノ酸のアスパラギン酸とグルタミン酸も豊富。メディカル食材のセレブリティです。
しかしそのもずくを天ぷらで食べた事のある人は少ないのではないでしょうか?是非皆様にも食べて頂きたーい!このフワフワ感。マシュマロよりも柔らかいもずくですよ!食物繊維を微塵も感じないもずく!どうやってこの美味しさを作り出したのか山川氏に尋ねますと「あー。その天ぷら?え〜と。。普通は小麦粉を水でとくでしょ。水の代わりにビールでやるとふわっとなるんよ」。なるほど〜ビールの細かな泡が小麦粉に入り込んでこのフワフワ感をだしているんですね。是非セレブリティの皆様がご自宅のパーティーでこれを調理される際はシャンパンを入れて作ってみてください〜なんちゃって。
7)まーみなー
モヤシのチャンプルです。チャンプル入れずして沖縄料理は語れません。しかしあえてゴーヤチャンプルは外しました。あまりに当たり前ですもんね。もずくも単なるもずくの酢の物じゃあオゥモロ〜ないから天ぷ〜ら。そしてチャンプルもゴーヤじゃなくってモヤ〜シです。ゴーヤは身体にメチャ良いですが沖縄モヤシだって負けておりませんよー。沖縄モヤシは太くて短くてシャキシャキ感が素敵ですね。これに様々なお野菜を細く切りランチョンミートを入れて有ります。まさに家庭のお昼のお惣菜です。それにしてもどの品にも野菜がふんだんに混ぜ混ぜしてあります。野菜の総摂取量を考えますと前回のメディカルレストランで申し上げた理想の食比率の2:1:5より野菜の比率がはるかに多いかもしれません。沖縄料理の特徴として野菜類をあまり生で食しません。逆に生でないので量を多く摂取できるとも考えられます。つまり長寿食の沖縄料理を勉強しますと「野菜を生で食べる必要性はまったくなく、無理にサラダで食べる事は総体的な分量を多くとれないのでかえってマイナスになるのかもしれない。」と言う事実が浮かび上がって来ます。
8)やきそば(ケチャップ味)
やきそばはケチャップ味。これにもゴーヤなどのお野菜がタップリコと乗っております。使うは沖縄すば(ソバ)。そしてここにも最後にビールを隠し味で使用したんだそうです。きっとこれにも何か理由があると思って山川さんにお聞きしますと「あー。ビールねぇ。え〜と。。あんまり理由ないんよ。なんとなくかけてみた。」「あ〜あとねぇ。その海苔も大島ので昨日もらったのでちょっとかけてみた。」・・肩すかしとは正にこの事かぁ!!五十肩になっている所長には痛すぎる肩すかしぃ。。ま〜ね。このゆるさが良いんですよ。本来の家庭料理ってのはその場にある物を使ってササッと作るのが本当です。山川さんのお宅にお邪魔したつもりになって毎回少しづつ違う料理を楽しむのも一興かもしれません。
9)そーきすば
実はもう満腹のスタッフ達だったのですが隣のテーブルに運ばれてくるソーキスバ(そば)を見てしまい「あれ、食べたいよね〜」って誰かが言い出しました。ソーキとは沖縄では豚のスペアリブの事なのですがソーキならぬソノキになって「えんちょ〜せんにとつにゅー!」(ゆるい沖縄のお話を書くのに漢字は合わないと所長は思います。全部ひらがながで書きたいぐらいなのですがそうも行かず。ひらがなですと読み難い所はカタカナにて書いておりま〜す。)運ばれきたスバがうまい!実は所長は沖縄で数回ソーキスバに挑戦して全敗で、「ソーキスバとはイマイチどころかイマサンなる物なり」と思っておりました。ところがこりゃ驚きです。そして一緒に入っているモズクを絡めながら頂きますともっと美味い事を発見。しかし山川さんに聞いてみると。。。思った通り今日はたまたまモズクを入れてみたそうで。。。皆様は是非ご注文の際には「モズクだくソーキスバ」とでもおっしゃって下さいね(笑)。
所長のコメント:
沖縄が国勢調査で一番の長寿県である事が知られてからその理由が医学的に研究されました。そして大きなポイントが沖縄のソウルフードにあることが判明しました。
例外があるとしても総体的な沖縄料理の特徴とは、
1)高蛋白の豚肉を油を落として食す事で良質の蛋白質が摂取できつつ低脂肪食になっている。
2)食物繊維たっぷりの昆布を多く使用して塩分は少ない味付けにしてあり塩分摂取量が少ない。
3)各種ビタミンとミネラルの豊富な野菜と海藻がふんだんに使用されている。
であります。
しかしメディカルレストラン第12回「タヒチ」の中で申し上げました様に最近の沖縄の若者たちの沖縄料理離れのために沖縄男性の平均寿命は全国26位に低落し「沖縄の26ショック」と言われました。その後もどんどん沖縄の平均寿命は低下して行く様相を示しております。沖縄には巨大なアメリカ軍基地(沖縄の県土面積の10%)もありオイルリッチなジャンクフードの習慣が若者達に浸透しつつあります。濃い味付けでオイルたっぷりの欧米の料理にはかなわないでしょうからこのままでは沖縄料理と言う素晴らしい健康食は欧米の食に征服されて世の中から消滅するはずです。
沖縄だけに限らず豪華で美味しい料理ってのは民族や宗教や国境などを簡単に飛び越えて広がっていくものなのです(宗教上食べられない動物は別として)。それが健康的か非健康的か?なんてこととはお構いなしにです。たとえば隣の中国では何千年も前から満州民族と漢民族がほぼ交互に征服しあいながら今日に至っております。征服した民族は自分の文化を相手に押し付けようとしてもなかなか征服された側は従いません。しかし食に関しては漢民族のもたらしたリッチな料理に席捲され満州民族系の料理はずっと前に消滅してしまったも同然です。反中国運動で暴動など起きているチベットでも同様でチベットの若者の食べる料理はほぼ中華料理に成っております。「食の征服」は恐ろしいスピードでヘルシー嗜好と無縁な若者を中心に浸透して行き・・それは味覚だけでなく人々の思想と伝統を破壊しグローバリゼーション化していく事でしょう。
健康に良いソウルフードの代表である沖縄料理を鯨料理などと共に日本国民は積極的に保存する事は、日本人の古来からの思想と伝統などを未来に残す事に繋がるはずです。そのためには「はいさい」レベルの美味しい沖縄料理店を日本各地に増やしていく事が一番の保存策なのですね。ところが実際は「ゴーヤチャンプルやラフテーだけ出していればいいんだろっ!」て名前だけの似非沖縄料理店があちこちに点在しており「沖縄料理=安くって健康には良いけどイマイチの料理」だと世間一般に思われているのが嘆かわしいのです。調理する側に立ちますと素朴な食材で美味しい物を作るのには地道なトラップ練習の様な影の努力が必要なのでしょうが是非ちゅらなる島国の偉大なる食文化を大いなるプライドを持って日本全国に広めて行って頂きたいと思っております。
ところでなぜ沖縄料理の基本は豚と昆布なのか考えてみましょう。豚は中国から14世紀に伝わりその後17世紀にはさつま芋も伝来したので豚の飼育が盛んになり以来400年以上に渡って愛食されているのですね。沖縄の肉屋では豚の臓器をほぼ全て売っておりますし主婦はそれらを美味しく調理する術を知っております。やはり歴史が作りたもうた事なのでしょう。
もう一つの昆布の伝来も歴史学者にて研究されております。まずは江戸時代に北海道の松前藩が富山藩との交易を北前船を使って日本海経由で開始します。富山藩からは松前藩に米や薬などを、松前藩からは富山藩に昆布などの海産物をもたらします。その頃は太平洋側の東廻り航路より日本海ルートが発達し、そのため昆布は京都や関西に伝わり今でも関西うどんなどは昆布だしになってます。そして江戸には昆布が多く来なかったため今の東京は醤油味の文化になったとの事。面白いですよね〜途中をスキップして北から関西に海を渡って嗜好が伝わって根付いたわけですね。
さて、それだけでは話は終わりません。ここに篤姫さまの出身地の薩摩藩が登場します。この頃はかなりの貧乏藩でお金に困っていた薩摩藩に富山藩から「美味しい話があるのだが。。。」と打診があり北海道からの昆布などを中国に密貿易をする手助けを頼まれます。その利益は莫大。薩摩藩は沖縄(その頃は琉球国)を支配しており沖縄経由で密貿易を成功させ富山藩の力を借りて多額の借金の返済に成功するのですが〜その経由地の沖縄にも昆布が徐々に広まって今日までにまさに昆布の様にしっかりと根付いたのですねー。
つまり中国からの豚肉と日本最北の北海道からの昆布が中間地点の沖縄にて運命の出会いをし、そのカップルは沖縄の人々に長年にわたり大いなる喜びを与え長命をもたらしたのでした〜オー・サプラ〜イズ!!
話は変わり、今年のスポーツ界最大のイベントはやはり北京オリンピックでしょう。オリンピックに付き物の話題として今回はドーピングについてのお話をしてみましょう。
もともとこの言葉の語源は、アフリカのカフィル族と言う部族が戦闘の前に興奮剤入りのお酒を飲んでおり、それを「Dope」と呼んでいた事かららしいです。そして近代になりヨーロッパの犬や馬のレースに興奮剤が使用される事が度々起こったので、1911年のウィーンで歴史上初めてのドーピング検査が競走馬に行われています。やはりお金のかかる事に不正がからむのが世の常なんでしょうかね。その後人間にも薬剤投与が密かにされ、自転車レースなどにて度々死亡事故が発生してから興奮剤の危険性が徐々に認識されて行きます。しかしお金と名誉を得るための薬剤使用の拡大は裏の世界では当たり前になって行き、なんと1961年イタリアプロサッカーリーグのセリエAでの調査では94%の選手がトレーニング中にも興奮剤を使用していることが判明しました。
オリンピックの世界では1968年、夏と冬の両オリンピック大会から正式のドーピング検査が行われ、その後あらゆるスポーツの世界にドーピングチェックが広がって行き今日に至っております。1986年には競技の時だけでなくトレーニング期間中にも一流選手を中心に抜き打ちで検査が行われるようになりました。この抜き打ち検査がですね〜キツイんですわ。
まず選手は向こう3ヶ月の自分の行動予定表を世界アンチドーピング機構に提出し自分がどこに行くのかなど全て報告しないといけません(浮気も出来な〜い、笑)。その上夜中だろうがなんだろうが突然にドアを叩かれて「すみませんが尿を頂戴できますでしょうか」って言われるんですからね。たまんないっすよね。
そして検査も物凄く厳密で、男性なら男性の、女性なら女性の検査官の前で本人の身体の尿の出るべき所から尿を出して容器に入れているかを確認されなければいけません(他人の物を容器に入れたりする不正行為がされるため)。簡単に言いますと検査官と一緒にトイレに入ってジーッと見られるって訳です。採尿する容器も沢山ある中から自分で2つ選んで自分で開封して尿を2個に分けて入れて自分で閉めます(トラブルがあった際に後日もう一方の容器の尿を再チェックするために保存します)。その間いっさい検査官は手を触れません。俺はだまされた!薬を容器に入れられたんだ!って訴えられないためなんですね。この抜き打ち検査を、例えば陸上競技ですと1年間に2回受けていないと競技に出場できません。しんどー。
チェックする薬剤もかなりの数になり、検査官の費用や交通費などまで入れますと世界中のドーピングチェックにかかるお金は莫大になっております。そして毎年ドーピングも巧妙になってきており、もうヤクはバレるからヤバイよな〜ってな事で・・人間の身体の中に自然に存在するホルモンなら判らね〜だろ〜っと腎不全の患者さんの貧血の加療のために開発されたエリスロポエチン(腎臓で作り出され骨髄に作用して造血を促すホルモン)を裏で注射して赤血球を増やす悪党まで現れ(このドーピングのチェックは1件4万円掛かります)、それもバレるんじゃもうヤケクソじゃ〜い。直接入れたろー!って・・とうとう裏輸血まで行われる始末です!
人間がウソを言わない生物ならこんな余分なお金を使用する必要ないんだけど。。。まー本当の事しか人間が言わなかったら裁判だって裁判長が「あなたはこの人を殺しましたか?」「はい。」で裁判終了!(笑)そんなことはありえんもんね。未来永劫ドーピングを巡ってのイタチゴッコは続きそうです。。。。
話はまたまたサッカーに戻りますが、先日モスクワで行われた欧州チャンピオンズリーグの決勝(マンチェスターユナイテッド対チェルシー)はすごい試合でしたね。延長でも決着がつかずとうとう大雨の中のPK戦に突入。マンチェスターUの3人目のロナルド(今季の得点王なのに)が決められず。。チェルシー側としてはこれを入れれば優勝と言う場面の5人目のキッカーのテリー(主将)がなんと雨でゆるんだピッチで蹴る瞬間に転んで右にシュートを外してしまーう!そして逆に7人目のチェルシーサイドが失敗して長い長い試合はマンチェスターUの優勝で幕を閉じました
この試合のロナルドやテリーに限らず、サッカーのPK戦では名手の中の名手の失敗が多く報じられております。もっとも有名なのは1994年のワールドカップ決勝(ブラジル対イタリア)でイタリアの誇るファンタジスタのロベルト・バッジョがしたPK失敗でしょう。この大会ではワールドカップ決勝史上初のPK戦となり、ブラジルがリードを保ったまま最終キッカーであるバッジョの番になったのですが、なんとシュートをゴール上のとんでもない方向に打ち上げてしまったのです。この瞬間にイタリアの優勝は無くなり。。。失敗の後に呆然と立ちすくむバッジョの後姿を覚えている人はあまりにも多いと思います。
何故名手はPKを外すのでしょうか?名手ですので試合の中心人物であり運動量はダントツに多いでしょう。延長もありの長時間の過酷な試合の最後に行われるPK戦の頃には筋肉疲労は頂点に達しているはずです。しかしそれ以上に「彼が失敗する訳がない」と周りの観客と選手に思われている事を意識した瞬間の強烈な精神的なプレッシャーは誰にもわからないぐらいに重いはずです。それが失敗の一番の原因ではないでしょうか。
勝つためにはウソもつき、緊張のあまりに大失敗もするのが地球上の全ての動植物の上に君臨する人類と言う不完全な生物なのですね。
例外があるとしても総体的な沖縄料理の特徴とは、
1)高蛋白の豚肉を油を落として食す事で良質の蛋白質が摂取できつつ低脂肪食になっている。
2)食物繊維たっぷりの昆布を多く使用して塩分は少ない味付けにしてあり塩分摂取量が少ない。
3)各種ビタミンとミネラルの豊富な野菜と海藻がふんだんに使用されている。
であります。
しかしメディカルレストラン第12回「タヒチ」の中で申し上げました様に最近の沖縄の若者たちの沖縄料理離れのために沖縄男性の平均寿命は全国26位に低落し「沖縄の26ショック」と言われました。その後もどんどん沖縄の平均寿命は低下して行く様相を示しております。沖縄には巨大なアメリカ軍基地(沖縄の県土面積の10%)もありオイルリッチなジャンクフードの習慣が若者達に浸透しつつあります。濃い味付けでオイルたっぷりの欧米の料理にはかなわないでしょうからこのままでは沖縄料理と言う素晴らしい健康食は欧米の食に征服されて世の中から消滅するはずです。
沖縄だけに限らず豪華で美味しい料理ってのは民族や宗教や国境などを簡単に飛び越えて広がっていくものなのです(宗教上食べられない動物は別として)。それが健康的か非健康的か?なんてこととはお構いなしにです。たとえば隣の中国では何千年も前から満州民族と漢民族がほぼ交互に征服しあいながら今日に至っております。征服した民族は自分の文化を相手に押し付けようとしてもなかなか征服された側は従いません。しかし食に関しては漢民族のもたらしたリッチな料理に席捲され満州民族系の料理はずっと前に消滅してしまったも同然です。反中国運動で暴動など起きているチベットでも同様でチベットの若者の食べる料理はほぼ中華料理に成っております。「食の征服」は恐ろしいスピードでヘルシー嗜好と無縁な若者を中心に浸透して行き・・それは味覚だけでなく人々の思想と伝統を破壊しグローバリゼーション化していく事でしょう。
健康に良いソウルフードの代表である沖縄料理を鯨料理などと共に日本国民は積極的に保存する事は、日本人の古来からの思想と伝統などを未来に残す事に繋がるはずです。そのためには「はいさい」レベルの美味しい沖縄料理店を日本各地に増やしていく事が一番の保存策なのですね。ところが実際は「ゴーヤチャンプルやラフテーだけ出していればいいんだろっ!」て名前だけの似非沖縄料理店があちこちに点在しており「沖縄料理=安くって健康には良いけどイマイチの料理」だと世間一般に思われているのが嘆かわしいのです。調理する側に立ちますと素朴な食材で美味しい物を作るのには地道なトラップ練習の様な影の努力が必要なのでしょうが是非ちゅらなる島国の偉大なる食文化を大いなるプライドを持って日本全国に広めて行って頂きたいと思っております。
ところでなぜ沖縄料理の基本は豚と昆布なのか考えてみましょう。豚は中国から14世紀に伝わりその後17世紀にはさつま芋も伝来したので豚の飼育が盛んになり以来400年以上に渡って愛食されているのですね。沖縄の肉屋では豚の臓器をほぼ全て売っておりますし主婦はそれらを美味しく調理する術を知っております。やはり歴史が作りたもうた事なのでしょう。
もう一つの昆布の伝来も歴史学者にて研究されております。まずは江戸時代に北海道の松前藩が富山藩との交易を北前船を使って日本海経由で開始します。富山藩からは松前藩に米や薬などを、松前藩からは富山藩に昆布などの海産物をもたらします。その頃は太平洋側の東廻り航路より日本海ルートが発達し、そのため昆布は京都や関西に伝わり今でも関西うどんなどは昆布だしになってます。そして江戸には昆布が多く来なかったため今の東京は醤油味の文化になったとの事。面白いですよね〜途中をスキップして北から関西に海を渡って嗜好が伝わって根付いたわけですね。
さて、それだけでは話は終わりません。ここに篤姫さまの出身地の薩摩藩が登場します。この頃はかなりの貧乏藩でお金に困っていた薩摩藩に富山藩から「美味しい話があるのだが。。。」と打診があり北海道からの昆布などを中国に密貿易をする手助けを頼まれます。その利益は莫大。薩摩藩は沖縄(その頃は琉球国)を支配しており沖縄経由で密貿易を成功させ富山藩の力を借りて多額の借金の返済に成功するのですが〜その経由地の沖縄にも昆布が徐々に広まって今日までにまさに昆布の様にしっかりと根付いたのですねー。
つまり中国からの豚肉と日本最北の北海道からの昆布が中間地点の沖縄にて運命の出会いをし、そのカップルは沖縄の人々に長年にわたり大いなる喜びを与え長命をもたらしたのでした〜オー・サプラ〜イズ!!
話は変わり、今年のスポーツ界最大のイベントはやはり北京オリンピックでしょう。オリンピックに付き物の話題として今回はドーピングについてのお話をしてみましょう。
もともとこの言葉の語源は、アフリカのカフィル族と言う部族が戦闘の前に興奮剤入りのお酒を飲んでおり、それを「Dope」と呼んでいた事かららしいです。そして近代になりヨーロッパの犬や馬のレースに興奮剤が使用される事が度々起こったので、1911年のウィーンで歴史上初めてのドーピング検査が競走馬に行われています。やはりお金のかかる事に不正がからむのが世の常なんでしょうかね。その後人間にも薬剤投与が密かにされ、自転車レースなどにて度々死亡事故が発生してから興奮剤の危険性が徐々に認識されて行きます。しかしお金と名誉を得るための薬剤使用の拡大は裏の世界では当たり前になって行き、なんと1961年イタリアプロサッカーリーグのセリエAでの調査では94%の選手がトレーニング中にも興奮剤を使用していることが判明しました。
オリンピックの世界では1968年、夏と冬の両オリンピック大会から正式のドーピング検査が行われ、その後あらゆるスポーツの世界にドーピングチェックが広がって行き今日に至っております。1986年には競技の時だけでなくトレーニング期間中にも一流選手を中心に抜き打ちで検査が行われるようになりました。この抜き打ち検査がですね〜キツイんですわ。
まず選手は向こう3ヶ月の自分の行動予定表を世界アンチドーピング機構に提出し自分がどこに行くのかなど全て報告しないといけません(浮気も出来な〜い、笑)。その上夜中だろうがなんだろうが突然にドアを叩かれて「すみませんが尿を頂戴できますでしょうか」って言われるんですからね。たまんないっすよね。
そして検査も物凄く厳密で、男性なら男性の、女性なら女性の検査官の前で本人の身体の尿の出るべき所から尿を出して容器に入れているかを確認されなければいけません(他人の物を容器に入れたりする不正行為がされるため)。簡単に言いますと検査官と一緒にトイレに入ってジーッと見られるって訳です。採尿する容器も沢山ある中から自分で2つ選んで自分で開封して尿を2個に分けて入れて自分で閉めます(トラブルがあった際に後日もう一方の容器の尿を再チェックするために保存します)。その間いっさい検査官は手を触れません。俺はだまされた!薬を容器に入れられたんだ!って訴えられないためなんですね。この抜き打ち検査を、例えば陸上競技ですと1年間に2回受けていないと競技に出場できません。しんどー。
チェックする薬剤もかなりの数になり、検査官の費用や交通費などまで入れますと世界中のドーピングチェックにかかるお金は莫大になっております。そして毎年ドーピングも巧妙になってきており、もうヤクはバレるからヤバイよな〜ってな事で・・人間の身体の中に自然に存在するホルモンなら判らね〜だろ〜っと腎不全の患者さんの貧血の加療のために開発されたエリスロポエチン(腎臓で作り出され骨髄に作用して造血を促すホルモン)を裏で注射して赤血球を増やす悪党まで現れ(このドーピングのチェックは1件4万円掛かります)、それもバレるんじゃもうヤケクソじゃ〜い。直接入れたろー!って・・とうとう裏輸血まで行われる始末です!
人間がウソを言わない生物ならこんな余分なお金を使用する必要ないんだけど。。。まー本当の事しか人間が言わなかったら裁判だって裁判長が「あなたはこの人を殺しましたか?」「はい。」で裁判終了!(笑)そんなことはありえんもんね。未来永劫ドーピングを巡ってのイタチゴッコは続きそうです。。。。
話はまたまたサッカーに戻りますが、先日モスクワで行われた欧州チャンピオンズリーグの決勝(マンチェスターユナイテッド対チェルシー)はすごい試合でしたね。延長でも決着がつかずとうとう大雨の中のPK戦に突入。マンチェスターUの3人目のロナルド(今季の得点王なのに)が決められず。。チェルシー側としてはこれを入れれば優勝と言う場面の5人目のキッカーのテリー(主将)がなんと雨でゆるんだピッチで蹴る瞬間に転んで右にシュートを外してしまーう!そして逆に7人目のチェルシーサイドが失敗して長い長い試合はマンチェスターUの優勝で幕を閉じました
この試合のロナルドやテリーに限らず、サッカーのPK戦では名手の中の名手の失敗が多く報じられております。もっとも有名なのは1994年のワールドカップ決勝(ブラジル対イタリア)でイタリアの誇るファンタジスタのロベルト・バッジョがしたPK失敗でしょう。この大会ではワールドカップ決勝史上初のPK戦となり、ブラジルがリードを保ったまま最終キッカーであるバッジョの番になったのですが、なんとシュートをゴール上のとんでもない方向に打ち上げてしまったのです。この瞬間にイタリアの優勝は無くなり。。。失敗の後に呆然と立ちすくむバッジョの後姿を覚えている人はあまりにも多いと思います。
何故名手はPKを外すのでしょうか?名手ですので試合の中心人物であり運動量はダントツに多いでしょう。延長もありの長時間の過酷な試合の最後に行われるPK戦の頃には筋肉疲労は頂点に達しているはずです。しかしそれ以上に「彼が失敗する訳がない」と周りの観客と選手に思われている事を意識した瞬間の強烈な精神的なプレッシャーは誰にもわからないぐらいに重いはずです。それが失敗の一番の原因ではないでしょうか。
勝つためにはウソもつき、緊張のあまりに大失敗もするのが地球上の全ての動植物の上に君臨する人類と言う不完全な生物なのですね。
所長の独り言
「友人とは夜中の12時に自動車のトランクに死体を入れて持って来て『どうしようか。。。』と言った時に黙って話に乗ってくれる人」とどこかに書いてありました。なるほどですよね。
この話のポイントは「夜中の12時に黙って話に乗る」って事ですね。わが身のためにすぐに警察に通報するでもなく、かと言って直ぐにかくまうとかでもなく、眠くて辛い時でも時間を作って自分の話を信用して聞いてくれるかどうかって事が「本当の友人」の資格なんですね。
こんな友人を何人持っているかでその人の価値が決る気がします。ドーピングがばれずに勝利を得た人にはきっと少ないでしょうし美しい敗者には必ず多いはずです。
執筆 『健康×美食ラボ』所長:医学博士 岡野喜久夫 2008年6月13日
『健康×美食ラボ』所長 岡野内科診療所院長 |