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フードリンクレポート


各県でも禁煙条例化検討への動き。
飲食店は少しでも早くスタンスを明確にし、意向を反映させるべき。

2010.4.28
4月1日から、ついに全国で初めて、神奈川県で受動喫煙防止条例が施行された。不満や戸惑いの声も根強いが、この流れは確実に全国に広がっていくと見られている。実際に、他府県の知事に対して行ったアンケートでは、「条例制定の考えがある」と答えた7府県で、条例化も含めた検討が始まろうとしている。この流れの中で、「今何をすべきか」、今一度考えてみる必要があるだろう。


7府県では、条例制定の考えあり。

神奈川県がモデルケースに、他県でも条例化を含め検討

 今月、4月1日から神奈川県では、学校、病院などの第1種施設に区分される公共施設では全面禁煙、飲食店、ホテル・旅館などの第2種施設に区分される場所では、禁煙又は分煙を選択する受動喫煙防止条例が、全国に先駆けて施行された。

 この結果、神奈川県以外の県での条例化があるのか、条例の内容や罰則などについて情報が錯綜し、飲食店側の混乱も見受けられる。大型チェーンのファミリーレストランやファーストフード店など、対応がすぐできる店舗とは違い、中小規模の居酒屋業態などからは戸惑いの声が多く聞かれる。

 今回の神奈川県での施行を受け、共同通信が行った全国知事アンケートでは、受動喫煙防止対策について7府県が「条例制定の考えがある」と答えた。静岡県、京都府、奈良県、兵庫県、和歌山県、鳥取県、鹿児島県の7府県。情報が錯綜する中、実際にどのような検討状況なのか、フードリンクから各府県に電話取材を試みた。

 京都府は、独自に健康長寿府民会議という団体を組織しており、その中で受動喫煙について議論を続けてきた。「その会議からは、条例の整備や罰則の必要性について提言がありました。それを受けて、府としても検討をする予定で、現時点では条例化含めてあらゆるパターンが考えられます。すぐ条例化に向けて動くという可能性もあるかもしれません。神奈川県がモデルケースになると思います。」(健康対策課)

 静岡県の厚生部によると、「具体的に決まっていることはありませんが、条例化も選択肢の一つとして、検討を進めています。条例に寄らない形で、みなさんにご協力を頂く対策をとりたいというのが、本音ですが。」(健康増進課)

「神奈川県の反応を見ながら、うちはどうしたら良いのか、条例という規制でやる方がいいのか、それとも他の方法があるのか検討しています。」と回答したのは鹿児島県。

 各県とも、条例化の具体的な議論にはなっていないものの、条例化も選択肢の一つとし、他の対策も含めて、受動喫煙防止について検討しているとのこと。神奈川県の様子を見てという意見が大半で、神奈川県の状況次第では、条例化が加速する可能性もある。あなたの県での条例化も迫っているかもしれない。もはや“対岸の火事”ではなくなっているのである。


自治体は飲食店の声を拾いたいという意識あり、店の意向を反映させるべき!

 今回条例が施行された神奈川県は当初、規模の大小に関わらず、全ての飲食店に対して条例を施行する予定だった。しかし、その素案に飲食店関係者から多くの反発意見が寄せられたため、再検討され、店舗面積100平方メートル以下の小規模飲食店に関しては3年の猶予期間が設けられることになった。

 さらに遡れば、もともとは全面禁煙の「禁煙条例」だった案が、分煙もOKとなり、「受動喫煙防止条例」となった経緯がある。これも、世論の反発を受けての修正だった。

 今回の回答の中には、「本来は国で率先して欲しいところだが、県として条例を検討していく。」という意見も。この背景には、国に従う、他県に倣うのではなく、独自に検討を進め、それぞれの県の状況に合わせ、実効性のある条例を作ろうという姿勢が見受けられる。事実、各自治体への取材において共通していたのは、できるだけ飲食店側の声を吸い上げ、受動喫煙防止対策の検討に活かしたいと考えている点。

 和歌山県は、「即、条例化ということにはならない。理解を求め、環境を整えてから条例化に行き着くもの。あくまで県民の十分な理解を得てからというのが前提。飲食店の同業者組合等の加入率が他県に比べて高いので、その団体を通じて周知させていきたい。」(健康づくり推進課)逆に言えば、飲食店側も自治体の動きや出される情報に敏感になる必要がある。

「どんな対策になろうとも目標は同じで、受動喫煙の被害を無くすことです。困る困るでは、前に進めません。条例を作るなら、オープンにみなさんの意見を取り入れながら検討していきます。」と京都府健康対策課。

 つまり、各自治体とも声を聞く姿勢を持っており、声を上げればより実状に即した形の条例になる可能性もある。そのためには、飲食店側が意思を明確にし、行動を起こしていくことが大切である。条例化される前に、各店がそれぞれのあるべき形(禁煙なのか、分煙なのか、全席喫煙なのか)をはっきりさせ、主張していくことが自治体へのアピールにもつながるのだ。

 こうした条例化を含めた検討への動きがある中、実際行動を起こしている飲食店はまだ少ない。フードリンクが3月に飲食店100店に対し行ったアンケートでは、「分煙・禁煙の問題にてついてどのようにするべきだと思うか?」との問いに対し、「店舗自身で判断し、問題に取り組むべき」と答えた店が73%に上り、「行政が決定した事に従うべき」と答えた店の17%を大きく上回った。

 しかし、一方で「分煙に対する取り組みを行っているか?」の質問に対しては、68%もの店が「何もしていない」と答えている。店舗自身で判断すべきという意識はあっても、なかなか行動に移せない現状がある。

 禁煙にも分煙にもコストとリスクが伴う。しかし、条例化されてからでは、対応するのも定着させるのにも更なる負担がかかる。神奈川県で条例が施行され、今後さらに他府県でも条例化の可能性がある今、少しでも早い各店舗の意思表示が重要になってくるだろう。


【取材・執筆】  村田 麻未(むらた あさみ) 2010年4月20日執筆


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