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成果報酬型のデリバリー専門サイト「くるめし」。
~ロケ弁、接待弁当でプラスアルファを稼ぐ方法~(5-4)

2011.6.23
大震災以降、現状の厨房、店舗設備を使って売上を伸ばす、外販に注目するレストランが増えた。テイクアウト商品を売るのもいいが、攻めの営業なら、まとまった数が出るTV局のロケ弁、法人向けの接待弁当、会議弁当、パーティー向けケータリングを狙ってみてはどうだろうか。5回シリーズ。レポートは長浜淳之介。


「くるめし」が運営する「中華の匠」の海老チリ豪華幕の内弁当(840円)。

・成果報酬型のデリバリー専門サイト「くるめし」。

 レストランがロケ弁、会議弁当、接待弁当、ケータリングといったデリバリー事業に進出する場合、自社の店舗やサイトで宣伝することになるが、より広範囲に知らしめるためにはデリバリー専門のサポートサイトに登録するのが有効な手段であると考える。

 そうしたデリバリー専門サイトの1つが、日本フードデリバリー(本社・渋谷区道玄坂)が運営する「くるめし」。弁当専門の「くるめし弁当」と、ケータリング専門の「くるめしケータリング」がある。3年ほど前にスタートしたサービスだが、現在の形になったのは昨年の秋とのこと。


くるめしケータリング


くるめし弁当

「くるめし」の特徴は年間あるいは月々の固定費を取らず、サイトを通して電話またはメールで注文が入った時に販売管理費を取るという、成果報酬制のやり方だ。その取り分は20~30%以下とのこと。1日前、2日前までの注文を基本としており、弁当の最低配達金額は店によって異なるが5000~2万4000円となっている。

 注文を受け付けるのは東京23区を中心に東京都下、神奈川、埼玉、千葉となっている。店舗数は絞って1店から多くの売り上げがあるように営業しており、「くるめし弁当」の登録は現状30店舗に絞っているという。もちろん販売パワーのある店の新規追加も歓迎だ。

 個人店の場合、月々300万円を弁当で売るのが上限だと同社では考えているが、その上限までの受注を目指している。もし実現できれば年間で3600万円の売り上げになり、1つのお店の厨房で2店分の販売を達成することになる。

 では、どのような店がデリバリーで成功するのだろうか。

「スーパーでは280円の弁当も珍しくないですが、店頭売りの弁当とデリバリーの弁当との違いは単価が高いことです。店頭売りでは500円が上限のように思いますが、ロケ弁は800円が一番の売れ筋、会議弁当は1500円が一番の売れ筋、接待弁当は1500円が最低で2000円が普通です。新規で受注を取るには写真がしっかりしてないと難しいです。どんなにいい素材を使っていても、写真の見栄えが良くないといけない。高いものはそれ相応に高く見える必要があります」と、小池伸夫専務は語る。

 なるほど、単価の高い弁当をネットで売るので、安っぽく見えたらダメだということだ。

 テレビ局、撮影会社が、食事のために外出できない時に注文するロケ弁は、以前は単価が1000円くらいだったが今は800円にまで落ちている。コンサートや紅白歌合戦のような歌番組、ファッションショーの際には、大口の受注が入る。食べるのはタレントやADのようなスタッフで、基本は空腹を満たす弁当。見た目が小ぎれい過ぎる弁当は売れず、弁当箱から具材がはみ出ている写真などボリューム感あるものが売れるという。


ドルフィン、サバ塩肉団子弁当(700円)。ロケ弁で人気で弁当箱から具材が飛び出そうな量感がある。

 会議弁当は役員が会議の時に、秘書や総務が注文するような社内重役向けの弁当。接待弁当は製薬会社の営業MRが、病院や大学教授に営業に行く時に届けるものだ。夜はお酒の場で接待するわけだが、昼にも弁当で接待する習慣ができあがっている。MRも一緒に弁当を食べて病院に食い込んでいくわけだ。

 会議弁当、接待弁当は、一品一品が料亭のようなクオリティを要求され、がっつり食べる方向ではない。バランスの問題もあるが、品数がある程度多くないと売れないという。

「600円から800円のロケ弁はどうしても価格競争になります。それに対して1500円以上の会議弁当、接待弁当は手間をかけていかないといけません。両立は難しく、自分たちはどちらが得意なのかを見極めてどちらかに絞ったほうがいいでしょう」と、小池専務はアドバイスした。

 あと全般に二段の弁当、ちょこちょこといろんなものが入った見た目が良いものが好まれる傾向がある。


築地青木「重ねのお弁当」(1890円)。二段の弁当は売れる傾向にある。

 ケータリングは企業や大学のセミナーの後の懇親会、交流会、歓送迎会のほか、最近は忘年会や部署単位のパーティー需要も多い。これは今まで飲食店に行っていた経費を節減する目的もある。

 飲食店が進出する場合、ケータリングでデリバリーするのは普通、夕刻の営業時間の前になるので上手く受注すれば、遊んでいた厨房を有効活用できるのは弁当と同じだ。

 ケータリングも1人500円~700円の世界のホームパーティー、クルージング、ウェディングの1.5時間のようなニーズもあれば、ホテルなら1人8000円取るところを4000円でできるような、シェフを派遣したセレブなパーティーの需要もある。これも自分たちの強みを見極め、デリバリー専門業者でない手づくり感をレストランが出していけば、差別化できると言えよう。

 同社では中華のプロデュース店をレストランとは別名の「中華の匠」という名で、「くるめし弁当」に参入しており、自らがデリバリーのプレーヤーでもある。中国人シェフが本格的な中華をつくり、元々レストランにOEMを行っていた。


「中華の匠」は中国人シェフによる本格中華弁当が売り。中国料理界最高位、特級厨師のシェフの料理がリーズナブルに食べられる。

「デリバリーはレストランが待っていてもお客様が来ない時に、自ら攻めて売り上げを立てに行く飛び道具です。震災後にはデリバリー専用業者よりも、レストランからの問い合わせが増えています」と小池専務は、味に自信があり、震災前には繁盛店だった店はデリバリーを考えてみるのも一考だと提案している。

【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2011年6月20日執筆