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2011年5月8日
 ブランドへの愛情が復活には必要。

 50ヶ国以上で1万7千店を展開するスターバックス。2007年末、北米での既存店売上高が前年割れが続きはじめた。CEOから引退していたハワード・シュルツさんが再度、CEOに就任してスターバックスの立て直しを図ります。

 彼はもともと小さな焙煎会社だったスターバックスで働いていました。エスプレッソを主体としたコーヒー販売を提案しましたが、受け入れられず退社。自分のコーヒー店を設立した後、焙煎会社だったスターバックスを買収します。それが1987年。

 そこから20年で、シアトルの小さな店から世界企業に成長していきました。投資家からも成長を当然のように期待され、出店ペースを上げ、単純に売上増に繋がる新商品を増やしてきました。音楽CDの販売まで始めました。

 そこで起きたのが、本拠地の北米での既存店売上高マイナス。日本では2008年9月、リーマンショックで景気後退が始まりましたが、米国では、07年秋から後退がスタート。スターバックスのコーヒーは贅沢品とされ、そこにマクドナルドが低価格で高品質を謳い文句に「マックカフェ」で攻勢をかけてきました。

 シュルツさんは、景気後退だけが原因ではなく、スターバックスの提供する品質が低下したことだと考えました。当時、売上増のためサンドイッチ販売も行い、店内で温めて提供していました。そのパンやチーズが焼ける香りによって、元来起ち上がるべきコーヒーの香りを殺してしまっているとも考えました。

 本来のスターバックスの存在意義であるコーヒーを追求します。旧態依然としていたインスタントコーヒー市場に「ヴィア」も投入しましたよね。詳しくは、本『スターバックス再生物語』(徳間書店)をお読みください。

 そして、既存店売上高を08年度3%減、09年6%減から、10年には7%増に復活させました。シュルツさんの10年度の報酬は何と2173万ドル(約17億5千万円)。

 この復活劇は、創業者とも言えるシュルツさんのブランドへの強い愛情があったゆえに実現できたものだと思います。日本でも、レインズインターナショナルの西山知義さんが
08年頃から牛角の経営に再度専念し、業績を上向かせました。3月の震災も1週間後
には売上を通常に戻したようです。

 震災後の景気低迷が続き、売却されるブランドや企業が出てくると思います。コストカッターという手法で一時的に黒字化させることはやさしいかもしれません。そこから再度テイクオフさせるには、強い愛情が必要です。金融的な手法は、ブランドにとり生命維持装置となるだけ。ブランドの屍は増やしたくないです。

(安田 正明)
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