フードリンクレポート


各地で全面禁煙化の恐れあり。飲食店は主張しよう!
東京は「店舗自身で判断すべし」の声。

2010.3.18
神奈川県の受動喫煙防止条例の施行(4/1)前になって、厚労省健康局長が2/25に全国の地方自治体宛に通知を出した。受動喫煙による健康被害を防ぐため、飲食店や遊技場など不特定多数の人が利用する施設を原則全面禁煙にするよう求めている。神奈川県から全国に禁煙の波が押し寄せようとしている。主要都市の飲食店に反応を調査する。まずは、東京都。


時間や曜日を分けての分煙は多い。

全面禁煙は決定じゃない、都道府県が判断する

 調査結果の前に確認しておきたいことは、2/25の通知は厚労省からのあくまでも「要望」であり、決定ではない。この通知の元となる、「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会報告書」でも、

「我が国の飲食店や旅館等は、中小規模の事業所が多数を占めている中で、昨今の世界的な社会経済状況の影響等も相まって、飲食店経営者や事業者等にとって、自発的な受動喫煙防止措置と営業とを両立させることが困難な場合があるとの意見がある。このような意見も考慮した上で、受動喫煙防止対策の基本的な方向性を踏まえつつ、対策を推進するためには、社会情勢の変化に応じて暫定的に喫煙可能区域を確保することもとり得る方策の一つである」と明記されている。

「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会報告書」

 つまり、禁煙席と喫煙席の割合を表示したり、喫煙場所を分かり易くする等で受動喫煙防止措置が取れるということ。厚労省は、飲食店で必ずしも全面禁煙を求めている訳ではない。

 たばこを吸う人にとっては、飲食店はたばこを吸うことのできる重要な場所。飲食店が提供できる重要なサービスの1つになっている。『日経レストラン』(2008年7月号)の調査でも、実際に全面禁煙した店の約2割が「売上が落ちた」と回答している。不況の中、さらに全面禁煙では立ちいかない飲食店は増えるに違いない。


各地で条例が出来る前。今、立ち上がらないと!

 受動喫煙防止策の内容を決めるのは、あくまで各都道府県。知事によっては自ら喫煙している方もあれば、禁煙の方もいる。受動喫煙防止への理解に温度差があるようだ。

 特に怖いのは、都道府県知事が選挙民からのウケを狙って、安易に全面禁煙を推し進めてしまうこと。飲食業で生計を立てている方々の生活を考慮されないこと。今、外食産業の我々が立ちあがって、我々の立場を全国各地で主張することが必要だ。

 ちなみに、東京都では、福祉保健局が本年2/4に作成した「東京の福祉保健の新展開 2010」では、飲食店の対策にあわせて貼れるステッカーの店頭表示の普及など、受動喫煙による健康への影響を防止する取組を進めることが明記され、飲食店での全面禁煙ではなく、分煙が前提とされている。

 その東京で、飲食店100店にフードリンクニュースは緊急電話調査を3/8〜10に実施した。


東京は75%が厚労省の「全面禁煙」通知を知っている

質問1「2010年2月25日に厚生労働省から通知された事はご存知でしたか?」


 2/25付けの厚労省からの通知は、「受動喫煙防止対策について」はさすがに関心が高く、75%の飲食店が知っていた。隣県の神奈川県の受動喫煙防止条例の施行が迫っていることもあり、東京は分煙関連の情報には敏感。

質問2「『受動喫煙防止対策について』詳しい内容までご存知ですか?」



 「受動喫煙防止対策について」ついては、多くの報道内容が、飲食店での全面禁煙の義務化が決定したと誤解を与えるような内容であり、これから受動喫煙防止対策について各都道府県で条例化も含めて検討される訳だが、情報が交錯し、詳しい内容が伝わっていないのが現状。


 たばこを吸う人にとっては、飲食店はたばこを吸うことのできる重要な場所。飲食店が提供できる重要なサービスの1つになっている。『日経レストラン』(2008年7月号)の調査でも、実際に全面禁煙した店の約2割が「売上が落ちた」と回答している。不況の中、さらに全面禁煙では立ちいかない飲食店は増えるに違いない。


「店舗自身で分煙・禁煙を判断すべし」7割

質問3「『受動喫煙防止対策について』貴店様では、この動きに対してどのように考えますか?」


 売上減少などを心配して反対が5割。賛成は26%で、「どちらともいえない」と決めかねている店も25%。店にはタバコを吸うお客と、吸わないお客の両方がおり、店は両者の立場を考えなければならず、一概に判断するのは難しい。

質問4「貴店様では、分煙に関する取組をどのように行われていますか?」


 分煙への取り組みを未だ行っていない店が68%もある。喫煙席と禁煙席とを場所だけや、仕切りを設けたりして分けている店は13%。「その他」は、ランチ時は禁煙など、時間帯分煙や、全席個室で部屋毎に分煙となっている店。店頭に、分煙表示している店はなかった。

質問5「貴店様では、分煙・禁煙の問題について どのようにするべきだと思いますか?」



 行政の判断に沿うべきと考える店はわずか17%。大多数の7割が店独自で判断すべき問題であると考えている。「その他」の意見を紹介すると、

・「環境的な面から言えば、禁煙には賛成ですが、お店として考えれば禁煙にしてしまうと経営が成り立たなくなります(たばこを吸いに来る人もいる)逆にたばこが嫌な人は来店されない様にすれば良いと思います。」
・「法律で決めるならタバコを売らないほうが良い。」
・「他店の様子を見ながら、判断をしていきたい。もし、行政で決定されたならば、仕方が無いので、沿う形になると思う。」
・「禁煙を強制する様になるのはおかしいと思う。売っている自治体が疑問になってくる。」
・「お客様の方で席を選んだり、お店を選んだり、隣に一言声をかけたりすれば良い事だと思う。当店は小さな店の為、仕切りするスペースもない。」
・「店舗で分煙や禁煙の表示を明示して、お客様の方で判断すべき。強制するのは反対。」
・「完全に全面禁煙にするとお酒を出す店は難しいと思う。お酒とたばこはつきものなので、経営的には難しい。」

 店ごとに客層も異なる。フリー客が多い店は分煙をしっかりするべきだろうし、常連客の多い店はお客と店との判断に任せるべきだろう。アルコールが主体の店は禁煙は難しいだろう。飲食店は、様々なタイプのお客をもてなす場であり、お客の方も店のコンセプトを判断して使い分けている。行政に規制されるより、分煙・禁煙は店ごとに判断し、それを店頭に表示する方が、店の個性を出せ、外食産業の発展に繋がると思う。


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2010年3月16日執筆